介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

新しいブログにリンクしています。7つのテーマにわけました。引き続きお読みください。

第3628号 介護政策の国際比較

2010-04-11 08:33:14 | 地球→ドイツブログ
写真は、安曇野の春の訪れ。安曇野カンポンLIFE 2010.04.09 からお借りしました。


【動く時代と追うテーマ】
日本の介護政策はどのような状態と考えればよいのか?

私自身は、69歳で介護保険の第1号被保険者ですから、当事者の仲間入りしたともいえますが、鹿児島の介護現場を知っているわけではないです。

日本の介護政策を遠くからみて位置づけるという仕事を自分に課してきましたが、そろそろ店じまいという気持ちも多いです。


というのも、10年前に日本に介護保険制度ができて、現在は、この制度をどう維持するのか?どのように問題点を克服するのか?というふうに私が介護政策を学び始めた時代とはテーマが違うからです。

かって、大内兵衛先生(むかし、法政大学総長)は、「時代はその時代の問題を持つ」といった表現をされていた。

というわけで、
私の追ってきたテーマはそのままでは消え入りそうですね。
「日本がたどってきた介護政策、とくに介護専門職に関する政策の意義と課題は何か?」
を明らかにすることが、韓国や中国など日本とは文明的に近い国々の高齢化を考察するのに資するのでは・・というテーマに切り替え中です。

【対照とするのは・・】
日本の介護政策を国際的な全体像の中で位置づける・・という作業は、個人的にできるものではなく、組織的な作業を必要としています。

先日、厚生労働省から発表された「海外情勢報告」の中から、スウェーデン、ドイツ、イギリスの社会保障に関連する部分をとり上げ、そのなかでも介護保障に関する部分をコピーしてみました。

・スウェーデンは、理想像として引用される「北欧モデル」の一つとして
・ドイツは、社会保険を基軸とする「大陸モデル」の代表格として
・イギリスは、社会保障の母国であり、最近、介護政策に重点をおきつつある国として

*アメリカには、これまで公的医療保険もなく、メディケアなどもありますが、先進国ではもっとも悲惨な介護政策の国です。(あるいは、国としての「介護政策の無い国」といってもいいでしょう)

以下は、3つの国について、上記、厚生労働省の報告からさわりを抜きだしたもの。詳しくお知りになりたいときは、「坂之上介護福祉研究会」資料編から参照ください。

         *        *        *        *        *

【スウェーデン】

スウェーデンでは、65歳以上の高齢者の比率は1984年に17%台に達して以降は安定的に推移しているが(2008年末17.8%)、80歳以上人口比率は1985年の3.7%から2008年には5.3%まで高まってきている。
コミューンが提供義務を負う高齢者福祉サービスは、在宅サービスと施設サービスに大分される。
在宅サービスには、ホームヘルプサービス(Hemtjänst)、訪問看護(Hemsjukvård)、 デイサービス(Dagverksamhet)・デイケア(Dagvård)、ショートステイ(Korttidsvård/boende)、緊急アラーム(Trygghetslarm)、移送サービス(Färdtjänst)などのメニューがある。
一方の施設サービスについては、社会サービス法上「施設」は高齢者のための「特別住居(Särskiltboende)」として定義されており、施設というより介護などの特別なニーズを有する高齢者のための「住宅」という考え方に立っている。
 以前は高齢者の集合住宅であるサービスハウス、重度の介護が必要な者のためのナーシングホーム、認知症の者のためのグループホームなどの分類が存在したが、近年新たに設立された施設ではこれらの形態間の明確な違いはなくなってきている。
2007年現在、65歳以上の者の約6%、80歳以上の者の約16%が「特別住居」で暮らしている。サービスの提供はコミューンが直接提供する場合が多数であるが、民間委託が特に中道右派政党が市政を担っている都市部を中心に増大傾向にある。
2007年には高齢者が受けたホームヘルプサービスのうち約11%(利用者数ベース)、高齢者が居住する「特別住居」のうち約14%(入居者数ベース)は民間企業などコミューン以外の事業者によって提供されたものである。


【ドイツ】

被保険者は、原則として医療保険の被保険者と同じ範囲であり、年齢による制限はない。つまり、被保険者である若年者が障害等で要介護状態になった場合には、当然に介護保険からの給付を受けることができる。
保険者は介護金庫と呼ばれ、医療保険者である疾病金庫が別に組織し、運営している。
介護保険の財源は保険料であり、国庫補助は行われていない。
保険料率は、2008年7月に0.25%引き上げられ、賃金の1.95%(被保険者:0.975% ,事業主:0.975%)となっている。(ただし、子を有しない23歳以上の被保険者については、2.2 %( 被保険者:1.225% ,事業主:0.975%)となっている。
要介護認定は、医療保険メディカルサービス(MDK;疾病金庫が各州に共同で設置し、医師、介護士等が参加する団体)の審査を経て、介護金庫が最終的に決定する。要介護度は要介護Ⅰから要介護Ⅲまでの3段階であるが、要介護Ⅲのうち特に重篤と認められるケースについては支給限度額が嵩上げされる。
介護保険の給付には、①在宅介護・部分施設介護、②介護手当、③完全施設介護、④代替介護(年間4週間、1,470ユーロ以内)、⑤ショートステイ(年間4週間、1,470ユーロ以内。)、⑥介護用具の支給・貸与(例:介護ベッド、車椅子、昇降装置)、⑦住宅改造補助(1件当たり2,557ユーロ以内)がある。
また、認知症等により日常生活能力が相当制限される者に対しては、要介護認定の有無にかかわらず、⑧世話手当(月額200ユーロ以内)が支給される。
在宅介護を受ける者については、①の現物給付と②の現金給付とを組み合わせて受給することも可能となっている(支給限度額や現金支給額は、利用する割合に応じて按分。)。
完全施設介護については、在宅での生活が困難な場合に行われ、MDKがその必要性を審査することとされている(要介護Ⅲの場合は、特段の審査は要しない。)。
また、ホテルコスト、食費等は自己負担であり、介護金庫が支払う費用は入所費用全体の75%を超えないこととされている。


【イギリス】

従来、老人ホーム等への入所費用負担については原則自己負担とされている。自治体が補助する場合も資産審査の資産要件が厳しいため、持ち家の処分を余儀なくするものとしてその見直しが求められ、1999年3月には高齢者介護問題王立委員会から対人福祉サービスの一律無料化が提言されていた。
一般に、イギリスでは介護施設(Nursing Home)の料金は、滞在費、個人ケア費用、看護費用に分類されている。このうち、看護師による看護費用は、在宅の場合はNHSサービスの一環として無料で提供されるのに対し、介護施設では他のコストと同様に原則自己負担
とされており、この不均衡を是正するため2003年4月からNHSが施設での看護費用を負担することとなり、要介護度に応じNHSから週当たり40~129ポンドが施設に支払われることとなった。
また、近年では、老人への差別意識(エイジズム)の問題とも相まって、高齢者ケアの質の低さを問題視する論調が増えているが、本格的な政策対応は未だ見られないところである。さらに、認知症の問題も急速に注目を集め始めており、そのケアの在り方が現時点では質量ともに不十分との認識が高まっている。


【科学研究費による専門的研究の例:武田 宏代表による】

その1

その2

専門家のチームにより、年月と費用をかけて行われた研究の報告書が無料で全文ダウンロードできます。

                      《3510字》
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第3627号 ドイツの介護保険... | トップ | 第3629号 議論の仕方(フィ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

地球→ドイツブログ」カテゴリの最新記事