【狩猟採集民族】
人類は、その全歴史の99%以上を狩猟採集民族として生活してきました。その時代を旧石器時代と言います。ちなみに農耕が開始されたのは、新石器時代からです。狩猟採集は、牧畜や農業が開始されるまでの原初的な生活様式とされています。食物は「果物」「動物」「魚」などと多様でした。栄養バランスが良かったので、成人男性の平均身長が、177.7cmと比較的高かったとされています。これと同じレベルになったのは、20世紀に入ってからです。ただし、現代人でもアジア系の人は、そこまで背が高くありません。
狩猟採集民族の社会は、基本的にみな平等でした。地位に上下がなく、上に立つ者がいなかったからです。首長はいましたが、特権的な権力はなかったとされています。集団の意志決定は、全体の合議で決められていました。社会には、平等化するプロセスが働いており、常に横並びの社会が維持されていたとされています。
【平等】
狩猟採集民族は、全員が狩りなどに出かける狩猟採集者だったとされています。ただし、性別による役割の区別はありました。男が、動物をとらえる狩猟で、女が、植物を集める採集を担当したからです。獲物の取り分は、とった人もとらなかった人も、なんでも、平等に分けられました。何も獲れなかった人が、獲物をもらっても特に感謝もしなかったとされています。なぜなら、分け合うのが当然だったからです。この平等に分けるという価値観は、社会的な知恵だったとされています。その方が、結果的に生き残れる可能性が高まるからです。狩猟採集民族は、集団で狩りをしていました。そのために、必要になるのが仲間同士の団結力です。その和を乱さないように、獲物を独占することは禁止されました。ただし、どうしても狩りの腕には、個人の力量の差が出てしまいます。しかし、狩猟採集民族の間では、たとえ優秀なハンターでも、特別扱いされることがありませんでした。
【自然】
狩猟採集民族は、仕事と生活の区別がなく、それらが一体化していた未分化な社会だったとされています。その仕事も、分業化されておらず、現在のように長時間労働ではありませんでした。狩りや採集というものは、食糧というエネルギー源を獲得すると同時に、自分のエネルギーも消費する行為です。そのため、うまく休息をとりながやった方が効率的だとされています。それは、動物も同じす。また、集団の全員が一斉に仕事を行うわけではありません。働いているのは、全体の65%だったとされています。
狩猟採集民族は、生態系の一つの要素として、自然と完全に調和していました。狩りでも、必要以上に殺生することがなく、剰余食物が出ることがなかったとされています。狩猟採集民族には、食糧を貯蔵するという習慣がありませんでした。大昔は、獲物がたくさん生息しており、人口も少なかったので、蓄える必要がなかったからです。そのため、その日暮らしの不安定な生活だったとされています。