概説 気分をリラックスさせるお薬です。不安や緊張感をやわらげたり、寝つきをよくします。
作用
【働き】
このお薬は、おだやかな作用の心の安定薬です。不安や緊張感をやわらげ、気持ちを落ち着かせます。神経症やうつ病など精神的な不具合にはもちろん、心身症のような体の不調が前面にでる病気にも使われます。心身症は、精神的な要因や自律神経の乱れがもたらす心と体の病気です。たとえば、ストレスで血圧が上がったり、胃腸の調子が悪くなったり、心臓がドキドキしたり、また、女性では生理不順を起こしたりします。
実際の処方例としては、上記のような心身症や不安神経症、パニック障害など各種の不安障害を中心に、自律神経失調症、更年期障害、うつ病や不眠症、統合失調症や躁病の急性期などに処方されています。 さらに、筋肉をほぐす作用があるので、緊張型頭痛や頸椎症、腰痛症、肩こり、けいれん性の病気などに応用されることも多いです。このように、この系統の薬は副作用が少なく安全性が高いこともあり、各診療科でいろいろな病気に幅広く使われています。
【薬理】
脳のリラックス系の神経受容体「BZD受容体」に結合することで、リラックス系の神経を活性化させます。抗不安作用のほか、次のような作用をあわせもちます。
抗不安作用..おだやかな作用で不安や緊張感をやわらげます。
鎮静・催眠作用..興奮状態やイライラをしずめたり、寝つきをよくします。同系の薬で、とくに催眠作用の強いものは睡眠薬として用いられています。
筋緊張緩和作用..筋肉のこわばりや、つっぱりをほぐす作用があります。そのため、がんこな肩こり、腰痛、緊張型頭痛などにも応用されます。
抗けいれん作用..けいれんを予防したり抑えます。
特徴
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬(緩和精神安定薬)です。比較的安全性が高く、依存性もそれほど強くありません。
同類薬のなかでは、作用がやや強く、作用時間は中くらいです(作用/時間:中~強/中間型 12~24時間以内)。
抗うつ作用をあわせもつので、うつ症状を伴うときに向きます。
パニック障害や強迫神経症にも応用されます。
注意
【診察で】
持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
別に薬を飲んでいる場合は、医師に伝えておきましょう。
妊娠中の人は、医師にお伝えください。
【注意する人】
重症筋無力症や急性の緑内障を起こしている人には使用できません。高齢の人は副作用がでやすいので、少量ではじめます。
適さないケース..重症筋無力症、急性狭隅角緑内障。
注意が必要なケース..呼吸器系に病気のある人、心臓病、肝臓病、腎臓病、脳に病気のある人、高齢の人など。
【飲み合わせ・食べ合わせ】
一部のエイズの薬との併用が禁止されています。
別の安定剤や抗うつ剤などメンタル系の薬と併用すると、強く効きすぎたり、副作用がでやすくなります。服用中の薬があるときは、必ず医師に伝えておきましょう。
飲酒は控えてください。副作用が強まるおそれがあります。
【使用にあたり】
医師から指示された用法用量を守りましょう。毎日定期服用するほか、症状の思わしくないときに頓服するよう指示されることがあります。
ふつうの生活で感じるイライラや軽いストレスの解消だけを目的に、安易に飲むべきでありません。心身症の治療を目的にするなど、医師のきちんとした診断のうえで使用する必要があります。
長期連用時、自分の判断だけで急に中止してはいけません。急に飲むのをやめると、反動でイライラしたり、強い不安感、震えを生じることがあります。
【妊娠授乳】
妊娠中の服用はできるだけ避けることが望ましいです。医師とよく相談されてください。
授乳中もできるだけ控えるようにします。医師の判断しだいですが、服用する場合は授乳(母乳)を中止するのが基本です。
【食生活】
眠気やめまいを起こしたり、注意力が低下することがあります。車の運転をふくめ、危険をともなう機械の操作や作業は避けてください。
薬にだけ頼るのではなく、休養やリフレッシュ、生活や職場の環境調整をあわせておこなうことが大切です。
【備考】
治療方針もなく、ただ漫然と続けることは好ましくありません。生活や職場環境などが安定し、症状がよくなってきたなら、医師と相談のうえ計画的に徐々に減量したり頓服のような飲み方に変えることも考慮しましょう。
医師の判断で薬を減量したり中止できるのであれば理想的です。ただ、急ぐことはありません。副作用の少ないお薬ですから、無理をせずゆっくり治療なさってください。薬以外の心理療法や自律神経訓練法も効果的です。
効能
【適用】
心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害。
【応用】
パニック障害、強迫神経症。
用法 通常、成人はアルプラゾラムとして1日1.2mgを3回に分けて経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。増量する場合には最高用量を1日2.4mgとして漸次増量し、3~4回に分けて経口服用する。高齢者では、1回0.4mgの1日1~2回服用から開始し、増量する場合でも1日1.2mgを超えないものとする。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 この系統の優れた特徴として「安全性が高い」ということがあげられます。重い副作用はほとんどありません。比較的多いのは、眠気、ふらつき、けん怠感、脱力感などです。これらは、それほど心配いりませんが、車の運転や危険な作業は控えたほうがよいでしょう。また、とくに高齢の人では、転倒につながったり、昼間からボーッとしてしまうことがあります。このような場合は、服用量を適切にコントロールする必要があります。
安全性が高いといっても、むやみに量を増やしますと、薬に頼りがちになり やめにくくなってしまいます。決められた範囲内で服用するようにしましょう。また、定期服用中に急にやめると反発的な症状がでることがあります。イライラ、不安感、ふるえ、かえって眠れない・・といった症状です。自分だけの判断で止めないで、医師の指示のもと徐々に減量すれば大丈夫です。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
依存..長期に多めの量を飲み続けると、体が薬に慣れた状態になりやめにくくなる。このとき急に中止すると、いらいら、強い不安感、不眠、ふるえ、けいれん、混乱、幻覚など思わぬ症状があらわれることがある(徐々に減量すれば大丈夫)。
刺激興奮..興奮、もうろう状態、取り乱す、かえって眠れない。(もともと精神障害がある場合などに、まれに出現)
呼吸抑制..息苦しい、起床時の頭痛・頭重感。(もともと呼吸器系の弱っている人で、まれに出現)
肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
【その他】
眠気、ボーッとする、注意力・集中力低下、頭が重い感じ、頭痛。
ふらつき、めまい感、けん怠感、脱力感。
長期連用で効き目が悪くなる。