介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

新しいブログにリンクしています。7つのテーマにわけました。引き続きお読みください。

第3412号 学会と日常

2009-12-18 03:58:02 | 社会福祉
日本社会福祉学会の学会誌『社会福祉学』第50巻第3号(通巻91号)が届きました。(写真はその表紙)

【非売品】
235ページ。年4回刊行されます。
5300人の学会員宛送付されています。普通の書店にはおいてない「非売品」ですね。

大学の教員など、研究職に就くためには、このような学会誌に幾つかの論文を投稿することが第一歩です。「査読」といって厳格な審査を受けますし、そのために投稿してから掲載されるまで時間がかかる(半年ぐらい)。
最近では、博士課程の院生の投稿が多い。というのも、どの大学院でも、博士論文を受け付ける前提条件として「査読つき論文○件」を課しているからです。

【学会と日常】
私のブログのタイトル、そしてブックマークの下段のブログをみていただければ、このブログのねらいは社会福祉学の研究者ではないのです。

まだ、成功はしていませんが、本当は、普通の市民のかたに、「社会福祉とはなにか?」「社会保障の分野では何が起きているのか?」などをわかりやすく知る材料を提供できれば・・ということを念願としています。

社会福祉学の研究者が参加している学会の視野だけでは、本当の社会福祉は育たないのでは?という思いがありますね。

自家焙煎のコーヒー屋、カントリー雑貨屋、ベルギービール、牛乳屋さんなどのブログをブックマークさせていただいているのも、こういう自営業の皆さんから一般市民からの視線でご意見をいただき、社会福祉の世界の専門家には一般市民の生活と意見を知って欲しい・・

【学会回顧】
今回の学会誌は、年に1度、この季節に「学会回顧」という特集を組んでいますので、ふだんは学会には出席しない私なども、その特集を読むことで学会の動向を概観することができますね。

10の分野について、その分野を代表する研究者が1年間(2008年度)の論文から注目すべきものを選び、コメントしています。

私の土地勘のある「高齢者福祉部門」pp.169-175
を読んでみます。岡山県立大学の香川幸次郎先生の担当です。

【212論文から】
2008年度に書かれた学術論文で、高齢者福祉の分野では、212論文あった。
事項別には、
・高齢者の健康、身体・心理社会的機能   66件
・保健医療福祉              43
・ソーシャルワーク方法論(高齢者虐待など)27
・ソーシャルワーク方法論(認知症ケア)  26
が大きな事項です。

成年後見
貧困と排除
などを扱った論文はなかった。

私が特に勉強している「高齢者福祉政策」では、8件の論文があった。

【研究分野】
高齢者福祉の分野を、幾つかのテーマに細分して、主要論文を紹介しています。
1 高齢者
・高齢者虐待
・終末期
・居住
2 介護者と介護負担感・介護継続
3 介護職員・サービス事業者
4 介護保険制度

【介護職員・サービス事業者】
では、8件の論文があげられていますが、このうち、CiNiiという学術文献検索システムで検索して、全文がインターネットで無料で読めるのは、次の1件だけでした。
・関谷栄子らの「小規模ディサービスの機能と継続する上での課題」
(『白梅学園大学短期大学紀要』45、pp.69-83)

タイトルのみ検索できたものが次の4件(要約はついていません)
後の3件は、タイトルすら検索できませんでした。

藤島薫

宮崎民雄

中西三春ら

鈴木依子

【日常と学会の間には】
深い溝がありますね。
学会誌は本屋には売っていない。
論文をインターネットで読むことはできない。
論文要約ですらインターネットにはアップされていない。

*学会誌などで発表される個々の論文の紹介は、坂之上介護福祉研究会の方で紹介していきます。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
学会発表 (陳)
2009-12-18 19:09:01
明日の午後、私は第7分科会「医療福祉分野」で自由研究報告を行う予定です。
理論と実践 (又佐)
2009-12-18 21:26:15
そう考えると実践者と研究者は相互に交流し成果を市民目線で確かめることができる「何か」を用意していくことが求められるような気がします。
目に見える介護 介護の見える化ではないですが、そんなことを考えました。
論文がない分野 (岩清水)
2009-12-18 23:08:02
成年後見制度と貧困と排除の論文がないことが気になりますね。
現場を知る研究者がほとんどいないのでしょうか。
意欲的な研究者が待たれます。
研究と実践の乖離 (Maa-chan)
2009-12-19 03:21:07
 先生のご指摘は,「社会福祉研究」と「社会福祉実践」との乖離,だと感じています。

 かねがね「研究と実践は別」という言われ方をし,私もそう思っていたことも事実です。しかし,社会福祉実践は社会福祉研究の上に成り立つことで,「エビデンス」のある実践になるので,実践と研究が別であると思ってはいけないのだと考えています。

 ただ昨年,母校の学内学会のこども分野の研究発表を聴きに行き,まだまだ「研究のための研究」が圧倒的多数を占めていると,ちょっと残念な思いでした。

 失礼な言い方ですが,「研究者一筋」の方にはいわゆる「原理研究」をお願いしたいと思っています。逆に「実践者あがり」の研究者には,「わかりやすい言葉」を使って日々の実践に応用可能な研究をお願いしたいと思っています。

 少しでも「社会福祉研究」と「社会福祉実践」が近付き,科学としての社会福祉学が成立してほしいと願っています。
学会誌 (おうぎや)
2009-12-19 22:09:51
先日はご訪問頂きありがとうございます。


まだ小生は、今年の社会福祉実践理論学会(ソーシャ
ルワーク学会)でやっと初めての学会発表を行いまし
た。来年の明治学院大学で、学会発表の準備を始め
ています。


目下、小生は、あえて現場の事例を語ることを禁欲的
に制限して研究を行っております。これは現師匠の背
中を見て決めたことです。

積み重ね (bonn1979)
2009-12-21 11:58:56
おうぎや さん

コメントありがとうございます。
実習生の指導などお忙しいご様子です。

いま
博士コースの院生をみていますと
やはり学会発表を重ねながら
ゴールに向かっていく様子が
よくわかります。

人前で発表し、批判を受ける。
その内容で投稿し、査読を受ける。
この繰り返しで
おのずから蓄積ができてくるのですね。

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