その日以来、耕一のネグラは夏子の家になった。
海の男の耕一には、それまで定宿がなかったのだ。
主婦経験のある夏子の作る家庭料理は美味しく、そこには耕一が求める温かい家庭の雰囲気があった。
夕食を食べながら、人生経験を積んだ年上の夏子と世間話をしていると、耕一の心はなぜか安らいだ。
夏子と出会ってから数日後、耕一はいつものように彼女の家で夕食を取っていた。
娘の恵(めぐみ)も耕一になつき、耕一から時々おかずを食べさせてもらいながら、はしゃいでご飯を食べていた。
その時、勝手口がガラガラと開く音がした。
「あら! 父さんかしら。 あんた、大変、そこから早く逃げて!」
耕一はお膳に慌てて箸を置くと、居間の窓を開け、身を翻して暗闇へ消えた。
夏子は急いで耕一のお膳を片付け、流しに立って何食わぬ顔で食器を洗い始めた。
「おい、夏子! ここに男が来ていただろう!」
血相を変えた父が木刀を持って入って来た。
恵みがそれを見て、驚いて泣き始めた。
「あら、お父さん、どうしたのよ、そんな怖い顔をして・・・。誰も来なかったわよ」
「ウソをつけ! 最近、若い男がお前のところに入り浸っているって噂だぞ!」
「ウソなんかついてません。誰も来てません」
「噂じゃ、あの機関長らしいじゃないか。あいつは遊び人で評判の男だ。横浜じゃヤクザの組にも入っていたって話だぞ。そんな男と付き合っていたら碌なことが無いぞ!」
「大丈夫よ。私だってもうウブな女じゃないんだから。悪い男に騙されたりはしないわ」
「野良猫のように、コソコソと他人(ひと)の家に出入りする奴は、これで叩き出してやるからな。今度来たらそう言っておけ!」
夏子の父は剣道の有段者だった。
戦時中は、陸軍の教練所で兵隊に剣道を教えていた男だ。
彼が木刀で打ち込んできたら、腕の一本など簡単にへし折られるであろう。
いや、急所を狙って本気で打ち込んできたら、命にも及びかねない。
父が住む屋敷は、夏子が住む家の裏手にあった。県道から30m程奥に入った所だが同じ敷地内である。
何か変な気配がしたら、いつでも飛んで来れるのだ。
娘のことが心配な父親は、夜になるといつも木刀をそばにおいて、過ごすことになった。
続く・・・・・。
案じたとおり、その日から二人はできちゃったんですね。さすがで戻り。口もうまいですね。
なんとかごまかせたようですが、世の中、そうは問屋がおろしませんよ。
いいじゃあないですか、出戻りを相手にしてくれる機関長。私なら許しますよ。子どもまでなついているんだったら・・・そうなればめでたしで終わってしまう、クロさんがそんな簡単なことをするはずがない。期待しましょう。
耕一君は、これからは呑気に逢瀬を楽しむわけには行かなくなりましたね・・・。
木刀オヤジの急襲対策を考えないといけないのですが、どうするつもりなんでしょうかね・・・・。
ハラハラドキドキしますね。
娘のこととなると、
どこの家でも父親は厳しくなりますね。
可愛くて仕方ないのですね・・・。
耕一さん、どうするのかしら?
本当の男らしさが試される時なのかなぁ?
そうですよね。父親はどうしても色々と心配して、厳しくなりますよね。
耕一君、どうするんでしょうかね・・・・。
本当の男らしさか・・・・・。
なかなか厳しいところを突いてきましたね・・・。
タジタジ・・・・(汗)。