介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

新しいブログにリンクしています。7つのテーマにわけました。引き続きお読みください。

第4067号 ジェンダーの視点からみた日本陶磁史:ナンシー・アース

2010-11-20 06:45:39 | 鹿児島
昨日、11月19日午後、勤務する鹿児島国際大学で、国際シンポジウムが行われた。「国際学術検討会 日本の焼物:縄文から現代の陶工・道具・器」という企画で、研究発表、ポスターセッション、討論が考古学研究室の院生達を中心に行われた。

冒頭のニュージーランドのオタゴ大学博士課程在学のナンシー・アース氏さんの発表を聞いた。13:10から14:10の1時間。
*この発表会は、昨日と、月曜(11月22日)の2回にわかれていて、初日の昨日は、陶芸史と現代女性陶芸家に関する人類学的・社会学的研究や、先史時代の土器製作者のジェンダーに関する問題のような、ジェンダーに関する発表のほか、先史時代の土器製作者の心を科学的に解明しようという認知考古学的研究、土器の分布とエスニシティに関する議論など、考古学的に先端的課題についての発表がありました。

【世界最古の焼物】
縄文時代の土器は、16500年前に遡り、世界最古の焼物として国際的な注目を集めている。当時の焼物は女性によって作成されたという最近の研究動向を踏まえた紹介があって、「ジェンダーと考古学」という視点での研究テーマを知る。

【男性支配の時代】
5世紀以降、仏教・儒教が導入され、ロクロと窯という技術革新が朝鮮半島から導入されてからは、男性によって操作される蹴ロクロが支配的となった。製作工程におけるハードな肉体労働、「けがれた性」である女性が神の領域である窯に近づくことが許されなかった。
下準備の土をこねるという作業を女性が分担した。

【日本で最初の女性による陶芸】
「陶芸家」という表現には、すでに「家」=伝統的な伝統支配、という思想が含まれているので「陶道」とか「陶芸をする人」といった表現を用い、日本で最初の女性による陶芸として太田垣蓮月(京都の尼僧、1791-1875)が紹介された。

【鹿児島】
 江戸期までの人口比における武士階級の比率が10%といわれる中で、鹿児島(島津藩)では25%という数字があり、このことが鹿児島をして「日本で最も保守的な県」としている。知覧の武家屋敷の写真を示して、男性用の玄関と女性用の玄関などに分かれていた例が紹介された。

島津義弘が文禄年間(1592年-98年)43人の陶工達を朝鮮半島から連れてきて苗代川(美山)周辺で陶器を作成させた。これが薩摩焼の始まりとなった。

【活躍する女性達】
アース氏の発表の特徴は、自らも指宿で10年以上陶器を焼き、鹿児島の女性達で陶器を作成する人々を訪問して、その活動の実態を報告する点にあった。200名ほどの鹿児島の陶芸をする人のうち、17名の女性が紹介された。(その活動場所が写真にプロットされている)
ケース・スタディとして寺尾カリナの陶芸と生活がとりあげられた。

【質疑】
会場には、瀬戸山学長もみえていて、ジェンダーという視点からの考古学の最新の切り口を経済学の立場からコメントされた。私も、「ソーシャルポリシーにおけるジェンダー」という視点から感想と質問をしました。「介護は女性のもの」とアース氏が言及された点をとっかかりに「介護はなぜ社会から低く評価されてきたのか」の根源を考えることができそうに思ったからです。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第4066号 介護保険制度の見... | トップ | 第4068号 お昼は学園祭で »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
根源と女性 (又佐)
2010-11-20 08:17:48
焼き物の歴史に中にある女性。
家として進んでいく陶芸。
女性が初めに手にとったものが、歴史の中で位置づけられてきた。

社会的評価の根源と女性、なんとなくつながりますね。今だそこから抜け出せないのでしょうか。僕の田舎でもまだまだ、嫁がという認識は普通に認められているところです。
国際的な流れ (bonn1979)
2010-11-20 17:06:36
又佐さん

コメント有難うございました。

今回の発表者は
ニュージーランドの方で
10年以上鹿児島に住んだとのこと。

パプア・ニューギニア
では現在でも女性が土器を作っているといった
話があって
広い視野で考える意味を
学生達に伝えたとおもわれます。

フロアーには
鹿児島の現役の女性で陶芸をする方が
何人か見えていて
鹿児島の女は困難を乗り越えてきたのだ
というお話もあった。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

鹿児島」カテゴリの最新記事