ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

歌舞伎座「七月大歌舞伎」を観に行く

2023年07月27日 | 歌舞伎

歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部を観に行った。今日も席は3階A席6,000円。ここが一番コストパフォーマンスがよいと思っている。客は圧倒的に女性が多かった。

今月の夜の部の公演の目玉はなんと言っても「め組の喧嘩」だ、過去に一度見たことがあるが随分時間たってハッキリ覚えていないが、面白い演目だと感じていた。この演目は菊五郎一家が演じることが多かったが、今回は当世團十郎が辰五郎を演じるという、当世團十郎が辰五郎を演じるのは今回で3回目だそうだ。

作者は、竹柴其水で、河竹黙阿弥の弟子だった。当初12代守田勘弥宅に寄宿し、森田座のために作品を書いたが、のちに河竹黙阿弥に入門して新富座の立役者になり、その後明治座の立役者になり、主に市川左団次の作品を書いた。め組の喧嘩は彼の代表作。なお、河竹黙阿弥の人生についてはこちらのブログ参照。

この作品は江戸の花形、火消しの鳶職人と相撲力士の喧嘩と意地の張り合いを描いた作品。鳶職人は建築現場で働く職人だったが、ある時期から火事の現場で類焼を防ぐ役割も担うようになる、江戸の町を火から守る公共的な仕事をしていると言う自負があり、管轄は町奉行。一方、力士は大名お抱えで、刀の帯刀を許されている武士階級待遇の誇りがあり、寺社奉行管轄。あるとき、力士が大名と一緒に品川の遊郭「島崎楼」で派手に遊び、隣の部屋の障子を倒してなだれ込んでしまったが、そこは鳶職人が飲んでいた部屋。さあ、ここで鳶と力士の喧嘩が始まり鳶の親分辰五郎も居合わせて騒ぎになるが、遊郭の店主の哀願により、店主や力士の顔を立てて、引き下がることにしたが、内心は収まらない、そして、今度は芝居小屋でまた鳶と力士が一騒動を起こすと、鳶たちの堪忍袋の緒が切れて・・・・

2時間近いが1幕で、途中で何回か場面転換がある。舞台設定は派手で、カラフルな色取りで、喧嘩が主題のためアクションも多く、全く退屈しなかった。團十郎の辰五郎、男女蔵の九竜山、右團次の四ツ車、雀右衛門のお仲など、よく演じていたと思う。そして、最後に、両奉行所のはっぴを重ね着して、鳶と力士の間に割って入り、手打ちをさせる喜太郎の権十郎もさまになっていた。

神霊矢口渡(福内鬼外 作)

娘お舟 児太郎(29、成駒屋)
新田義峯 九團次(51、高島屋、團十郎門弟)
傾城うてな 大谷松(明石屋)
渡し守頓兵衛 
男女蔵(56、瀧野屋、團十郎門弟)

この演目で娘お舟を演じたのは中村児太郎、父は九代目中村福助であり、名門成駒屋の血筋。2013年に父の七代目歌右衛門襲名と同時に十代目中村福助の襲名が予定されていたが、父の急病で保留になったままである。福助は2018年には復帰しているが、まだ本調子ではないのだろう、親子でつらい日々を送っているが、是非、完全復帰して親子同時襲名を成し遂げてほしい。

鎌倉八幡宮静の法楽舞(松岡 亮 作、新歌舞伎十八番の内)

静御前、源義経、老女、白蔵主、油坊主、三途川の船頭、化生/團十郎 
三ツ目・町娘・五郎姉二宮姫/ぼたん
提灯・若船頭・竹抜五郎/新之助
僧普聞坊/
僧寿量坊/
僧隋喜坊/玉太郎
蛇骨婆/九團次
姑獲鳥/児太郎
僧方便坊/
種之助

新歌舞伎十八番とは、歌舞伎十八番を撰した七代目團十郎が、さらに自分の当たり役を網羅した新十八番を撰じようとしていたが、その志半ばで死去したため、五男の九代目團十郎が跡を継ぎ明治20 (1887) 年頃に完成させたもの、現代ではほとんど上演されない演目も多いが本作は平成30年に新たな着想により復活上演されたもの。九世團十郎没後120年という節目の今年、上演する。

この演目で興味深いのは、河東節、常磐津、清元、竹本、長唄囃子の五重奏だ。舞台にこの五つの唄い方、三味線方がブロックごとに陣取って時に順番に、時に一斉に演奏をするのはこの演目だけのことだ。こんな舞台はここでしか見られないだろう。

演技として、七変化する海老蔵もよかったし、息子の新太郎、娘のぼたんの演技もかわいくてよかった。演出もエンタメ性が強く出ており、伝統的な歌舞伎を知らない人でも十分楽しめただろう。

今月は全体的に面白かった。

さて、今夜の幕間の食事は久しぶりに銀座三越で買った弁当だ。私は淺草今半の牛肉弁当1,300円、嫁さんは大徳寺さいき家の鯖寿司、稲荷、だし巻き玉子のセット1,100円をえらんだ。

また、最初の幕間には甘味を楽しむことにして、私は仙太郎の焼和菓子(若あゆ)にした。嫁さんは確か同じ仙太郎のあんこの入った冷たい菓子だった。

最後に、今日、弁当を買いに銀座三越地下に行ったときに、京都祇園新地の鯖寿司の「いづう」が出店していた。最近、期間限定でよく出店しているが、今月も出店していると言うのは、安くはないけど評判が良いからであろう。京都に旅行したときにはなるべく買って帰るようにしているが、年に何回も行くわけではないので、東京出店は有難い。鯖姿寿司の一番小さいやつ(5貫)2,800円くらいだったか、買って帰った。

鯖の不漁で大きさが小さくなっているようだが、おいしかった。

お疲れ様でした。


歌舞伎の「勧進帳」と「伊賀越道中双六~沼津」を観る

2023年07月07日 | 歌舞伎

テレビで歌舞伎を放送していたので録画して観た。

今回は最近の公演ではなく、だいぶ前の公演だ。1980年の勧進帳と1987年の沼津だ。勧進帳はあまりにも有名だが、沼津は初めて観る演目である。

勧進帳で弁慶を務める二代目尾上松緑(1913~1898)は六代目尾上菊五郎のもとで修行をして芸を磨いた。1972年には人間国宝に認定される。1987年に文化勲章を受章。当代四代目松緑(1975~)は孫で、2022年(当時26才)の襲名披露公演で演じたのが勧進帳の弁慶だった。その時稽古してくれたのが叔父の12代團十郎だった。その後、富樫や義経も演じた。

勧進帳と沼津の両方に出演している十七代目中村勘三郎(1909~1988)は1975年人間国宝に、1980年に文化勲章を受章、ゲストの波野久里子は勘三郎の娘で、父の勘三郎の出演した歌舞伎の中で一番好きなのが沼津だという。

勧進帳は筋も分かっているので何の準備もなく見ても何とか理解できるが、話し言葉が昔の話し方なので、台詞を聞いて内容を理解するのが難しい。日頃イヤホンガイドがいかに便利な存在か分かる。松緑の弁慶、勘三郎の富樫はそれぞれしっかり演じていたと思うが、他の役者の演じ方とどう違うのか、というところまでは自分の知識ではまだ見分けがつかなかった。何かこの役者の勧進帳、というような自分で何遍も観た基準となる勧進帳を持っていないと批判はできないであろう。

沼津は初めてなので、少し予習をしてから観たが、こちらの方は世話物で台詞も日常会話と同じなので何を話しているかは理解できた。中村勘三郎の演技だが、平作が重兵の荷物を天秤棒を使って運ぶ場面で、舞台から客席にぐるっと一周するのだが、そのよろよろした歩き方が実にうまいものだった。

「勧進帳」(1980年、昭和55年)

出演

弁慶:二代目尾上松緑
富樫:十七代目中村勘三郎
義経:尾上梅幸

インタビュー出演:四代目尾上松緑

「伊賀越道中双六~沼津」(1987年、昭和62年、四国こんぴら歌舞伎)

出演

平作:十七代目中村勘三郎
呉服屋十兵衛:二代目松本白鸚(当時九代目松本幸四郎)
お米:澤村藤十郎

場所は香川県琴平町の金丸座、1835年建立、日本で一番古い芝居小屋。

インタビュー出演:波乃久里子(十七代目中村勘三郎の娘)


歌舞伎「棒しばり、天守物語」を観る

2023年06月30日 | 歌舞伎

テレビ番組で平成中村座が姫路城の三の丸広場で行った歌舞伎公演を観た。今夜の演目は舞踏の「棒しばり」と姫路城の天守を舞台にした泉鏡花の作品「天守物語」だ。

棒しばり

次郎冠者  勘九郎(41)
次郎冠者  橋之助(29、芝翫長男)
曽根松兵衛 

次郎冠者と太郎冠者は無類の酒好き。ある日、主人の曽根松兵衛は、外出中に酒を盗み飲まれないよう一計を案じ、次郎冠者の両手を棒に、太郎冠者を後ろ手に縛りつけて外出します。飲めぬとわかるとますます酒が飲みたい二人は、協力して酒を酌み交わし始めます。そうして二人がほろ酔い気分で踊り出したところへ、松兵衛が帰ってきて・・・


この演目は六代目菊五郎と七代目坂東三津五郎のコンビで初演されたものだそうだ。勘九郎の演技はなかなかさまになっていた。表情にも余裕が感じられ、亡き勘三郎にそっくりになってきた。勘三郎が常に熱演するのを見て育ったのだろう、勘九郎も常に全力で演技しているのが伝わってくる。両手を棒に縛られたままで、左手に持った開いた扇子を右手に投げて持ち替えるところはよく失敗せずにできるもんだ。

楽しく鑑賞できた。

天守物語(演出:坂東玉三郎)

天守夫人富姫  七之助(初役)
姫川図書之助  虎之介(25、成駒屋)
朱の盤坊    橋之助
亀姫      鶴松
小田原修理   片岡亀蔵
舌長姥/近江之丞桃六 勘九郎
薄       

泉鏡花の同名の小説を歌舞伎にしたものだが、あまりに斬新で奇想天外であったため鏡花の存命中は上演がかなわず、初演は昭和26年のことだった。今回、物語の舞台と実際の平成中村座の舞台が同じ姫路城というのはよく考えたものだ。最高の舞台設定といえよう。

播磨国姫路にある白鷺城の天守閣は、人間たちが近づくことのない別世界。この世界の主、富姫。富姫を姉と慕う亀姫が訪れ、久しぶりの再会を喜び亀姫に土産として白鷺城の城主である武田播磨守自慢の白い鷹を与える。その夜、天守閣に播磨守に仕える姫川図書之助が鷹を探しに現れ、富姫は凛とした図書之助の応対に、命を奪うべきところを無事に帰すが、図書之助は天守を降りる途中で燈を消してしまい、火を求めて最上階へと戻る。図書之助に恋心を抱き始めていた富姫は、自分に会った証として、城主秘蔵の兜を渡す。再び天守を降りた図書之助は家宝の兜を盗んだ疑いをかけられ・・・

泉鏡花の小説はいくつか読んだが、大変面白い。幻想的な小説が多く、本作品もそうだ。この作品は長年、坂東玉三郎が富姫を演じてきたが、今回は初めて後進の七之助が演じ玉三郎はいろいろ指導したという。また、演出もやっている。良いことではないか。七之助も玉三郎から見込まれたのだからたいしたものだ。私はまだ玉三郎の富姫は観ていないので比較できないが、七之助は立派に富姫をこなしていたと思う。


「六月大歌舞伎」を観に行く

2023年06月10日 | 歌舞伎

歌舞伎座「六月大歌舞伎」午後の部を観てきた。今回も3階A席。いつものように観客はおばちゃんが圧倒的に多く、男性は3分の1くらいか。

六月の夜の部の演目は義経千本桜から木の実、小金吾討死、すし屋、川連法眼館である。前三者は義経は出てこないで主役はいがみの権太である。ここで「いがみ」とは、いがみ合うのいがみではなく、ゆがみ、といった意味だそうだ。すなわちゆがんだ性格の持ち主で町の問題児といったイメージか。

「木の実」から「すし屋」は、源平合戦で死んだとされる維盛をめぐる物語、いがみの権太の父弥左衛門が生きていた維盛をかくまっていて、調べに来た景時を欺くため権太と弥左衛門がそれぞれ別々に一芝居うとうと画策した結果、悲劇が起こる、という話。そして景時はすべて承知の上であったという話。

「川連法眼館」は、原作の四段目の切にあたることから通称「四の切」と呼ばれ、親子の恩愛や狐と人間との慈愛を描いた作品。主役は実在の忠信と忠信に化けた子狐。松緑が両方の役を演じ分ける。ここでのポイントは初音の鼓、これは千年以上生きていた雄雌の狐の皮を剥いで作ったもので宮中の宝物であった。これを後白河法皇が義経に下賜され、鼓を打てと言う、これは鼓の表裏を兄弟になぞらえ、「頼朝を討て」との内意が隠されていたもの。義経はこれを受け取るが打たないことにして静御前に渡す。この鼓を追って子狐が佐藤忠信に化けて静御前を危機から救うが川面法眼館で化けの皮が剥されて、さあどうする、という話。

今回鑑賞しての感想

  • いがみの権太の仁左衛門は上方歌舞伎、イヤホンガイドによればこのすし屋は江戸歌舞伎と上方歌舞伎とでは言葉遣いや演じ方が違うという、今回は仁左衛門のすし屋であり上方流儀だとのこと。詳しいことはよくわからないが、役柄としては知的イメージのある仁左衛門がやってもギリギリおかしくはない役だと思った。
  • 主君のためなら自分の子供や家族まで犠牲にするといういがみの権太、家族を犠牲にというのは歌舞伎では多いような気がする。すぐに思いつくのは「菅原伝授手習鑑の寺子屋」だ。ほかにもあったと思うが思い出せない。今の常識ではそこまでやることはないであろうが、会社のためなら法令違反も見て見ぬふりをするというのはあるだろう。
  • 河連法眼館は松緑の佐藤忠信であった。昨年1月の壽初春大歌舞伎では今世間を騒がせている猿之助(当時46)の忠信を見た。猿之助は子狐が最後に初音の鼓をもって飛び上がっていくシーンで宙づりをやって派手に終わったが、松緑はオーソドックスな終わり方であった。どちらがいいと言うのでなく、それぞれのやり方があり、それでいいと思う。ただ、狐が人に化けるというのはファンタジーっぽくであまり好きにはなれない。
  • コロナ感染時には3部制がとられたが最近は2部制に戻った。今回も4時から始まり終了は8時40分だ。ちょっと長いような気がするがどうだろう。オペラでもこのくらいの時間のものは多いが、日本人はせっかちなので、特に歌舞伎は2時間か3時間で終わる3部制が良いような気がしてきた。

さて、今回は歌舞伎座に到着するのが遅れたので、三越に弁当を買いに行くのをやめて歌舞伎座地下の弁当売り場で新世界グリル梵の「ビーフヘレカツサンド」を選んだ。

(以下記録)

〈木の実(このみ)・小金吾討死・すし屋〉

いがみの権太     仁左衛門
権太女房小せん    
権太伜善太郎     秀乃介(歌昇の息子)
弥助実は三位中将維盛 錦之助(63、隼人の親、萬家)
若葉の内侍(維盛の妻)孝太郎(55、仁左衛門の息子、松嶋屋)
六代君(維盛の子)  種太郎(歌昇の息子)
主馬小金吾(内侍のお供)千之助
鮓屋弥左衛門     
弥左衛門女房お米   
お里(お米の娘)   壱太郎
梶原平三景時     彌十郎

〈川連法眼館〉

佐藤忠信実は源九郎狐 緑(48)
源義経        
静御前        春(75、梅玉の実弟、加賀屋)
川連法眼       蔵(85、加賀屋)


歌舞伎座新開場十周年「團菊祭五月大歌舞伎」を観に行く

2023年05月18日 | 歌舞伎

今月も歌舞伎座公演を観に行ってきた。今回は昼の部。先月は歌舞伎座まで来て、仁左衛門休場のことを知って驚いたが、今回は無事に観劇できた。席はいつもの3階A席6,000円だ。オペラグラスを持って行けばこの席で十分だ。劇場はほぼ満員で、主として中高年のおばさま方が多かったのはいつものことだ。

寿曽我対面

曽我ものといわれる仇討ち劇だが、仇討ちの場面はない。いろんな曽我ものが作られたが河竹黙阿弥がそれらを整理してこの寿曽我対面という作品に仕上げて、それ以降は、曽我ものといえばこの対面が演じられるようになった。

この演目では歌舞伎の役柄のすべてが登場するめずらしい演目、役柄とは、立役【たちやく】(男性の善人)、敵役【かたきやく】(男性の悪人)、女方【おんながた】(女性)があり、他に道化【どうけ】、老役【ふけやく】などがある。それゆえ、賑やかな舞台になる。

曾我兄弟を演じた右近、松也やよく頑張った。

工藤左衛門祐経 
曽我五郎時致  
曽我十郎祐成  尾上右近
小林朝比奈   巳之助(33、大和屋、三津五郎長男)
化粧坂少将   悟(32、大和屋、女方)
八幡三郎    玉(かんぎょく、26、大和屋、梅玉の養子、女方)
梶原平次景高  吉之丞(56、播磨屋)
近江小藤太   鶴梶原平三景時  
鬼王新左衛門  友右衛門
大磯の虎    春(75、加賀屋、梅玉実弟、女方)

さて、この舞台の終了後は昼食タイムだ。1人で来たときはおにぎりとかサンドイッチなどで簡単に済ませることもあるが、嫁さんを連れてきているときは、やはり幕の内弁当などを買って食事を楽しむのは必須だ。我々はいつも三越で弁当を買って、松屋で甘味を買って幕間に食べて楽しむことにしている。今日は、私は日本橋辨松の弁当にした(1,400円くらい)。甘味はいつもの松屋にある「茂助だんご」だ。

若き日の信長

信長は若いころ、慣習もしきたりも無視して傍若無人なふるまいをすることから「うつけ者」などと呼ばれていた。信長自身は物事を過去のしがらみにとらわれずに考え、合理的に行動していたが、周囲の理解がなく密かに悩んでいた。一番の家臣平手中務政秀でさえ真に信長を理解していなかった。このような斬新な見方をしてこの歌舞伎を書いたのが大佛次郎だ。

昔は歌舞伎作者はそれ専門の職業であり、作品は時代物、世話物、舞踏に分類されていたが、現代では大佛次郎など専門外の劇作家や文学者がつくる歌舞伎作品がある、これを現代歌舞伎という。本作もそうだ。ただ、見終わった感想としては、明治座などでやるお芝居と何が違うのかあまりよくわからなかった。

当代團十郎は、信長をよく演じていたし、お似合いの役だと感じた。当代團十郎と一般的な信長のイメージとが重なる感じがする。

織田信長    團十郎
木下藤吉郎   右團次
弥生      児太郎
五郎右衛門   男女蔵
甚左衛門    
監物      九團次
林美作守    
僧覚円     
林佐渡守    
平手中務政秀  
玉(76、高砂屋)  

音菊眞秀若武者(岩見重太郎狒々退治)

題名の「おとにきく まことのわかむしゃ」は、「おと」は音羽屋を、「きく」は菊五郎を表している。眞秀は既に寺島眞秀の名前で舞台を踏んでいるので、今回が初舞台ではないのではと思うが、業界用語では、寺島眞秀としての出演は「初お目見え」であり、今回、初代尾上眞秀としては「初舞台」となる。

豪華メンバーによる初舞台、女方、立ち役両方を華麗にこなした眞秀、立派だったしかっこよかった。この家系に生まれたからといって安泰というわけではなかろう、10才の子供ながら大きなものを背負って役者として身を立てる決断をした眞秀は立派なものだ。

岩見重太郎  
弓矢八幡   
長坂趙範   
藤波御前   菊之助
大伴家茂   團十郎
渋谿監物   彦三郎(46、音羽屋、楽膳長男)
趙範手下鷹造 坂東亀蔵(44、音羽屋、楽膳次男)
腰元梅野   枝(35、萬屋、時蔵長男)
若者萬兵衛  萬太郎(34、萬屋、時蔵次男)
同      光作 巳之助
同      佑蔵 尾上右近
重臣布勢掃部 
局高岡    
重臣二上将監 善 
  

   
今日はゆっくり楽しめた。どの演目だか忘れたが長唄の杵屋勝四郎と杵屋巳太郎が2人で出てきて三味線で唄ったのはよかった。また来月も観に来たい。
   
   
   
   
   
   

   
   
   
   


「京都南座吉例顔見世興行 女殺油地獄」を観る

2023年04月03日 | 歌舞伎

テレビで放映されていた令和4年12月の京都南座吉例顔見世興行、近松門左衛門作「女殺油地獄」(おんなごろしあぶらのじごく)を観た。実はこの顔見世興行、私も観に行ったが観たのは別の演目だった。

この作品は人形浄瑠璃で初演され、歌舞伎でも上演されたが評判が良くなかった、明治42年に再演され大絶賛された、江戸時代享保年間、大阪中を震え上がらせた殺人事件がベースになっているが詳細はわかっていないそうだ。

主人公の与兵衛は片岡仁左衛門の当たり役で平成21年、仁左衛門が65才の時、一世一代の舞台を務めるとあとは多くの役者が挑戦している役で、今回は愛之助が演ずる。

簡単なストーリーは、大阪天満の油屋のバカ息子河内屋与兵衛が放蕩をしつくし、親をも足蹴にする有り様となる、遊び金の借金の取り立てに追われ、同業の油屋豊嶋屋の女房お吉に金を無心して断られると、ついに金ほしさにお吉を殺してしまう、というもの。

複雑な家庭環境、放蕩息子とその息子に対する親の情愛、息子の狂気などを描く人情もの。最後のお吉の殺害場面での修羅場が一番の見所。油まみれになりながら逃げまわるお吉に襲いかかる与平衛、舞台の上にも油に見立てた液体がビシャビシャと飛び散る様は迫力がある。

愛之助は与平衛を良く演じていたと思う。仁左衛門の与平衛も観たことがあるが、私の考えは普段の学者然としたイメージの仁左衛門にはこのような放蕩息子の役は似合わないというものだが、愛之助はインテリのイメージはなく、どこが愛嬌のあるところもあるので、このような役はぴったりはまると思った。

配役は

母)おさわ   中村
義父)河内屋徳兵衛 嵐橘三郎(番頭上がり)
河内屋与兵衛  愛之助
兄太兵衛    中村
妹おかち    千之助
山本森右衛門(おさわの兄)  松之助
芸者小菊    壱太郎


豊嶋屋七左衛門 片岡進之介
お吉      孝太郎

小栗八弥    鷹之資
口入小兵衛   市村橘太郎


「三月大歌舞伎、天川屋義平内の場、身替座禅」を観る

2023年03月24日 | 歌舞伎

歌舞伎座で三月大歌舞伎昼の部を観た。座席は3階A席、夫婦で11,000円、中央前から3列目で、だいたいこの位置が好きで一番コスパが良いと考えている。舞台は全部見えるし、花道も半分見える。直前に予約したけど今日は3階席はずいぶん空いていた。最近では一番悪い入りかもしれない。今日の昼の部は1幕もの2つだ。

仮名手本忠臣蔵
十段目 天川屋義平内の場

この演目は通し狂言では省略されるし、単独では今まで4回しか演じられていない、これはこの場が仇討ちの本筋から少し外れること、由良之助が商人を脅して試すことに釈然としないと感ずる人がいたためなどと言われている。

天野屋利兵衛という人物は実在の商人だが赤穂藩とは関係がなかった。歌舞伎では天川屋義平と名前を変えて大阪の商人とし、武器の調達をして赤穂藩の討入りを支援していたことにした、そしてそれがお役人に気づかれ、義平の運んでいた荷物を差し押さて「この中身は何か」と厳しく問い、答えねば子どもを殺すとまで脅かされたが、義平は「天川屋義平は男でござる」と啖呵を切り、白状しなかった。一番の見せ場だ、そして、その後がまたサプライズで、実はお役人だと思っていた人たちが赤穂藩の大星由良之助とその配下の浪士たちだった、由良之助は義平が信頼できるかどうか試していたのだ。義平の商人魂に感心した由良之助は、商人は討入りに参加できないが討入りの時の合図に「天」と「川」を使うことにして、義平も事実上参加していることと同等だとして義平の忠誠に報いることにした。

日本人だったら感動するだろう。義平は商人なのにたいしたものだと。

さて、由良之助はもともと義平を信頼していたが、四十七士の中には義平が商人であるため信頼できないのではと言う者がいたため、あえてその不満分子を使って一芝居打ったと言う説明もなされている。

天川屋義平    
大星由良之助   幸四郎
竹森喜多八※   坂東亀蔵(44)
千崎弥五郎※   中村福之助(芝翫次男)
矢間重太郎※   歌之助(芝翫三男)
医者太田了    竹橘太郎
丁稚伊吾     
大鷲文吾     
義平女房おその  
孝太郎
※ 塩冶家家臣(赤穂藩)

新古演劇十種の内 身替座禅

例の音羽屋の演目だ、すべて明治になってからの歌舞伎作品で、身替座禅は狂言の大曲「花子」をもとにした松羽目物の舞踏劇。大名の右京は奥方の玉の井からベタ惚れされているが、頭が上がらない、愛人が都に来たので奥方の目を盗み会いたいと思案した結果、邸内の持仏堂で座禅をすると奥方に言って、実は太郎冠者に身替りで座禅をさせ、その間に浮気する、奥方はこれを見破る、それとは知らずに愛人との逢瀬の後、持仏堂に戻って太郎冠者と思って逢瀬の話をするが・・・・

松緑の右京は先日の土蜘蛛のイメージが残っているのでなんとなく役柄に合わないような気がしたが鴈治郎の玉の井はぴったりはまっていた。こういう役が鴈治郎には合っているような気がする。結構ひょうきんなところがある、普段玉の井に全然頭が上がらない右京だが、玉の井は本当に右京に惚れている、だから怒ってもなんとなく憎めないキャラで、最後は右京を許す。

この演目で役者の演技以外で注目したのは常磐津と長唄連中が両方で代わるがわる演奏や唄を歌うことだ。長唄の立三味線は杵屋巳太郎、立唄は杵屋勝四郎で、先日紀尾井ホールで観たメンバーだ。今日は長唄の太鼓や笛は若手も出演されており、後継者育成は問題ないのかな、のと印象を持った。

山蔭右京     緑(菊五郎から交替)
太郎冠者     権十郎
侍女千枝     悟(彌十郎息子、32)
同 小枝     玉太郎
奥方玉の井    
鴈治郎

 


「團菊祭 五月大歌舞伎 三人吉三巴白波」を観る

2023年03月21日 | 歌舞伎

河竹黙阿弥の作品「三人吉三巴白波 大川端庚申塚の場」のテレビ録画を見直した

出演は若手中心だ

お嬢吉三:尾上右近
お坊吉三:中村隼人
和尚吉三:坂東巳之助
夜鷹おとせ:中村莟玉

この作品は1860年初演、吉三(きちさ)という同じ名前を持つ3人の盗賊が出会って義兄弟の契りを結ぶと言う話、世の中が激変していた時代(明治維新は1868年)、黙阿弥調(七五調)の名台詞がふんだんに使われている、これは西洋劇の独白は自分はこう思っている、感情を吐露するせりふが多いが、黙阿弥の独白は景色、おぼろ月やかがり火など、叙景だ、言葉による絵画美で客に心地よく響く、言葉を聞いて絵を思い浮かぶせりふだと解説されていた。また、黙阿弥は、普通に見えた人が悪の本性を出すと言うのを好んで描いた、お嬢さんが実は盗賊だったなど本作でも見られる。先に見た土蜘蛛でも比叡山の僧が実は土蜘蛛だった。

あらすじは、両国橋近くの大川端、客が忘れた100両の金を持った美しい娘(夜鷹)が着物姿の娘、実はお嬢吉三、に道を尋ねられ、親切に案内していると突然その娘が盗賊の本性を現し、夜鷹の娘を川に突き落として金を奪う。その一部始終を見ていたもう1人の盗賊のお坊吉三、金をよこせとお嬢吉三とけんか沙汰に、その喧嘩を止めに入った和尚吉三、一番格上の和尚吉三の取りなしで喧嘩は収まり、3人が兄弟のちぎりを交わす、と言った結構単純なあらすじ。この作品はここから何幕も続く長編だが現在ではこの大川端の場が人気があるのでこの部分だけが上演されることが多い。

1幕で40分程度の長さで、あらすじも複雑ではないのでわかりやすい。あまり絵になるような様式美はないが、若手俳優中心の舞台で十分楽しめた。お嬢吉三の右近は歌舞伎座で主役級の役をやるのは初めてだそうだが、有名な七五調のせりふ、「月もおぼろに 白魚の 篝(かがり)もかすむ 春の空・・・こいつは春から 縁起がいいわえ」はハラハラ聞いていたが、うまく言えていた。


「團菊祭 五月大歌舞伎 土蜘蛛」を観る

2023年03月21日 | 歌舞伎

先日、紀尾井ホールで「河竹黙阿弥の世界」の公演を観たのを機に、過去の歌舞伎座公演のテレビ録画の中で黙阿弥作品を探したところ、2021年5月の團菊祭での土蜘蛛があったので見直した。河竹黙阿弥は江戸から明治にかけて活躍した歌舞伎作者で生涯360もの作品を残した、江戸と明治という全く違った時代を生きた。

土蜘蛛は音羽屋の新古演劇十種の第1番目の作品、五代目菊五郎が1881年(明治14年)に初演した、六代目菊五郎、二代目松緑、当代菊五郎に受け継がれ、今は、当代松緑が演じている。

「新古典劇十種」とは明治以降に書かれた作品の中から主に能狂言をモチーフにし、古典的味わいのある格調高いものを10個選んだもの。江戸末期から明治にかけての名優だった五代目尾上菊五郎が「尾上家の家の芸」として制定したもので格調高い「松羽目もの」だ。そのほかには先日紀尾井ホールで見た「茨木」や「身代わり座禅」などがある。

あらすじは、平安時代が舞台、源頼光(らいこう)は病で療養中、そこに比叡山の僧「智疇(ちちゅう)」が祈祷をすると言って訪ねてくる、そのしぐさの怪しいのを太刀持ちの音和が気づき、頼光が常にそばに持っている「膝丸(ひざまる)」という名刀で斬り付けたため、蜘蛛は逃げていく。頼光の命令で家臣の平井保昌と四天王が土蜘蛛退治に行き、大立ち回りの末、撃退し、めでたしめでたしとなり幕となる。

土蜘蛛の松緑は実に役柄に合っていた、ぎょろっとした眼、大きな口など土蜘蛛のイメージそのもの、寺嶋眞秀の太刀持ちもよく間違えずにせりふが言えて立派だった。後半の大立ち回りは衣装が華やかで見ていて楽しかった。前半でもあったが土蜘蛛が次々と繰り出す「千筋(ちすじ)の糸」が印象的だ、これは能楽でも秘伝だそうだが一回の失敗もなくやってのけたのは立派だった。もう菊五郎は土蜘蛛はやらないのかな。

1時間半くらいの劇だがさすが黙阿弥、退屈せずに楽しめた。

出演
叡山の僧智籌じつは土蜘の精 尾上松緑
平井保昌          坂東亀蔵(楽善の息子)
渡辺綱(四天王)      中村福之助(芝翫の息子)
坂田公時(同上)      中村鷹之資(富十郎の息子)
碓井貞光(同上)      尾上左近
卜部季武(同上)      市川弘太郎
太刀持音和         寺嶋眞秀
侍女胡蝶          坂東新悟(彌十郎の息子)
源頼光           市川猿之助

 

「浮世絵で楽しむ邦楽、大谷コレクション2、河竹黙阿弥の世界」を観る

2023年03月15日 | 歌舞伎

歌舞伎狂言作者として河竹黙阿弥の名前は有名である。歌舞伎ファンとしては黙阿弥の知識がほとんどないので、紀尾井ホールで「河竹黙阿弥の世界」と題する公演、トークショウがあるのを見つけ、是非観てみたいと思い申し込んだ。

紀尾井ホールはクラシック音楽の公演で何回か行ったことがあるが、邦楽の公演もよく開催している。以前、確か「景清」をテーマにした公演に行ったことがあるので今回は2度目の邦楽鑑賞である。場所は3階の小ホールで、座席数は250席で後ろの席に座っても舞台とかなり近く、迫力がある。今回は、2列目中央といういわばかぶりつきの良い席、5,000円だった。客はほとんどシニアだったが若者も若干見られた。

今回は、紀尾井ホールに隣接するホテル・ニューオータニを作った実業家大谷米太郎氏の膨大な浮世絵コレクションから河竹黙阿弥に関連した作品に焦点を当てつつ、黙阿弥の作品である「白波五人男」、「白波五人女」、「時鳥殺し」を黒御簾音楽で実際に聞き、渡辺保氏や長唄三味線方の八代目杵屋巳太郎氏(57)の解説を聞き黙阿弥の理解を深めるものだ、また、後半は黙阿弥作の長唄「茨木」を聴き、やはり、渡辺氏と巳太郎氏の解説を聞き、作品の長唄を堪能する、という企画だ。

渡辺氏はNHKの歌舞伎番組に解説としてよく出演されているし、歌舞伎関係の本も多く書かれているので、話はわかりやすく、面白い。一方、杵屋巳太郎氏は厳しい訓練を積んでいるのであろうが話しぶりはそんなところを微塵も見せず、人当たりの良い紳士という感じで、かつ、ユーモアセンスもあり、親しみの持てる印象を持った。

「茨木」は、唄方、三味線方に囃子(能管/篠笛・小鼓・大鼓・太鼓)が加わった総勢14名の賑やかな唄だ。この唄方のリーダー的存在(タテ唄)が杵屋勝四郎氏(63)だ、勝四郎氏はコロナが発生した当初、テレビの番組で自宅からパソコンで長唄の稽古をする姿や、エレキギターを演奏する姿などが紹介され、偶然その番組を見て、親しみを持った。性格も温厚でやさしそうな感じの人だが、今日は厳し顔つきで茨木を一生懸命唄っていた。

長唄のメンバーを見ていると、三味線、唄の10名は若手も何名か含まれていたが、囃子の4名はそれぞれの最長老格の師匠が出ていたせいか皆さんご高齢な方ばかりとお見受けした。後継者がしっかり育っていれば良いのだがどうなんだろうか。

引き続き、歌舞伎に関連した事項の理解を深めていきたい。

今日の番組

  • お話「河竹黙阿弥の女たち」
    渡辺 保
  • 黒御簾音楽で聴く河竹黙阿弥
    対談  杵屋巳太郎
        渡辺保
    演奏  尾上菊五郎劇団音楽部
        田中傳左衛門社中
  • 長唄「茨木」河竹黙阿弥作・杵屋正次郎作曲・杵屋巳太郎構成
    唄   杵屋勝四郎、松永忠次郎、杵屋巳之助、杵屋和三朗、杵屋勝四助
    三味線 杵屋巳太郎、今藤長龍郎、今藤龍市郎、松永忠三郎、今藤龍十郎
    囃子  田中傳左衛門社中