盗まれた月

新月に偵察機に乗る


北の軍隊　広場で一糸乱れぬ行進


月　作戦に呑み込まれても　我に希望

三日月

曇天に各自の太陽　腹の中


新兵は三日月に鍛えられる


彼は愛だろう　この昼この夜に

文学ゲリラ

脊髄　　弾倉に充填の意味


念のため　意味を武装する


情報　ゲリラ戦　読書勝負

雑詠

雷鳴が声うしなうほど合一し


翼なんぞ削ぎ落とし作業する


銀河のカケラを食べてみる

夜長

今の今まで詩の神がいたのに


夜長に蛍光灯が書を照らす


夜景が女の人の洗い髪のようだ

晴天に恵まれて

晴天に支えられた計画がある


秋の涼しさを楽しめた自分


常緑樹　枯野はテカテカ燃えている

雑詠

昨日の続きを話したそうな風だ


グラスの冷水　　飲むエロティシズム


コスモスの蝶々追って来る日射し

雄鶏博士

魔や天の血統濃くなるこの夕べ


良書悪書あってそれでも地球は回っている


意味の子を産む子宮脳髄の良好


パソコンの扉・家の扉には鍵かける


意味の扉の前に立つ私兵


良くさえずる小鳥になりたい


スフィンクスの眼が充血している


雄鶏博士の夢は核廃絶

銀河５句

その路地ふと折れると銀河


上向いて銀河の下で眠る


銀河三丁目十一の四　我が家あり


目瞑れば銀河の中で暮らしていて


銀河の土地を踏みしめている


レモン絞って立っている

雑詠８句

広葉樹に秋陽　輝き濡れている


世　離れて　遠くから持って帰る


空想に空想　重ねる秋日和


富士山の裾　色めき撫で肩だ


富士おんな山なれば火口に欲情す


己の運命　切り開く　さだめ


日々　死にゆく準備している読書す


海牛は全身　絞り出し息してる

松の幹

眼球　取り出して陽に当てたし


日暮れてブルース流れている　部屋


松の幹　たなびく白い布の主張

内向の果て

目を瞑れば世界　　あれが地球


心像を凝視して　風景が見える


内向するベクトルが外界を貫く

仏霊

小鳥たち華やぐ喫茶　食器わらう


万事整えながら仏霊降り来るをじっと待つ


魂は餓えて水物ばかり欲しがる我

悪魔天使

書物に手を伸ばす　善行


坐したままのAV行為が業となり


昏い体に妙法は良薬


悪魔・天使　流動して　築く

青い焦燥

ランボー読めば青い焦燥


空気との接触　半裸の肌


風のない日向にブンブン現れ