ユングとスピリチュアル

ユング心理学について。

ユング「心理学と宗教」を読む(第9回)

2022-06-01 14:26:52 | スピリチュアル・精神世界

ユング「心理学と宗教」を読む(第9回)
< zoom配信 >

 「ユング『心理学と宗教』を読む」シリーズの第9回です。
 「心理学と宗教」は、ユングが1937年にアメリカ・イェール大学での「テリー講義」として行なった全3回の英語講演の記録です。ユングの宗教観が伺えるだけでなく、ユングの後期研究についての概観としても読むことができるテキストです。


 5月12日のスタディでは、全集パラグラフ92-107(邦訳書p.56-65)を読み進めました。

 ユングはまず、四元性、ならびにこれを含む円や球が、歴史的に見ても「神」を意味する表象であったことを、多岐にわたる様々な資料を通して示していきます。四は一者の部分・質・側面を表す古くからの象徴であり、四元性は創造において顕現する神の直接的な表象です。さらには両性具有のイメージも、神性を表すものとして共に用いられてきました。これらのモチーフは、あらゆる場所、あらゆる時代に見られる神性の元型的イメージです。この元型の経験にはヌーメン的性格があり、宗教経験のひとつとして位置づけられます。

 ユングはこうした歴史的な考察を経た上で、近代人は夢の中に現れてきた円や四の象徴をどのように受け取っているのかという問題を挙げ、「彼らはそれを、自分自身の何かを表していると経験する」と指摘します。これは「内なる神」であって、神と人間が本質的に同一であることを示しています。新たな自分のあり方を生み出す創造性は、自分という人間の内にこそある、と感じるのが近代人なのでしょう。

 続けてユングは、キリスト教の中心的なシンボリズムである「三位一体」について述べていきます。三位一体は、父(神)、子(キリスト)、聖霊の三つが「一つの実体における三つの位格(ペルソナ)」である、それぞれが自立した存在でありながら同時に一つの実体でもある、というキリスト教の基本的な教義の一つです。
 ユングはこの教義の心理的側面に目を向けます。キリスト教の三位一体はどれも精神的かつ男性的な要素から成り立っており、ここからは第四の要素としての、「悪」もしくは「肉体性・女性性」が排除されています。この排除こそが、キリスト教に内在している特殊な道徳的・心的態度だとされます。
 ユングによれば、人間の心の自然な定式は「四」です。夢に現れてくる無意識の心は、三位一体を自然の傾向によって四元性に変容させて表現します。四元性は排除された要素を補うものであり、心の統一性を意味するのです。

 ※ 前回までのこのシリーズの内容については、こちらで報告をしています。
  https://jung2012.jimdofree.com/スタディ/2021-2022年-通期-ユング-心理学と宗教-を読む/


 次回のユングスタディでは、全集パラグラフ108-127(邦訳書p.65-73)を読み進めます。ユングの全三回の講義のうち、最後の講義に入ることになります。

 ここではパウリの「宇宙時計の夢」が取り上げられます。ユングはこの夢について、様々な著作や講演で繰り返し言及しています。これまでに出てきた断片的な象徴から、意味ある全体を作ろうという試みとされるこの夢は、「もっとも崇高な調和」をパウリに感じさせることで、治療過程に一区切りをつけるものとなりました。「宇宙時計の夢」は、ユングを原書で読んでいた晩年の三島由紀夫にも影響を与えたとする話もあるほど、たいへん印象深いイメージです。


 今回もzoomオンラインのみでの開催となります。開始時間は、会場開催の場合よりも一時間遅い20時からとなりますので、ご注意ください。

 ※ 前回に引き続き、案内役をお願いしております岩田明子さんが、都合のためお休みとなります。 
 
       案内役:白田信重(ユング心理学研究会)
       司会進行:海野裕美子(同) 資料協力:山口正男(同)
 
 
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    第9回:6月2日(木)20:00 〜 22:00 (開場19:45)
 
 
  ■ テキスト: C.G.ユング「心理学と宗教」
      村本詔司訳『心理学と宗教』人文書院、1989.4 所収            
   ・ 適宜、英語原文、ドイツ語訳文も参照します。
   ・ テキストを読んでいない方でも、資料を見ながらの進行なので参加可能です。
   ・ シリーズ途中からでの参加でも全く問題ありません。お気軽にご参加ください。
 
 
  ■ 会場:オンライン開催(zoomミーティングルーム形式)
  ■ 会費:1,000円

   ・当会では、お申し込みいただいた後での参加者都合による返金は致しません。
   ・参加申込者には会の終了後、録画アーカイブを期間限定で配信する予定です。
    (諸事情により配信できない場合もありますので、あらかじめご了承ください)

  ■ 参加申し込みページ https://jungstudy20220602.peatix.com
 
  ■ 主催:ユング心理学研究会 http://jung2012.jimdo.com/
  ■ 問い合わせ:研究会事務局 jungtokyo_info@yahoo.co.jp

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ユング心理学研究会/ユング「心理学と宗教」を読む 5月12日【第8回】

2022-06-01 14:24:34 | スピリチュアル・精神世界

https://www.youtube.com/watch?v=FaCOI4aW9sc

https://www.facebook.com/%E3%83%A6%E3%83%B3%E3%82%B0%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A-281102485276364/

ユングスタディ報告
ユング「心理学と宗教」を読む 5月12日【第8回】
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 5月12日のスタディでは、全集パラグラフ92-107(邦訳書p.56-65)を読み進めました。
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 ユングはまず、四元性、ならびにこれを含む円や球が、歴史的に見ても「神」を意味する表象であったことを、多岐にわたる様々な資料を通して示していきます。四は一者の部分・質・側面を表す古くからの象徴であり、四元性は創造において顕現する神の直接的な表象です。さらには両性具有のイメージも、神性を表すものとして共に用いられてきました。これらのモチーフは、あらゆる場所、あらゆる時代に見られる神性の元型的イメージです。この元型の経験にはヌーメン的性格があり、宗教経験のひとつとして位置づけられます。
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 ユングはこうした歴史的な考察を経た上で、近代人は夢の中に現れてきた円や四の象徴をどのように受け取っているのかという問題を挙げ、「彼らはそれを、自分自身の何かを表していると経験する」と指摘します。これは「内なる神」であって、神と人間が本質的に同一であることを示しています。新たな自分のあり方を生み出す創造性は、自分という人間の内にこそある、と感じるのが近代人なのでしょう。
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 続けてユングは、キリスト教の中心的なシンボリズムである「三位一体」について述べていきます。三位一体は、父(神)、子(キリスト)、聖霊の三つが「一つの実体における三つの位格(ペルソナ)」である、それぞれが自立した存在でありながら同時に一つの実体でもある、というキリスト教の基本的な教義の一つです。
 ユングはこの教義の心理的側面に目を向けます。キリスト教の三位一体はどれも精神的かつ男性的な要素から成り立っており、ここからは第四の要素としての、「悪」もしくは「肉体性・女性性」が排除されています。この排除こそが、キリスト教に内在している特殊な道徳的・心的態度だとされます。
 ユングによれば、人間の心の自然な定式は「四」です。夢に現れてくる無意識の心は、三位一体を自然の傾向によって四元性に変容させて表現します。四元性は排除された要素を補うものであり、心の統一性を意味するのです。
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 今回ユングの示した歴史的資料を少し列記するならば、円積法、プラトン『ティマイオス』、宇宙魂、錬金術のプリマ・マテリア(第一質料)、エンペドクレス、偽トマス『黄金の時間』、第二のアダム、テトラクテュス、グノーシス主義、アントロポス(原人間)、テトラモルフス、新しいイェルサレム(ヨハネによる黙示録)、錬金術作業の四段階(黒化、白化、赤化、黄化)、エゼキエルの幻、マンダラ、アプレイウス『転身譜』、そして三位一体 … これらはみな、ユングの後期の著作では繰り返し言及されるモチーフです。まさにユングの後期研究についての概観という様相を感じる箇所でしょう。
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画像はテトラモルフに関わる絵です。
テトラモルフは、「四」を表すギリシア語に由来するもので、新約聖書(エゼキエル書とヨハネの黙示録)に描かれている、神の玉座の周りにいる四つの生き物のことです。人もしくは天使、獅子、牛、鷲で構成されており、それぞれが新約聖書の四福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)を表すとされてます。アントロポス(原人間)やキリストの象徴でもあります。ユングはこれを、神の創造に関わる円の四つの部分の象徴として読み解きます。
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画像のいちばん右側は、マルセイユ版タロット、大アルカナ「世界」のカードです。ここにもテトラモルフが見られますが、注目すべきは中央にあるのが、通常は排除される傾向のある女性の像であることでしょう。