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平安京のパノラマ模型に釘付け_平安京創生館「京の塔」6/3まで

2019年02月15日 | 美術館・展覧会

平安時代や室町時代に京の都にあった「塔」を紹介するという、かなりトリビアな展覧会に行ってきました。京都・二条城の北にある平安京創生館で行われている「京の塔をめぐる」です。

  • 平安時代後期に京の都を取り巻くように100基以上の塔が立っていたことには驚き
  • 法勝寺や相国寺にあった現存最高の東寺・五重塔よりはるかに高い塔の復元写真は必見
  • 平安京の様子を復元した約10m四方の巨大パノラマは何より圧巻
  • 鳥羽離宮や法勝寺の復元模型もあり、歴史ファンにはたまらない


数々の復元模型は必見です。観光客を呼べること間違いなしですが、PR下手でこの施設のことを誰も知りません。


歴代の塔の高さランキング(現存最高の東寺・五重塔は3位)

平安京創生館は、京都市が運営する生涯学習センター・京都アスニーに入居する博物館施設です。平安京復元模型を目玉展示に、平安京の歴史を学べる展示が行われています。

平安京復元模型は、1994年の平安遷都1,200年祭にあわせて1/1000サイズで制作され、京都市美術館で公開されていました。1,200年祭終了後は特別展で披露される以外は非公開でしたが、常設展示をのぞむ声に応えて2004年から京都アスニーで、まずは平安京部分だけの常設展示が始まります。

2006年に平安京創生館が開設される際に、平安京周辺部も拡張されて現在の大きさになり、左京・東山の復元が行われます。2018年になって北山や右京の復元が完成し、南側を除く平安時代の京都盆地の全容を見ることができるようになりました。

三十三間堂など、現存する建物を確認できることが、観光・学習コンテンツとして何よりも魅力的です。東寺/西寺以外に平安京の中には寺が造れなかった平安時代に、周辺部に塔が林立していることがよくわかります。高い建物がなかった時代の摩天楼は、都の賑わいを示すように壮麗な光景だったでしょう。

【平安京創生館公式サイト】 常設展 復元模型の解説「平安京、法勝寺、鳥羽離宮」


法勝寺 復元模型

現存最高の東寺・五重塔56mよりはるかに高い81mの八角九重塔があった岡崎・法勝寺や、現在の城南宮付近にあった広大な鳥羽離宮の復元模型も必見です。平安時代に何もない原野だった岡崎に、巨大な塔が赤くそびえたつ姿は、造らせた白河上皇の権勢を人々に見せつけているようです。バベルの塔のように神がかり的な光景だったに違いありません。

企画展では、貴族の塔めぐりの日記を元に、確認できる65基の塔のリストが展示されています。神仏習合の時代のため、現在の神社にもたくさんの塔があったことがわかります。東山に特に塔が集中していることも興味深く確認できます。法勝寺以外にも5か寺があって六勝寺と呼ばれた岡崎エリアは特にすさまじく林立しています。


平安京を取り巻いていた塔の分布

日本の塔の高さの歴代ベスト2の復元写真も見ものです。文献をたどって新たな情報が判明するたびに少しずつ微調整をしているとのことで、とてもリアルにできています。歴代1位の相国寺・七重塔は1399(応永6)年に足利義満が建てたもので、高さは109mあったと考えられています。現存最高の東寺・五重塔56mのほぼ2倍の高さです。写真を見るだけでも威容を感じます。

室町時代にどうやって建設したのかと不思議でなりませんでした。しかもこの塔は二度焼失し再建されていますが、1470(文明2)年までの短い生涯でした。地震があった記録まではわかりませんが、建築技術が確立していたことがうかがえます。

歴代2位は法勝寺・八角九重塔81mで、こちらは平安時代末1081(永保元)年の建築です。八角形のデザインがとても神秘的です。こちらも一度焼失し再建されており、1342(暦応5)年まで250年ほど建っていました。


大内裏からまっすぐに伸びる朱雀大路

現在の平安京創生館は、京都市民向けの生涯学習施設という位置づけのため、この素晴らしい復元模型コンテンツが市外の人に広く伝わってきません。硬直的な役所のスタンスに日の目を見られなくなっています。

2020年3月頃には3年間の改修工事を終えた京都市美術館が「京都市京セラ美術館」となってリニューアルオープンします。常設展示スペースが設けられるなど、展示スペースがかなり拡張するようです。平安京復元模型を、最初に公開された京都市京セラ美術館に展示場所を移すと、はるかに多くの国内外の観光客に見てもらえるようになります。

都市のパノラマ模型は建物の形状で理解できるため、誰でも楽しく鑑賞できます。マレーシアのクアラルンプールにもあり、都市の様子がとてもよく理解でたことを記憶しています。東京も森ビルが制作した巨大パノラマがありますが、都市計画業務にも使用しているため常時公開されていません。日本も都市パノラマ模型の公開に知恵を絞ってほしいものです。


鳥羽離宮 復元模型

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



現代の宮大工が見た古建築の魅力

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平安京創生館
企画展 京の塔をめぐる
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:京都市生涯学習総合センター、(公財)京都市生涯学習振興財団
会場:京都市平安京創生館(京都アスニー1F)
会期:2018年12月13日(木)~2019年6月3日(月)
原則休館日:火曜日、年末年始
入館(拝観)受付時間:10:00~16:50

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っています。



◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「二条」駅下車、徒歩15分
市営地下鉄東西線「二条」駅下車、2番出口から徒歩15分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
京都駅→JR嵯峨野線→二条駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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