【デミウルゴス】
プラトンは、物質世界「感覚的な世界」の存在を説明するために「デミウルゴス」という神を使って、神話的にそれを表現しました。デミウルゴスとは、ギリシャ語で「公共のために働く者」という意味です。プラトンは、デミウルゴスが、この宇宙を作ったのだとしました。そのため「制作者」「工匠」などとも呼ばれています。
デミウルゴスは、はじめに「世界霊魂」を作りました。プラトンは、人間の魂も、不滅で高級な世界霊魂と同じ本性を持っているとし、それが肉体という牢獄に閉じ込められているのだとしました。
【イデアと質料】
プラトンは、デミウルゴスが「イデア」を模範とし「質料」という原材料を使って、宇宙を生成してるのだととしました。イデアとは、個々のものの原型「雛型」のことです。諸物は、そのイデアの影だとされています。ちなみに、イデアの概念は、経験からは導き出せません。
プラトンは、イデアこそが、神が作った永遠に同一の真の実在だとしました。それに対して、質料は、物資的なものとされています。質料「ヒューレ」は、それ自体だけでは「無規定」「無形式」「無構造」「無機的」な形のない基体にすぎません。そうした質料に「形」や「構造」を与えているのが、イデアだとされています。プラトンは、質料の構成要素は「火」「土」「水」「空気」という四つの元素だとしました。それらを組み合わせるのがデミウルゴスだとされています。それぞれの物の違いは、元素の構成の比率にすぎません。
【宇宙】
プラトンの宇宙論は、きわめて目的論的だとされています。なぜなら、プラトンの宇宙論では、デミウルゴスが、意図的に宇宙を出来るかぎり、自分に似せて創ろうとしてるからです。その宇宙のことを「ウラノス」や「コスモス」と言います。デミウルゴス自体は、変わることがありません。そのため「永遠なる同一者」などとも呼ばれています。
また、デミウルゴスは「善なる者」ともされました。なぜなら、宇宙を展開させることは、善を実現させることでもあるからです。デミウルゴスが作った宇宙は、中心からどの方向にも距離が等しく、秩序と調和と美に満ちた球形だとされています。プラトンは、この宇宙は、始まりをもつが、有限で一つしかないとしました。また、それは自足的なものだとされています。なぜなら、何一つ外部へ出て行くこともなければ、入ってくることもないからです。
プラトンは、宇宙は、有機体のようなものだともしています。その生産の仕方が、動物の妊娠期間のように周期的だからです。宇宙は、不断の循環運動を繰り返しており、老いることも、病気になることもないとされています。プラトンは、そうした宇宙を把握するには、人間の理性によらなければならないとしました。
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