2016年6月29日、国際協力機構(JICA)は次の円借款貸付契約に調印した。
バングラデシュ向け円借款契約の調印:
急増する電力・交通需要への対応と災害リスク低減のため、過去最大規模の円借款を供与(JICA)
http://www.jica.go.jp/press/2016/20160629_01.html
主な項目は次の通り。
・ダッカの都市交通インフラ及び南アジア各国を結ぶ交通網の整備
・マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業
・災害リスク管理能力強化事業
そして、その2日後の7月1日にテロ事件が起きた。
「異教徒を殺す」と外国人らを選別 銃使わず刃物で殺害か テロ犯3人は半年行方不明
http://www.sankei.com/world/news/160704/wor1607040052-n1.html
半年前から入念準備か 常連装い下見、従業員説も
http://www.sankei.com/world/news/160704/wor1607040042-n1.html
人質として救出した数人について、実行犯を支援していた可能性があるとして事情聴取を続けている
http://www.yomiuri.co.jp/matome/20160703-OYT8T50000.html
人質のはずが…実行犯の側でタバコふかす元大学教員、学内で過激派募集容疑で解雇
http://www.sankei.com/world/news/160705/wor1607050044-n1.html
犯人グループらが、現場となった《日本人ら外国出身者に人気の飲食店「ホーリー・アーティザン・ベーカリー」》を半年前から常連を装って入念に下見していたという報道と、2日前にバングラデシュがJICAとの円借款貸付契約に調印したというタイミングを考え合わせると、これは外国人を狙ったというよりはむしろJICA職員をピンポイントで狙った可能性が浮上すると思われる。
そうだとすると犯人グループあるいは黒幕の動機はいくつか考えられる。
a)JICAが支援しているバングラデシュの近代化が気に入らない
b)JICA支援による利権で潤ってる勢力が気に入らない
c)日本とバングラデシュの緊密化が気に入らない
そして、動機がいずれであっても、今回のテロの戦略目標はひとつに絞られるのではないか。
◎バングラデシュからのJICAの撤退=日本からの支援の消滅
それによって利益を得る者は誰か。
第一には動機の a〜c を達成(=気に入らないものを壊す)する者らだが、安全保障情勢からはやはり中国の存在を考えないわけにはいかない。
バングラデシュは西北東をインドに囲まれ、南はベンガル湾に面している。

そして、中国はシーレーン防衛とインドの封じ込めのために「真珠の首飾り」戦略を取っていると言われる。
中国の戦略「真珠の首飾り」とはどういうものか?
https://thepage.jp/detail/20140926-00000021-wordleaf
バングラデシュはその「真珠の首飾り」戦略の拠点のひとつである。
バングラデシュ人は親日とも言われているし(国旗を見てもわかる)、近年ではインドとの関係改善も進んでいると聞く。

バングラデシュの国旗
インドとバングラデシュ、国境問題に終止符
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43982?pd=all
そして、日本はインドとも友好関係を保っているので、このままバングラデシュが日印陣営に傾くことは中国にとっては許し難い状況になる。
つまり、中国は「真珠の首飾り」戦略の都合上、日本とバングラデシュの緊密化を破壊したい動機がある。
テロによってバングラデシュからJICAを撤退させることができれば、空いた支援の穴は中国が埋めることになるだろう。すなわち、そのカネの分だけバングラデシュ政府を親中に傾けることができる。
従って、中国が犯人グループやISに資金提供するなどの形で、裏から今回のテロを支援した可能性というのを頭の片隅に置いておく必要があると思う。中国で言うところの「夷を以て夷を制す」である。
物証はないので、断定はしないが。
(追記)
この記事には次のようにある。
《今回の事件後、バングラデシュのハサヌル・ハク・イヌ情報相は、テロリストへの武器供給で、パキスタンの諜報機関である軍統合情報局(ISI)の関与があったことを示唆した。》
バングラデシュを襲った過激派「JMB」の正体
http://toyokeizai.net/articles/-/125941
そのパキスタンは中国と親密な関係にある。
中国とパキスタンは国と国との関係の模範(人民網日本語版)
http://j.people.com.cn/n/2015/0210/c94474-8848645.html
また一歩、影が中国に近づいた。
以上。