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愛知アート100年史 驚きの名品が登場_リニューアル愛知県美で6/23まで

2019年04月07日 | 美術館・展覧会

2017年秋から改修工事で休館していたが愛知県美術館がリニューアル・オープンしました。再開の晴れの舞台に選ばれたのは、愛知のアートの百年史を振り返る展覧会「アイチアートクロニクル1919-2019」です。

  • 公立美術館では日本有数の愛知県美コレクションから愛知にちなんだ近代洋画とモダンアートを厳選
  • 大沢鉦一郎ら、全国的には知名度が高くない愛知の画家の作品はどれも見応え
  • 自館だけでなく愛知県全体の所蔵品を集めた、定評ある愛知県美術館の企画力が注目される


新たな発見ができる展覧会です。トヨタ自動車や木村定三郎からの寄贈品の常設展示も必見です。いつ見てもうならせます。


10F展望台から見たテレビ塔と名駅の摩天楼

展示は、今からちょうど100年前の1919(大正8)年に愛知県の若者たちが洋画家グループ「愛美社」の紹介から始まります。愛美社の中心人物で、いずれも名古屋出身の大沢鉦一郎(おおさわせいいちろう)と宮脇晴(みやわきはる)の作品が存在感を放っています。

大沢の「大曽根風景」は原野で力強く生きる木々と青く澄んだ空気の描写が見事です。観る者をまるで原野の中を歩いているように錯覚させます。名古屋ドームの最寄り駅でもある大曽根が、大正時代にはこんな原野だったことにも驚きを隠せません。

宮脇の「自画像」は18歳の時に描いた若い情熱があふれる作品です、唇を引き締めて一点を見つめている表情が強く印象に残ります。

【愛知県美術館公式サイトの画像】黒田清輝「暖き日」
【愛知県美術館公式サイトの画像】岸田劉生「高須光治君之肖像」

同じ部屋には同世代の画家の作品も展示されています。黒田清輝「暖き日」は、印象派的な明るい光で日本の閑村を描いています。素朴な建物からは今にも子供が飛び出してきそうな生命感を感じさせます。

岸田劉生は、大沢と宮脇が愛美社を結成するきっかけとなった洋画家グループ「草土社」を率いていました。「高須光治君之肖像」は草土社のメンバーを描いています。高須光治の画業に対する強い意思を感じさせる作品です。



展示は時代を追って進んで行きます。

【展覧会公式サイト】みどころ ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

1930年代に名古屋でシュルレアリスムを標榜した吉川三伸(よしかわさんしん)の作品が注目されます。名古屋市美術館蔵「葉に因る絵画」は、植物のように見えそうで見えません。シュルレアリスムの不思議な世界観が巧みに表現されています。1940年の作品で、ナチスの退廃芸術と同じく、日本でも特高警察によってまもなく弾圧されていきます。

長期間のアメリカとメキシコ滞在後は愛知県の瀬戸市で後半生を過ごした北川民次(きたがわたみじ)も秀作が出展されています。「南国の花」は、メキシコ壁画運動を吸収した表現が、南国の大きく明るい花にさらに生命力を与えています。植物ですが今にも動き出しそうに見えます。

現代アートでは、奈良美智の「Girl from the North Country」に人だかりができていました。典型的な奈良による少女の顔の絵です。奈良は青森県出身ですが、愛知県立芸術大学を卒業しており初期の画業は名古屋で行っています。2014年の新しい作品で、もし購入していたらかなりの高額であることがうかがえます。


10F美術館入口

企画展としての「アイチアートクロニクル」に属さない、寄贈品を中心としたコレクション展も必見です。展示室6ではトヨタ自動車からの寄贈品を中心に秀作が揃っています。

【愛知県美術館公式サイトの画像】クリムト「人生は戦いなり(黄金の騎士)」

世紀末ウィーンを代表する耽美の画家・クリムトの「人生は戦いなり(黄金の騎士)」は、甲冑に身を固めた黄金色に輝く騎士が、不自然な直立不動で馬にまたがっています。クリムトらしい平面的で奥行きのない描写は、何かを示すアイコンのように見えます。一度目に留まるとずっと見続けてしまう不思議な魔力を持っています。

藤田嗣治「青衣の少女」も素晴らしい名品です。フジタの乳白色の画風の評判がパリで絶頂期に達していた1925年の作品で、乳白色の少女の肌と青い服のバランスが見事です。完璧な黒髪と黒い瞳が、さらにこの絵の東洋的な魅力を増しています。東洋人の女性を描いたフジタ作品はあまり多くないこともあり、とても斬新でした。

【愛知県美術館公式サイト】木村定三コレクション

木村定三コレクションは愛知県美術館のコレクションの最大の目玉です。熊谷守一の最大のパトロンであることは近年、よく知られるようになりました。近代洋画・江戸絵画・陶磁器・仏教美術とコレクションの幅は広いものの、選美眼にぶれはありません。

3,000点を超える寄贈品が入れ替えながら「木村定三コレクション室」で展示されています。寄贈者名を冠した常設の展示室は、アメリカでは一般的ですが、日本ではほとんど見かけません。大きな美術館に寄贈が集中するというスケールの威力がまさに実感できる好例です。

いつ見てもうならせます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



ナゴヤメシもすっかり有名になった

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愛知県美術館(名古屋市東区)
リニューアル・オープン記念 全館コレクション企画
アイチアートクロニクル1919-2019
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:愛知県美術館
会期:2019年4月2日(火)〜6月23日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~17:30(金曜~19:30)

※期間中に一部展示作品が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。

※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていますが、企画展開催時のみ鑑賞できます。




◆おすすめ交通機関◆

地下鉄東山線/名城線「栄」駅、名鉄瀬戸線「栄町」駅下車、
「オアシス21」連絡通路を通って「愛知県芸術文化センター」10Fまで徒歩5分

JR名古屋駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
名古屋駅→地下鉄東山線→栄駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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