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岸本晃の住民プロデューサーNEWS

自分自身を映像で「彫刻」する番組

 最近編集をする機会が増えてきた。ひとつには衛星放送の番組制作の実戦講座をやっていることがある。住民ディレクターは番組はオマケなので、プロセスを大事にする。だから普段はそれぞれのペースでじっくり編集するのが一番だ。しかし、全国には企画力や取材力がついてきた人たちが増えている。こういう人たちのために企画したのが実戦講座だ。一番に始めたのが東京・杉並区で何度かリポートしたように講座は無事に終え、すでにe2byスカパーの衛星で放送中だ。10人の方が熱心に取り組まれたので結局、15分番組を2本作ってしまった。さらに3人の方は番外編で山江村の人たちの番組にコーナーとして出てもらう。
 杉並区の受講生の皆さんから次々とメールをいただいている。このNewsはそのみなさんへの返事でもあるが、全員見事にひとつの壁を突破された。映像編集というのは間単にいうと鉛筆で文字を書くように映像で文字を書くようなものだ。ただ映像には文字も入るが、「動く画面」、その場面の「音」がある。この音は時には誰かの話す声だったり、虫の音、風の音、自動車の騒音だったりする。文字に比べるとはるかに多くの情報が瞬間に詰まっている。しかし逆にそれだけ詰まっているだけに、想像する余地が無く、ほぼその映像でイメージが作られていく。たとえば「一反の田んぼ」というのは文字で見ると恐らく都会の人には(今は田舎でも同じか?)想像もつかないだろう。300坪=約992平方メートル・・・と聞いてもまだわからない人もいるだろう。わかってもイメージできるだろうか?映像なら実際の1反の田んぼを映し、人が立ってくれれば大体の感じはつかめる。便利な道具だ。この道具は「都市の人に農業を知らせる」などわかりにくいことを伝えるにはとっても便利な道具だ。しかし、それには都市の人がいかに農業のことに疎いかを伝える人がわかってないと大きな間違いをする。逆に都市の人が地下鉄の乗り方を田舎の人に伝えるのも同じくだ。このことは都市だ田舎だということだけではなく、男と女、大人とこども、もっと細かく見ていくと一人一人の性格や育った環境、哲学・・・、などと全く違う。
 そんなことはなんとなくわかっちゃいる気でいるけれど、映像で編集してみるといかに他者(ひと)が自分と違うかが本当によくわかる。映像を撮った人はすでにその現場を知っているからわずか1分の映像を見るだけで取材に行った1日のことがすべて蘇ってくる。しかし、初めてその映像に触れる人はその1分だけの情報しかない。さらに長方形に切られた画面に見える情報だけだ。撮ってきたほうは画面の外側も実際は見えている状態で見ている。こういう話は経験者ではないとわかリにくい話だ。だから住民ディレクターはこういう理屈を言う前に、「押せば映る」まずは撮ってみよう、となる。またそれなりに長い時間をかけて編集したものを皆に見てもらったときの孤独感は一回は経験してみるといい。最初はいいが、だんだんとみんなの反応が鈍くなり、そのうちにあくびが出てくる。これは自分がわかっていることをきちんと伝えていけてないからだ。
 杉並の皆さんからいただいたメールをみると作品になった喜びに加え、この辺の映像感覚が少しわかってきたのだろうと思う。しかも自分が結局言いたいことはなんだったかが、作品ができてやっとわかったという逆説的なわかり方を体験されたと思う。彫刻を作ったようなものだ。彫り始めるとどうなるのかわからないが、だんだんカタチが見えてきて、出来上がったら「そうか、こうだったのか!」という感じ。最初から決まっているものを彫るほど面白くないものは無い。わからないからこそ彫っていってカタチになって新たな発見をする。しかもその発見は自分の身体の奥深くに隠れていた自分自身のある何かだ。
 素人がビデオや映像を撮ったり編集するというと、ついつい観光紹介や神社仏閣、イベント情報というような感じをもたれるがその情報のなかに「自分がいる」ことが大事だ。そういう意味ではすべて自己表現だ。しかし自分が出るというのは関西漫才のようにがんがん喋りまくるというのではない。確かにその人の体温を感じる、人肌感覚が伝わる感覚だ。今回の杉並区の番組は皆さんの体温が心地よく伝わってくるとても安らぐ番組ばかりだった。(写真は杉並のみなさん)

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