鈴木大拙(すずきだいせつ)は、20c前半に欧米に日本の禅文化を紹介した金沢出身の仏教学者です。鈴木大拙館は2011年、大拙の考えや足跡を伝えて理解を深め、来館者自身も思索できる場として金沢市によって開設されました。
兼六園のある小立野台地を借景に、水と緑が主役になるよう設計された建築空間の中で、大拙の禅文化をじっくりと体験することができます。水と緑に静かに向き合うと、自然と心が落ち着いてきます。
金沢21世紀美術館・石川県立美術館・金沢市立中村記念美術館なども近くにあります。金沢の芸術ゾーンを回遊するにあたって、鈴木大拙館は必見です。
玄関から展示空間へ向かう廻廊
大拙は1870(明治3)年、鈴木大拙館の近くで生を受けました。京都の哲学の道の語源にもなった哲学者・西田幾多郎(にしだきたろう)と国文学史の名著をのこした藤岡作太郎(ふじおかさくたろう)とは、第四高等中学校(現在の金沢大学の前身)で同窓だったことが知られています。
また現在の大阪市立東洋陶磁美術館のコレクションを築いた総合商社・安宅産業の創業者である安宅弥吉(あたかやきち)は友人で、大拙を経済的に支援していました。
大拙は鎌倉・円覚寺の釈宗演(しゃくそうえん)に参禅し、本格的に禅文化の研究を始めるようになります。釈宗演は明治期に日本人として初めて禅文化を欧米に紹介した僧です。釈宗演のすすめで大拙は1897(明治30)年から12年間渡米し、禅文化を紹介する英語の著作を多数出版します。晩年は北鎌倉・東慶寺に創設した「松ヶ岡文庫」で研究生活を行い、世界中の知識人と積極的に交流しました。
こうした経歴から、大拙は日本よりむしろ欧米での知名度の方が高いかもしれません。鈴木大拙館の来館者も欧米を中心とした外国人がとてもよく目立ちます。
玄関
玄関から展示空間へ向かう廻廊は、外部光を遮るように造られており、特別な空間へ進んで行くことを予感させます。廻廊の中央だけがガラス張りで、クスノキがすらりと伸びたシンプルな庭園を目にします。
【公式サイト】 展覧会案内
展示空間は大拙がのこした手紙や原稿から、大拙の人となりや考え方をうかがうことができます。詳しい足跡も紹介されています。また大拙と交流のあった人物の目線で大拙を紹介するような企画展も行われています。大拙の禅文化をより深く知ることができます。
水鏡の庭と思索空間
展示空間を出ると、水が張られた「水鏡の庭」を見ながら思索空間に向かいます。展示空間へ向かう暗い廻廊とは真逆に、全面ガラス張りの回廊からは水面で表現された静寂な世界が見えます。禅寺にあるシンプルな白砂しかない庭園を思わせます。
思索空間の中には畳二畳ほどの座るスペースだけがあります。ここに座って水面を眺め、思索できるようになっています。座禅もできます。この空間の中では会話する人はほとんどいません。無言で空間を見つめるよう、自然と仕向ける空気が支配しています。
水鏡の庭を悠然と泳ぐ小さい魚
禅や宗教に興味がない方でも、鈴木大拙館の空間の不思議な魅力には虜になってしまうと思います。建築として、とてもよくできています。設計は、京博・平成知新館など数々の美術館建築のほか、最近ではGINZA SIXを担当した谷口吉生(たにぐちよしお)です。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
欧米人の禅ブームに火をつけた著者が説く禅の本質とは?
鈴木大拙館
【公式サイト】http://www.kanazawa-museum.jp/daisetz/
原則休館日:月曜日、12/29-1/3
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30
◆マナー教室◆
◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◆おすすめ交通機関◆
北鉄/周遊バス「本多町」バス停下車、徒歩5分
JR金沢駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安: 25分
金沢駅 兼六園口 3番(北鉄バス)/7番(周遊バス)のりば→北鉄/周遊バス→本多町
金沢駅まで
東京駅から北陸新幹線で2時間30分
大阪駅から在来線特急で2時間30分
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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