小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

真樹日佐夫による梶原一騎論

2016-12-30 06:59:51 | 考察文
真樹日佐夫による梶原一騎論。

真樹日佐夫は梶原一騎の弟である。

二人とも、作家であり、空手家である。

最近、You-Tube で、真樹日佐夫が、梶原一騎の精神を語ったのが、出てきた。

真樹日佐夫によると。

「物書きなんて、みんな、無い物ねだり。であり、梶原一騎は、大人にならなかった。梶原一騎の漫画の主人公は、3割は、梶原一騎、自身だが、7割は、彼ではない」

と言っている。

これは、その通りだと思う。

たとえば。

僕は、恋愛小説を、(作品の巧拙は別にして)、書ける。

書きたい、という欲求が、強い。

それは、僕が、女とつきあえない、からである。

でも、つきあいたいからである。

ハンサムで、何人もの、女と、つきあっている、ような男には、恋愛小説など、絶対、書けないと思う。

恋愛に対して不感症になってしまっているからだ。

女と、つきあいたいが、つきあえない男は、恋愛に対する、欲求のボルテージが、すさまじいから、恋愛小説が、書けるのだ。



梶原一騎は、「根性」、があって、スポーツが好きで、柔道や空手が、出来た。

しかし、梶原一騎は、太っていて、また、酒好き、女好き、で、生活は、乱れていた。

なので、空手にしても、柔道にしても、そう強くはなかった。

しかし、彼は、「強さ」、に、憧れつづけた。

だから、優れた、スポーツ漫画を書けたのだ。

梶原一騎の漫画の主人公は、みな、体が小さい。

「巨人の星」の「星飛雄馬」にしても、体の小ささが、致命傷だったし、「柔道一直線」の「一条直也」にしても、「柔よく剛を制す」が、テーマだった。

小さい者が、「根性」、と、「執念」、で、大きい者に勝っていく、ところに、梶原一騎の、漫画の、面白さ、迫力、がある。

その、憧れ、が、梶原一騎の、漫画の、面白さ、迫力である。



一方、真樹日佐夫は、ハンサムで、畳を手刀で、ブチ抜けるほど、空手の達人だった。

しかし、真樹日佐夫の、漫画は、(失礼だが)、理屈っぽくて、面白くない。

自分が、強い人間には、強い人間に対する、エネルギッシュな、憧れ、が、ないから、迫力のある、漫画を書こうという、欲求も、起こりにくいのだ。

かく言う僕も、空手小説を書く気にはなれない。

なぜなら、僕は、空手が出来るからだ。

だから、空手に対する、憧れ、や、夢、が無いからだ。

しかし、僕は、野球小説を書きたいと思っている。

それは、僕は、野球が出来ないからだ。



しかし、僕は、こうも考える。

自分に、たとえ無くても、その理想を求め続けた人間は、その理想を持っている。とも。言えるとも思う。

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