クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

耕一物語ー港町ブルース

2014-08-14 20:16:20 | 日記

暗闇の中で愛友丸は岸壁を離れ、そして島影に静かに停泊した。

 

荷物を積み込んだ船倉の入り口には鍵が掛けられていた。

耕一はその夜から、船倉入り口に近い通路に毛布を敷いて寝ることになった。

船倉に積み込まれた荷物は余程大事な物に違いない。

しかし、それにしても、闇夜に人目を避けるように行われたこの積み込み作業はどうしたことか・・・・

16歳の少年でも、そのことの意味はうすうす分かる。

かなりヤバイ仕事に違いないということが・・・・。

 

暗闇の甲板で、耕一がそんなことを考えていると、機関長の声がした。

「おい、耕一、これから陸(おか)に上がるぞ。みんなで晩飯を食べるんだ。

おまえも腹が減っただろう。今夜はうまいもんをタラフク食わせてやるぞ」

機関長はシャワーを浴びた後らしく、石鹸の爽やかな匂いがした。

頭からはポマードの甘い匂いがする。

他の船員達も同様にかなりめかしこんでいた。

足元を見ると、みんなピカピカの革靴を履いている。

それまでの汗臭い男達ではなかった。

耕一がまだ知らない夜の世界の男の顔だった。

「おい、耕一、おまえはこの服を着ていけ。陸に上がるのにその格好じゃ女が寄ってこないぞ。ワハハハーーーー」

機関長は上機嫌にそう言うと、小奇麗なジャケットとズボンが入った紙袋を耕一に差し出した。

 

ライトを点けたモーターボートが船に近づいてきて、船側に横付けになった。

若い船員が縄ばしごをスルスルと下すと、機関長を先頭に、船員達は慣れた身のこなしで縄ばしごを降りて行く。

 

 ♪ 流す涙で 割る酒は
  だました男の 味がする
  あなたの影を ひきずりながら
  港 宮古 釜石 気仙沼

 森進一が歌う港町ブルースに、気仙沼が登場する。

 昔から港町気仙沼は、海の男達にとって船旅の疲れを癒す憩いの場所であった。

 

 続く・・・・・・

 

 

コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
一言 (T.K)
2014-08-15 07:56:32
いいですね。
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懐かしい言葉 (夏雪草)
2014-08-16 07:55:03
おはようございます。
途中のポマードという言葉に、
昭和を感じてしまいました(笑)

次はどうなるのでしょうね。
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コメントありがとうございます (里山のクロ)
2014-08-16 08:21:39
T・Kさん

T・Kさんからの一言がいつ入るかと心待ちにしていました。
これでやっと一次試験をパスしたような気分です。
有難うございました。


夏雪草さん

拙者もポマードという文字を書きながら、「最近はほとんど聞かなくなった言葉だな・・・・」と思ったところでした。
昔のことを思い出しながら書いています。
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た言葉だ (Rolex Replica)
2014-09-23 18:31:48
機関長を先頭に荷物は余程大事な物に違いない
返信する

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