介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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「公共哲学」を社会福祉学に応用できるか?

2008-01-07 16:37:53 | 政治社会
【動機】
『公共哲学とは何か』(山脇直司、ちくま新書。2004)
という本を読みました。
まえから、「公共哲学」というシリーズものが刊行されていた
(全10巻、東京大学出版会。2001-02)
ので
何か、社会福祉学の展開に資するところがないか?
という動機でとりあげます。

いま、少しずつ読んでいる三島亜紀子の本では
社会福祉学がその時代の学問の発展の影響を受けてきた
(心理学→マルクス理論→システム論?)
という視点で分析していた(第2章)。

【この本の構成】
新書版ですが、がっちりとした内容です。
「はじめに」と「おわりに」があります。
次の6章から構成されています。
1 公共哲学は何を論じ、何を批判し、何をめざすのか
2 古典的公共哲学の知的遺産
3 日本の近・現代を読みなおす
4 公共世界の構成原理
5 公共哲学の学問的射程
6 グローカルな公共哲学へ向けて

【社会福祉への言及】
第3章、第4章などに社会福祉に関連する言及があります。
(それが、この本を読もうとした理由でもありますが)
一番印象に残ったのは、
今田高俊(社会学)の「ケア」に関する発言です(p156)。

【意欲的な社会思想史の教科書】
第2章と第3章は、簡潔ながら、西洋・東洋の社会思想史の教科書だ
ということです。(横井小楠、福田徳三などのコメントが面白かった)
第6章の結論部分は、正直いって、社会福祉の実践の第一線にたっていうかたにはピンとこないのでは?
と思いました。
「グローカル」という概念はアメリカ流の手垢がついていますし、
結論部分の「理想主義的現実主義」と「現実主義的理想主義」という方法論は
ことばの遊びのように(私には)思えました。

【もう一つの公】
・・忙しい中を(このブログを)読んだのに!
と怒られそうですが、
ポイントは、本書の冒頭の部分で
これまで「公」といえば、国家を指していたのだが、
「公」には、市民の側からの「おおやけ」がある。
という点を強調しているところにあります。

【研究室の思想】
著者は、
大学 経済学部
修士 哲学研究科
博士 ミュンヘン大学(哲学博士)
現在 東大大学院教授(総合文化研究科国際社会科学専攻)

「学問横断的」「包括的な射程」といわれ、「哲学」とは、幅広い学問分野の知識を駆使して考える方法という示唆を受けます。

【ネットワーク】
公共哲学のサイトがありました。
私のホームページ「体系の模索」の箇所にリンクしました。
著者は「思想と政策をリンクさせる学問」(p12)といいますが、
今後、憲法改正というレベルの議論が出てきたときに
研究室ではなく、社会福祉の現場からの問題提起が届くように
多少の準備が要るのではと思いました。
 
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1 コメント

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ありがとうございました (山脇直司)
2008-01-07 20:22:23
率直なコメントありがとうございます。
第六章の続きは、今度出す本http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-010107-3.html
で展開してあります。また、社会福祉に関しては、『社会福祉思想の革新』(かわさき市民アカデミー)で展開しました。学者稼業ながらも、できるだけ現場の方々とお会いするようにしていますので、どうかよろしくお願いします。

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