ショーンK騒動は興味深い。専門家は、キーワードを並べただけで中身がなく怪しいと思っていた、と言うが、視聴者と共演キャスターからはむしろ好印象だった様子。経歴と顔と身長はホラッチョだったにしても、番組のニーズは満たしていた。逆に、実は専門家の意見など求められていなかったとも言える。
キャスターも視聴者の大半も経済や経営の専門家ではないわけだから、バリバリの専門家が出てきて難解な説明をすると(平易に語れない専門家は多い)キャスターも視聴者もついていけなくなる。だから、求められていたのは、素人よりちょっと物知りなオピニオンリーダーだったということ。
だから、前にも書いたがコメンテーターなんて、福山雅治のようなビジュアルに優れた俳優を連れてきて、裏方としての専門家と演出家が練ったセリフを言わせておく方が番組的にはいいと思う。視聴者のニーズは、専門家の専門的意見ではなく、それっぽくて分かりやすいコメントだったのだから。
ネットでは、ちょっとだけ嘘を混ぜるから危険とか言われているが、池上彰という人はテレビでは重宝されている。わかりやすい説明と、自分の意見を言わないのが特徴だそうだ。
池上彰氏が、テレビで「自分の意見」を言わない理由
http://www.huffingtonpost.jp/2014/05/29/akira-ikegami_n_5415190.html
視聴者は池上彰という人に、肩書きや経歴なんて求めていない。説明力を求めているだけ。そして、記事の中に《『自分の意見を言わない』というニッチな需要を見つけた》とある。別の言い方をすれば、今のテレビ出演者は主義主張の押し付けがひどすぎて視聴者が辟易してるということなんだろうと思う。
だが、専門家なら自分の専門分野では自説があって当然なので、『自分の意見を言わない』という要求は通らないだろう。その矛盾が結果的に、中身はないし自説も主張しないが、適当にわかりやすいコメントを発する似非専門家ショーンKの台頭を許してしまったのかなという気がする。
つまり、そこに確実にニーズがあるってことよ。
(追記)
ショーンKがどこにいたのかを図解。
本物の専門家と、素人である視聴者の隙間にいた。報ステなどはイデオロギー志向の強いコメンテーターを使いたがるが、美声とルックスと“経歴”を武器にそこに割り込んだ。