介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

新しいブログにリンクしています。7つのテーマにわけました。引き続きお読みください。

第3295号 平和と福祉:ヨーロッパの「代替勤務」「市民服役」

2009-11-11 06:21:07 | 政治社会
【きっかけ】
11月9日の記事で、どりーむさんからコメントいただいたこと。

遠くは、まだベルリンの壁があった1979年、もう30年になりますね。
当時の西ドイツに赴任して、外交官としての仕事を3年間やったことに遡ります。

出身が厚生省(当時)ということで、日本からの福祉関係の視察のセットや随行も日常的に行いました。そのときに、福祉施設で若い一団をみかけることがあったのです。

それが、ヨーロッパでは多くの国にあるという「兵役には行かない代わりに公共的な仕事につく」仕組みで福祉関係の仕事に就く、という制度を知ったきっかけでした。

【その趣旨は】
日本人にこの制度を説明することが難しいのは、
1 日本には憲法9条があって、憲法的には軍隊はない。ヨーロッパには軍隊は重要な社会組織である。
2 ヨーロッパには、キリスト教が社会生活で大きな役割を果たしいます。キリスト教の中には「神によって武器を持つことを禁じられている」人がいます。
3 ここから、「宗教上の理由で他の人が軍隊に行く義務を免除する。その分野は、環境保護や社会福祉という公共性の高いものに限る」という制度が生まれてきた。
4 ドイツの場合で言うと、その「代替勤務」「市民服役」の期間は、兵役と同様で、給与も軍隊と同等、訓練期間は、福祉政策を管轄する役所の下で、介護訓練などを受けます。

【社会的効果】
1 兵役の義務は、国家社会のために場合によっては命もなげださなくてはならない・・というレベルの公共性の高いものと、ヨーロッパでは受けとめられている。これと同等に高い公共性のあるものとして社会福祉も選ばれている。
2 兵役を逃れた(審査が行われる)若者が、一時期、介護業務などを行うことによってはじめて福祉の世界に触れ、以後の職業選択にも影響し、最低限、社会福祉を理解する市民を増やす効果がある。

*施設見学だけではなく、例えば、ドイツで知り合った家庭の息子さんがその「代替勤務」に参加し、そのことがやがて福祉の道を選んだ遠因となった、といった話を見聞します。

【ドイツでの現在の問題】
冷戦の緊張が緩和し、ベルリンの壁が崩壊し、EUが発展して、かっての敵国だったフランスとドイツが同盟関係にある。そこで、さいわいなことに兵役期間が短縮されてきた。ドイツの社会福祉界では、その場合における「代替勤務」のあり方、それに変わるシステムなどの議論がされている最中です。

【このブログで】
第1930号 2008.12.03 代替勤務について
第2160号 2009.01.26 所管大臣(家庭省)
2007.10.23 災害救助平和船団構想・・教室で話したりしました。

【坂之上介護福祉研究会ブログで・・ドイツ語資料】
P 2254 2009.11.08 代替勤務の従事期間の短縮
P 2175 2009.11.02 代替勤務の将来像に関する報告書
P 0088 2009.06.03 連邦市民服役庁BAZ 


*写真は、加計呂麻島マラソン。奄美・加計呂麻島なんでもありBLOG 2009.11.08付けの記事からお借りしています。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第3294号 今朝の朝刊から | トップ | 第3296号 「つなぐ」方法と... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
柔軟な思考と制度 (岩清水)
2009-11-11 13:00:21
興味深く読ませていただきました。
柔軟に考え、選択肢を多くすることで社会を
円滑にする。
学びたい姿勢です。
日本も「寛容で柔軟な社会」を目指さなければ
なりませんね。
動機はいろいろ (どりーむ)
2009-11-12 00:43:15
bonn1979先生。記事をありがとうございます。

私自身は無宗教なので、つい、うっかりしがちですが、
諸外国の歴史や文化を知るとき、
その国の宗教との関わりを考えることが
必要なのですね。

私自身、現在の道に進むとき、
最初から、看護の仕事に就きたいと思っていたわけでもなく、
ケアマネ資格も、時代の流れで取得しただけ
という、
不心得ものです。

動機は人それぞれ。
動機はどうあれ、そのあと、どう行動するか、ですね。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

政治社会」カテゴリの最新記事