見出し画像

岸本晃の住民プロデューサーNEWS

11PM裏話。テレビの+-。

 北京の夜は明るくなった。今夜も電気がピカピカの屋台がずらりと並ぶ中を通った(写真)。日本とはまだ比較にならないと思うが、それにしても夜の明度は相当上がった。山江村のように夜にあまり電気ピカピカのところがないと星が見えたりホタルが飛んで環境は最高なんだが・・・。
 11PMの水俣生活学校の取材で自分自身が深く考えさせられたことがある。ある夜、水俣病の患者さんの裁判支援の話になったときだったと思う。裁判の相手のひとつは原因企業でもあり、企業城下町を支えたチッソ水俣だった。そこで東京の学生さんなどは声高に企業の論理を批判したり、自分たちこそが患者さんを支えているような正義感あふれる話をしている。「問題はチッソだ!」、という議論は我々の報道の現場でもよくあった理屈だ。記者という職業をしている間は正義の味方で、日曜日に家族でスーパーに買い物に出かけている間は、普通の市民になる。どちらも悪い側にはいない。悪いのはチッソだ・・・。これは私自身のことだった。自分の立場を切り替えつつ、いつも安全で正しいほうにいる?!。
 その夜、校番(塾長)が非常にショッキングな話をした。特に若い塾生たちを中心に話していた内容はこうだ。「君たちはチッソが悪い。と言い切るが実は我々がこんな夜中にこうして勉強ができるのはチッソのおかげでもあるんだ。この電灯のコードの○○%はチッソが作っている。先ほどからビデオを見ながら話しているが実はこのテレビのここの部品の○○%のシェアはチッソ水俣が占めている。つまり、我々はチッソのことを批判しているが、同時にチッソのおかげでこうやって勉強できる。我々がここ水俣生活学校で学ぶべきことはこういうことなんだ。患者さんもご家族にはチッソの社員の方がいっぱいおられた。当初はなかなか家族の病についても言い出せなかった人はいっぱいいる。その中で○○さんは最初から一貫してこうやって戦っている。しかし、それだってチッソの全員と戦っているのではなく、自分自身の中にある「チッソ的なもの」と戦っているんだ。・・・。」15年以上前のことだから正確ではないが、大体こういう意味の話だった。学生たちはキョトンとしていた。という以上に私は自分が水俣に来た理由をこの言葉で悟った。まさにこのことを自分自身の中に感じていたのだ。だからニュース企画でもなくドキュメンタリーでもなかった。11PMなのだ。日頃、Hなことばかり考えている番組でこの大問題を考えるほうが、身幅にあった考え方ができるのではないか?自分たち庶民は正義、チッソは悪という勧善懲悪に走らないでもっと地に足をつけた考えが出てくるのではないか?と正直思っていた。その気持ちが校番のことばで表され、目から鱗だった。
 この話は何も難しい公害問題ではなくてもいつもテレビ局の中で感じていたことだ。ニュースを作る報道とお金を稼いでくる営業はどこの放送局でも仲が悪い。今はかなり営業が強いと思うが、当時はまだまだ報道の力が強い時代の最後であった。ある日報道にいた仲間が営業に異動になった。それまで、営業がいかに報道のことに無知で、報道のあり方を理解してないと主張していた人が、1ヶ月もせぬうちに報道の無理解を訴えだした。ついこの前のことはすっかり忘れてしまったかのように、今度は営業の立場で大変身だった。こういう人が多かった。立場が変わるとがらりと言うことが変わる。私にはどうしてもこれが理解できなかった。さらに驚いたのが、この人がまた報道に帰ってきたときのこと。今度は立派な報道人だ??!。参った。本当に参った。この構図はよく見てみるとテレビ局だけではなくあらゆる組織にあった。たまたま水俣という悲惨な公害にあった地域に行って、水俣病の患者さんや、甘いとはいえ東京や大阪からこの水俣に飛び込んできた学生たち(は偉い)。この人たちから突きつけられた問題は取材中ずっと気になっていた。そしてこの夜を迎えたのだ。
 住民ディレクターは当事者が自ら発信し・・・、といい、プロの記者さんと違うのは、自分がその問題の当事者か、当事者たるをすすんで選ぶ人が主体となってやる活動だ。そこから生まれる暮らしの情報だからこそ、一過性ではなく、明日につながる提案になっていく。ここを外すと他人事になってしまい、地域づくりにはつながらない。よく市民メディアに関係する方々が地域の話題や課題、問題を「ネタ」とプロの記者と同じように言う人がいるが、これは自分がネタにされることを想定外にしている。他人をネタにするというのはどう考えてもよろしくない。かくいう私もテレビ局ではそういうことをそういう風に習ってしまったので、昔は「ネタ」探しをしていた。今はプロであろうがアマであろうが知り合いであろうが「ネタ」という言い方を聞くと不快感がある。「ネタ」という捉え方には「自分」がいない。眺めている自分はいる。
 これはやめようよ。ということから住民ディレクターは生まれた。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Weblog」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
人気記事