クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

耕一物語ー荒海を行く

2014-09-14 14:34:25 | 物語

年が明けた。

愛友丸の新年初めての航海は、また北へ行くようだ。

正月七草が過ぎると愛友丸は出航の準備を始めた。

しかし機関長松さんの表情は冴えない。

去年の暮れ、横浜港で闇物資を運ぶ貨物船が摘発されたのだ。

港の検査が最近厳しくなってきている。

そんなこともあり、今回は三浦半島の追浜(おっぱま)沖で闇物資を積み込んだ。

追浜は地元の顔役のニラミが利いており、官憲の動きはほぼ事前にキャッチできる。

ここなら挙げられることはないと思うが、しかし万が一ということもある。

十分注意しなくてはならない。

暗闇の中で、機関長はそんな思いで積荷を終えた愛友丸を見つめていた。

 

 

日の出と共に愛友丸は追浜沖を離れた。

一月の海は荒れていた。

外洋に出ると、波のうねりが大きくなった。

「この分では函館に着くのは一週間後だな・・・・」

操舵室で、船長が舵を握りながら呟いた。

「そうですね。今回もそのくらいは覚悟しておいた方がいいでしょうね。ところで船長、今度函館で積む船荷はどこで降ろします?」

船長の横にいた機関長が尋ねた。

「生麦の予定だったんだが、あそこは最近チェックがやけに厳しくなってきているようだな・・・・。追浜はまだ大丈夫なようだから、今回はあそこにしようか」

「そうですね。函館へ着いたら、追浜の顔役に連絡を入れておきましょう」

愛友丸は、犬吠埼沖を北へ進んでいた。

曇天の冬空の下、波は次第にうねりを高めている。

右に左に船体を揺らしながら、ノロノロと闇船は北へ進んでいた。

 

 

 

続く・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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2 コメント

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すっかり秋 (夏雪草)
2014-09-14 21:21:37
こんばんは。
ブログの背景が秋ですね~。
とても良い感じです。

彼岸花、そろそろかなぁ・・・。

耕一さんたち、ホッとする間もないですね。
あの頃は、現地の様子を知るにも大変だったでしょうね。
今見たいに、携帯電話もなかったわけですし・・・

そう考えると、今って本当に便利ですね。
便利さで失ったものもあるようですが・・・。

新たな航海、楽しみです。
返信する
おはようございます (里山のクロ)
2014-09-15 06:15:11
ブログの背景、お褒めいただき有難うございます。
里山の雰囲気のあるものを選んでみました。

昨夜、クリスマスに関係しそうなブログ(2013年)をチェックしてみたのですが、それらしきものは見つかりませんでした。今日はそれ以前のもので探してみたいと思います。

なんだか、宝探しのようで楽しいですね。

いつも、ありがとうございます。
返信する

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