かねてよりわれわれが主張しているように、中国の景気動向は「中国版公定歩合」(銀行の預金・貸出金利)を見れば一目瞭然である。景気が良ければ公定歩合は上がるし、悪ければ下がる。これ以上、信頼に足る明確な数字はあるまい。さすがの中国共産党もごまかしがきかないからである。
今年6月28日、中国当局が1~5年モノ貸付金利を5.25%に下げた時点で、1990年来、最低となった。同8月26日、習近平政権はさらに金利を0.25%引き下げて、貸出金利を5.00%とした。
一般に、GDPと金利は密接に関係する。GDPがグングン伸長すれば、当局は景気の過熱を恐れて、金利を上げるだろう。反対に、GDPが下降すれば、当局は景気の後退を恐れて金利を下げるに違いない。ただ、GDPは、金利の上げ下げから少し遅れて動くと考えられる。
1990年から2015年8月まで、中国のGDPも1~3年(昨年11月以降は1~5年)モノ貸出金利とある程度連動するはずである(ここでは預金金利を捨象し、貸付金利に限定する)。
まず、図表〔Ⅰ〕だが、1990年と翌91年に関しては通年のGDPである(それ以降は、その年の4半期のGDPデータ)。したがって、90年はGDPと貸出金利の動向はほとんど一致しない。だが、93年5月から98年7月までは、大体、両者は絡み合いながら動いている。
次に、図表〔Ⅱ〕になると、1999年6月以降2007年9月まで、GDPと貸出金利の差が乖離するばかりである。特に、注目すべきは、貸出金利が6%を切った99年6月から、再び6%を超える06年の4月までの7年間弱、明らかに景気が後退していたに違いない。それにもかかわらず、その間、GDPが8.1%、8.7%、10.1%と伸長した。面妖である。
さらに、図表〔Ⅲ〕では、2008年「リーマン・ショック」後の11月、また貸出金利が6%を切った。そして、11年2月再び6%超える2年2ヵ月あまり、GDPが9.6%、9.6%、10.6%、10.6%と緩やかだが伸びている。これも摩訶不思議である。
しかし、ようやく2012年6月から、GDPと貸出金利の連動性が見られるようになった。
つまり、1999年6月以来、2012年6月までの13年間、中国のGDPは水増しされている公算が大きい。かりに、中国共産党が毎年GDPに5%前後下駄をはかせたとすれば、現在、公表されているGDPが、日本の2倍ほどになるかどうか大いに疑問である。