クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

耕一物語ーポーカーフェースの市長

2014-10-04 21:20:37 | 物語

数人の若衆が、渋川組と書かれた提灯を持ち、上ってくる車に向かって坂を小走りに下りて行った。

上って来る車は小型トラックだった。荷台にはホロがかけられている。

車の前まで来た若衆の一人が、提灯をかざして叫んだ。

「おい、車を止めろ!」

 

 

車を止めた男が、窓から顔を出して云った。

「どうもどうも、お疲れ様でございます」

「なんだ、魚政のオヤジじゃねえか。今頃、なんでこんなところをウロウロしとるんじゃ」

「ヘィ、番頭さんから連絡がありまして、仕出しを直ぐ持って来いって云われまして・・・」

「なんだ、そうだったのか・・・。ところで、オマエんところはいつこの車を買ったんだい」

「お陰様で、つい先日・・・」

「念のため、後ろを見させてもらうぜ」

荷台には、仕出し料理を入れた木箱が積まれているだけだった。

「よし、分かった。行っていいぞ」

魚政の中古ポンコツトラックは、坂をヨロヨロと上がって行った。

 

夜が更(ふ)けてきた。

次第に鉄火場が熱気を帯びてくる。

「クソー、バカたれ! また外れか!」

「よーし、もう一丁来い!」

負けが込んできた客人の、うめき声が聞こえる。

 

 

市長はタバコをふかしながら、ポーカーフェースで札を張っていた。

その市長のところへ、代貸が寄ってきて耳打ちした。

 「市長、少しお休みしませんか。奥で親分がお食事を差し上げたいと申しております」

市長はタバコを灰皿に置くと、「分かった」と云って立ち上がり、代貸と共に廊下を歩いて奥へ消えた。

近くで札を張っていた古参の市議が、ジッとその後姿を見つめていた。

 

 

続く・・・・・・。 


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2 コメント

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怪しい・・・ (夏雪草)
2014-10-05 11:11:41
こんにちは。

疑うって、良くないと思うのですが、
つい、怪しいって思ってしまいます^^;

トラックの様子も、
「古参の市議が、ジッとその後姿を見つめていた。」

という最後の様子も・・・
絶対何かありますよぉ。


台風が関東の方へ進路をとっているみたいですね。
かなり強い様子ですが、
里山は大丈夫でしょうか?
どうか、万全の態勢を・・・

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怪しいかな (里山のクロ)
2014-10-05 15:45:57
夏雪草さん

こんにちは!
怪しいですか?
やっぱり怪しいですよね。
これから、屋敷の奥でどんな企てがあるのかな・・・・。


今回の台風は房総半島を直撃しそうですね。
里山は昨夜から雨が降り続いています。
これから戸締りなど、しっかりしておきたいと思います。

明日はそちらも通過しそうですが、会社は休業になるんでしょうか?
十分お気を付け下さい。

今日も有難うございました。


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