今までに書いたはがき絵をいろは歌に沿って紹介しています。いろは四十八文字といいますが、「を」「ゐ」「ゑ」「ん」なんかをどうしようかなと困っています。まあ、飛ばしてしまいましょうか。
第二回目の今回は「は」から「ほ」までです。
『は』・・・ハシビロコウ
「は」は「ハロウィン」ではなく、「ハシビロコウ」です。動かない鳥「ハシビロコウ」を描いて「動かざること山の如し」と書き添えました。獲物をじっと狙って待ち伏せする戦略です。ハシビロコウの好物である肺魚(ハイギョ)は、呼吸のため数時間に一回水面に上がってきます。そこをとらえて食べるためにじっとしているのだと言われています。動くと肺魚が警戒して上がってこないのだそうです。数時間も動かず、その一瞬を狙っている、集中力の高い鳥だと言えます。
同じくハシビロコウを描いて「不動如山(動かざること山の如し)」と書き添えたものです。上の絵は嘴を少し開いた状態、こちらは嘴を閉じた状態です。上が阿形、下が吽形というわけです。
『に』・・・にわとり
鳥類の絵が続きました。ハシビロコウの次はニワトリです。
この絵を描いたころ、休日となるとずいぶんな早起きをしていました。早起きをしてあることをするのが楽しみで、4時や4時半にアラームをセットしたものです。あることをした後はそのまま起きていることもありましたし、心地よい疲労感から眠ってしまうこともありました。起きていたらその分の時間が有効に使えましたし、眠ってしまうのも気持ちのよいものでした。どちらにしても素敵な時期だったと言えます。
『ほ』・・・干し柿
軒先に吊るされている干し柿を描きました。柿に甘柿と渋柿があることはみなさんご存じですが、もう少し細かい分類で、四つに分けることができます。
①完全甘柿・・・種が入らなくても、実が硬い早い時点で渋が抜ける品種。
②不完全甘柿・・種が入ることにより比較的早めに渋が抜ける品種。
③不完全渋柿・・種が入っても渋が抜けにくい品種。種の周囲だけ渋が抜ける品種。
④完全渋柿・・・種が入っても渋が抜けない品種。
渋が抜けない(抜けにくい)品種であっても渋抜きをすればおいしくいただくことができます。私見ですが、干し柿などの加工品にする場合、もともと甘い柿よりも渋柿を加工したものの方が味わい深いと思っているのですが、そのことを「干すなら完全渋柿」とはがき絵に書き添えたものです。
もう一点、干し柿を描いた作品を紹介します。こちらの方は、もう干しあがって甘くなっている感じに描きました。先の作品はまだ干したばかりですね。皮をむいた跡もはっきりわかります。こちらはもう、しなしなになっています。
ハングルで「お日様の恩恵で甘くなる」と書き添えてあります。韓国を旅行していても干し柿が吊るしてあるのを見かけることがよくあります。大きなお寺の軒下などに、すだれのようにずらりと干してあるのを見ると、なかなか風情を感じます。
「渋柿の渋そのままが甘味かな」。甘柿の材料は、捨てようとしている渋そのもの。煩悩が菩提となるの試しには、渋柿を見よ甘柿となる。渋柿変じて即菩提。煩悩の渋を取ってしまっては、菩提の甘味も得られません。渋を捨てて甘くするのではない、渋がそのまま甘味なり。その甘味となるには、日輪(にちりん)月輪(がちりん)のお育てがあればこそ。渋柿が甘柿となる日の光、月の光があればこそ。人も同じなんです。仏の光、弥陀のお育てがあればこそ。
柿は渋きより甘きに入り、人は甘きより渋きに入る(斎藤緑雨)。人は熟すと渋味が出てきます。「お宅の旦那さん、最近、渋くなってきたね」と言ったら、「渋くなったのではなく、錆びているだけです」と言われましたが、錆びているなら油を注せば何とかなります。「渋柿の首尾よう渋を甘味かな」。 (昔の説教本から)
コロナ禍で長らく韓国旅行に出かけていませんが、韓国にも干し柿がありまして、尚州(サンジュ)というところがその名産地とされています。このたび調べたところ、なんと全国生産量のおよそ六割と言いますからすごいものです。
自宅で韓国のテレビ放送を見ていて、尚州の干し柿工場を映しているのを偶然見ました。おびただしい数の柿の皮をむくのに、かんぴょうをむくときのようなくるくる回す機械にセットして、刃物を当てるだけでむけるようにしていました。実の方は干し柿になるのですが、皮の方はゴミかと思いきや、牛のエサに混ぜていました。柿の皮を混ぜたエサで育てた牛は大変美味になるということで、尚州は牛肉(焼肉)の名産地でもあると、番組は伝えていました。
「これは食べてみたいものだなあ」と思いました。韓国旅行へのモチベーションがまたアップしました。