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中国仏像、かけがえのない造形_大阪市立美術館「仏像 中国・日本」展

2019年10月16日 | 美術館・展覧会

天王寺・大阪市立美術館で「仏像 中国・日本」展が行われています。
大阪市立美術館が誇る中国の美仏コレクションを中心に、悠久の中国の仏像造形の歩みをしっかりと体感できる展覧会に仕上がっています。





目次

  • 大阪市立美術館の美仏コレクションの魅力
  • 中国で最初に仏教美術が花開いた北魏時代
  • 日本仏像のルーツ、隋唐時代にあり
  • 江戸時代になっても日本に影響を与えていた






大阪市立美術館の美仏コレクションの魅力

この展覧会に出展されている中国の仏像はすべて日本にあるもので、全国の美術館や寺から貸し出されています。
うち半分近くを大阪市立美術館の所蔵品が占めており、中国石仏では日本屈指の名品揃いで名高い「山口コレクション」が中でも秀逸です。

山口コレクションは、戦前に関西屈指の財閥だった山口家の中心人物の一人・山口謙四郎が蒐集したものです。
ちなみに謙四郎の兄・吉郎兵衛(四代目)は山口家の当主で、芦屋のモダンな邸宅は現在、彼の収集した日本の古美術コレクションを展示する適翠(てきすい)美術館になっています。

大阪市立美術館は、日本でも有数の個人コレクションの寄贈が多い美術館でもあります。
この展覧会で、社会党の衆議院議員だった田万清臣(たまんきよおみ)、小野薬品工業社長だった小野順造、両コレクションの美仏にもお会いすることができます。





中国で最初に仏教美術が花開いた北魏時代

展覧会のプロローグは、中国に仏教が伝来する前、紀元前3-4cの春秋戦国時代です。
仏像を偶像の一つととらえ、仏教礼拝の対象として造立される前に着目しているところに、この展覧会の奥の深さをうかがわせます。

【展覧会 公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

「銀製男子立像」永青文庫は、兵馬俑よりも古い今から2300年以上前の銀の像です。
古代人の魂が今に伝わるように感じさせる造形は、10cmほどしかない小さい像ながら、圧巻のオーラを放っています。重要文化財です。

中国で最初に本格的に仏教美術が興隆したのは5-6cの北魏の時代です。
世界遺産の雲崗と龍門の石窟が、中国仏教美術の至宝としてよく知られています。

【Google Arts & Culture の画像】 「石造如来坐像」大阪市立美術館

北魏時代466年に造られた銘が刻まれている「石造如来坐像」も目が離せません。
石仏らしいおおらかな温もりのある表現には、思わず手を合わせてしまいます。
山口コレクションの名品の一つです。

【Google Arts & Culture の画像】 「石造如来三尊像」大阪市立美術館

「石造如来三尊像」は、日本古来の仏像配置の基本となった「三尊」形式の原点のように見受けられます。
どんな人々の祈りをも受容できると思わせる、包容力のある表現は感動的です。





日本仏像のルーツは隋・唐時代にあり

日本に仏教が伝来したのは、飛鳥時代が幕開けする直前の6c半ば。
聖徳太子が活躍する時代のおよそ半世紀前です。
遣隋使・遣唐使を通じて、仏教を軸とした中国の最先端文化が怒涛のように日本にもたらされます。
飛鳥・奈良時代は、日本が最も中国の文化を吸収していた時代でした。

「石造菩薩立像」大阪市立美術館は、隋時代初期のすましたような顔立ちが印象的な石仏です。
彩色が部分的に残されており、後の唐三彩のカラフルな描写を彷彿とさせます。
明らかに日本の仏像ではないと感じさせる名品です。
山口コレクションの重要文化財です。

「観音菩薩立像」堺市博物館は、隋時代の「木造」仏像として現存する世界唯一の作例とみられています。
日本の白鳳仏と共通する、エキゾチックなボディラインと抽象的な表情が印象的です。重要文化財です。

【所蔵者公式サイトの画像】 「銅造薬師如来坐像」奈良国立博物館

「銅造薬師如来坐像」は奈良時代に日本で制作されたものですが、お顔の表情は同時代の仏像とは異なります。
中国的な頬のふくよかさがあり、唐時代の中国仏像を範としたようです。

【Google Arts & Culture の画像】 「石造如来立像頭部(河南・龍門石窟奉先寺洞将来)」大阪市立美術館

「石造如来立像頭部」は、唐時代に造営された竜門石窟にあったものです。
西域文化の影響を強く受けた、唐時代らしいお顔立ちが強く印象付けられます。
実際に西域の人の顔を見ることがない日本の仏師には、なめらかな頬のラインや深い目の彫りは絶対に表現できないでしょう。
小野コレクションの名品です。





江戸時代になっても日本に影響を与えていた

遣唐使による交流が終わっても、留学僧を通じて中国文化は常に日本に持ち帰られていました。

【所蔵者公式サイトの画像】 「木造観音菩薩坐像(楊貴妃観音)」泉涌寺

京都・泉涌寺の至宝「楊貴妃観音」が放つまばゆい輝きは、常に観る者に安らぎを与えます。
正面から見ると伏し目がちに見えますが、下から見上げるとちょうど目線が合うように計算された造形も独特の趣です。
展示は10/12-10/20ですが、展覧会には泉涌寺留学僧が南宋から持ち帰った他の仏像が多数展示されています。
日本と一味異なる南宋仏の造形は、仏像という偶像芸術の魅力を一層高めてくれるでしょう。

「木造観音菩薩坐像」清雲寺も南宋仏の名品です。
片膝を立てて座りながら、観る者を誘惑するような目線が何とも艶めかしく感じられます。

【所蔵者公式Instagramの画像】 「木造韋駄天立像」萬福寺

江戸時代の中国仏像は、長崎の華僑寺院や京都・萬福寺の建立により、多くがもたらされました。
「木造韋駄天立像」は、まさに空から飛んでやって来たような躍動感の表現が抜群です。
歌舞伎役者が見えを切ったような目線とポーズの造形も、日本ではなかなか見られません。


日本の仏像を交えながら、中国仏像の変遷を追いかけた展示には、好奇心が全く途切れることはありませんでした。
加えて中国の美仏がこんなにも日本に伝来していることにも驚かされます。
大阪市立美術館の「仏像」をテーマにした企画展は、やはり奈良国立博物館と並んで「格別」です。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



どんな部屋にも合う不思議なほとけ様


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利用について、基本情報

<大阪市天王寺区>
大阪市立美術館
特別展
仏像 中国・日本
中国彫刻2000年と日本・北魏仏から遣唐使そしてマリア観音へ
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:大阪市立美術館、読売新聞社、NHK大阪放送局、NHKプラネット近畿
会期:2019年10月12日(土)~12月8日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていますが、企画展開催時のみ鑑賞できます。



◆おすすめ交通機関◆

JR・大阪メトロ「天王寺駅」、近鉄「大阪阿部野橋」駅、阪堺電車「天王寺駅前」駅下車
各駅から天王寺公園内を通って徒歩5~10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
JR大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→天王寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。有料の天王寺公園地下駐車場が利用できます。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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