(1955/ウィリアム・ワイラー製作・監督/フレデリック・マーチ、ハンフリー・ボガート、マーサ・スコット、アーサー・ケネディ、ロバート・ミドルトン、メアリー・マーフィ、デューイ・マーティン、ギグ・ヤング/112分)
多分、子供の頃に『日曜洋画劇場』で観たのが最初で、その後にもう一度やはりTVの吹き替え版で観たはずなんだが、レンタルショップで探してもVHS時代から見かけることがなくて悔しい思いをしていた映画だ。数週間前に中古ショップでDVDを見つけて買って来た。ヤリィ
ワイラーが「ローマの休日 (1953)」の2年後に作った作品で、この後「友情ある説得 (1956)」、「大いなる西部 (1958)」へと続く。
刑務所を脱獄した三人の男が四人家族の一般家庭に押し入り、リーダー格の男の情婦が逃走資金を持って来るまで居座るという話で、実際の事件を元にジョセフ・ヘイズが小説を書き、舞台化をし、更に映画用に脚本を書いた。
原題が【THE DESPERATE HOURS】。逃亡者達にとっては“死にものぐるいな時間”であり、被害者家族にとっては“絶望的な時間”だったということでしょうか。
脱獄犯のリーダー格グレン・グリフィンに扮するのが当時56歳のハンフリー・ボガード。
前年に最後の主演オスカーにノミネートされた「ケイン号の叛乱」に出演、翌年の「殴られる男」が遺作でした。「ケイン号」と同じ年には「麗しのサブリナ」、「裸足の伯爵夫人」という名作たちにも出演。死因は食道癌ですが、既に何かを感じていたのでしょうかねぇ。
グレンは、警官殺しで逮捕された時に、その警官の同僚ジェス・バードに顎を砕かれたという過去があり、バードへの復讐にも燃えていた。盗難車でやって来たこの町も実はバードが管轄している場所だったのだ。
脱獄犯ハル・グリフィン(マーティン)はその名前の通りグレンの弟。
兄に導かれるように悪の道に入ったが、心の奥には優しさも持ちあわせている青年だった。映画の後半、バードへの復讐にこだわっている兄に愛想を尽かし、一人先に町を出ようとするのだが・・・。
もう一人の脱獄犯が、巨漢のロバート・ミドルトン扮するサム・コビッシュ。粗暴でガサツ、動物の命も人の命でさえも奪うことに何の躊躇もない男だ。
初見から大分経った頃「テキサスの五人の仲間」で再会した時には、普通の理性的な男性を演じていたので驚いたモンです。
さて、悪漢どもに居座られる四人家族の家長、ダン・ヒリアードに扮するのはオスカー2度受賞の名優フレデリック・マーチ。その2度目がワイラーの「我等の生涯の最良の年」でした。
会社の重役をしているダンは、「我等の生涯の最良の年」でマーチが演じた主人公と同じく健全な家庭を営む健全な父親であり愛妻家でもある。上の娘は既に働きに出ていて最近は彼氏もいるらしい。その日もいつものように娘を乗せてマイ・カーでご出勤。夕方に娘と帰宅するとガレージには見知らぬ車、居間にはグレンにピストルを頭に突きつけられた愛妻がいるという状況でした。
ダンの妻、エリーにはマーサ・スコット。
「ベン・ハー」でベンの母親役だった女優さんですね。「愛と喝采の日々 (1977)」にも出ておられるようですが、よく覚えていません。サム・ウッドの「我等の町 (1940)」で主演オスカーにノミネートされたそうです。
長女のシンディには当時24歳のメアリー・マーフィ。
この作品以外には観たことないと思っていましたら、ペキンパーの「ジュニア・ボナー (1972)」に御出演だったとか。再見予定に入っている映画なので、その時にはメアリーさんを見つけたいと思います。
少し前のポートレイトクイズに出題したアーサー・ケネディが、グリフィンの宿敵ジェス・バード保安官補でした。
クイズの記事ではこの人には悪役が多いというコメントがありましたが、バード保安官補は、市民の安全よりも犯人の捕獲、抹殺が警察の仕事だと思っている連中ばかりの中で、唯一良心を持った賢明な警察官でした。
妻と幼い息子が人質になっている家に、逃亡資金を持って帰って行くダンに拳銃を貸してくれるのもバード。何故かダンは、その拳銃から弾を抜き取りましたが、彼の意図は見事に成功するのでした。
14年後のシドニー・ポラックの「ひとりぼっちの青春(1969)」で助演オスカーを獲得したギグ・ヤングは、シンディの彼氏で弁護士のチャック。
前日にシンディと喧嘩したチャックは、彼女の家族の窮地になかなか気付かないが、翌日のヒリヤード家が警察の包囲網に入る直前に気付き、彼女を家から連れ出すことに成功する。事件解決後、ダンに家の中に招き入れられるショットには観ている方も嬉しくなりますね、
ビスタサイズのモノクロ映画。
逃亡者達がヒリヤード家を当座の隠れ家に選んだのは庭に転がっていた長男坊主ラルフの自転車を見たから。子供のいる家族は無茶をしないと読んだんですな。なので、居座っても家族を縛り上げたりしないし、外にも出す。流石に小学生のラルフには分別がないので学校を休ませるが、父親にも長女にも普段どおりに仕事に行くように言う。この家が怪しまれたくないからで、家には母親が残ってさえいれば何かあった時にはまず母親を殺すと言い含めているからだ。
子供の頃に観た時にはヒリヤード家にやってくる廃品回収業者がコビッシュに殺されるシーンが印象深く残っていました。走って逃げる老人を普段とは違う冷静さで拳銃を構え、射殺するショットに薄気味悪さと残忍さを感じたと記憶していたんですが、今回はそれほどの薄気味悪さは感じなかったですね。
見終わってみれば、意外にこじんまりとしたスケールにお薦め度は★四つ半。おまけして満点です!
多分、子供の頃に『日曜洋画劇場』で観たのが最初で、その後にもう一度やはりTVの吹き替え版で観たはずなんだが、レンタルショップで探してもVHS時代から見かけることがなくて悔しい思いをしていた映画だ。数週間前に中古ショップでDVDを見つけて買って来た。ヤリィ
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ワイラーが「ローマの休日 (1953)」の2年後に作った作品で、この後「友情ある説得 (1956)」、「大いなる西部 (1958)」へと続く。
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原題が【THE DESPERATE HOURS】。逃亡者達にとっては“死にものぐるいな時間”であり、被害者家族にとっては“絶望的な時間”だったということでしょうか。
脱獄犯のリーダー格グレン・グリフィンに扮するのが当時56歳のハンフリー・ボガード。
前年に最後の主演オスカーにノミネートされた「ケイン号の叛乱」に出演、翌年の「殴られる男」が遺作でした。「ケイン号」と同じ年には「麗しのサブリナ」、「裸足の伯爵夫人」という名作たちにも出演。死因は食道癌ですが、既に何かを感じていたのでしょうかねぇ。
グレンは、警官殺しで逮捕された時に、その警官の同僚ジェス・バードに顎を砕かれたという過去があり、バードへの復讐にも燃えていた。盗難車でやって来たこの町も実はバードが管轄している場所だったのだ。
脱獄犯ハル・グリフィン(マーティン)はその名前の通りグレンの弟。
兄に導かれるように悪の道に入ったが、心の奥には優しさも持ちあわせている青年だった。映画の後半、バードへの復讐にこだわっている兄に愛想を尽かし、一人先に町を出ようとするのだが・・・。
もう一人の脱獄犯が、巨漢のロバート・ミドルトン扮するサム・コビッシュ。粗暴でガサツ、動物の命も人の命でさえも奪うことに何の躊躇もない男だ。
初見から大分経った頃「テキサスの五人の仲間」で再会した時には、普通の理性的な男性を演じていたので驚いたモンです。
さて、悪漢どもに居座られる四人家族の家長、ダン・ヒリアードに扮するのはオスカー2度受賞の名優フレデリック・マーチ。その2度目がワイラーの「我等の生涯の最良の年」でした。
会社の重役をしているダンは、「我等の生涯の最良の年」でマーチが演じた主人公と同じく健全な家庭を営む健全な父親であり愛妻家でもある。上の娘は既に働きに出ていて最近は彼氏もいるらしい。その日もいつものように娘を乗せてマイ・カーでご出勤。夕方に娘と帰宅するとガレージには見知らぬ車、居間にはグレンにピストルを頭に突きつけられた愛妻がいるという状況でした。
ダンの妻、エリーにはマーサ・スコット。
「ベン・ハー」でベンの母親役だった女優さんですね。「愛と喝采の日々 (1977)」にも出ておられるようですが、よく覚えていません。サム・ウッドの「我等の町 (1940)」で主演オスカーにノミネートされたそうです。
長女のシンディには当時24歳のメアリー・マーフィ。
この作品以外には観たことないと思っていましたら、ペキンパーの「ジュニア・ボナー (1972)」に御出演だったとか。再見予定に入っている映画なので、その時にはメアリーさんを見つけたいと思います。
少し前のポートレイトクイズに出題したアーサー・ケネディが、グリフィンの宿敵ジェス・バード保安官補でした。
クイズの記事ではこの人には悪役が多いというコメントがありましたが、バード保安官補は、市民の安全よりも犯人の捕獲、抹殺が警察の仕事だと思っている連中ばかりの中で、唯一良心を持った賢明な警察官でした。
妻と幼い息子が人質になっている家に、逃亡資金を持って帰って行くダンに拳銃を貸してくれるのもバード。何故かダンは、その拳銃から弾を抜き取りましたが、彼の意図は見事に成功するのでした。
14年後のシドニー・ポラックの「ひとりぼっちの青春(1969)」で助演オスカーを獲得したギグ・ヤングは、シンディの彼氏で弁護士のチャック。
前日にシンディと喧嘩したチャックは、彼女の家族の窮地になかなか気付かないが、翌日のヒリヤード家が警察の包囲網に入る直前に気付き、彼女を家から連れ出すことに成功する。事件解決後、ダンに家の中に招き入れられるショットには観ている方も嬉しくなりますね、
*
ビスタサイズのモノクロ映画。
逃亡者達がヒリヤード家を当座の隠れ家に選んだのは庭に転がっていた長男坊主ラルフの自転車を見たから。子供のいる家族は無茶をしないと読んだんですな。なので、居座っても家族を縛り上げたりしないし、外にも出す。流石に小学生のラルフには分別がないので学校を休ませるが、父親にも長女にも普段どおりに仕事に行くように言う。この家が怪しまれたくないからで、家には母親が残ってさえいれば何かあった時にはまず母親を殺すと言い含めているからだ。
子供の頃に観た時にはヒリヤード家にやってくる廃品回収業者がコビッシュに殺されるシーンが印象深く残っていました。走って逃げる老人を普段とは違う冷静さで拳銃を構え、射殺するショットに薄気味悪さと残忍さを感じたと記憶していたんですが、今回はそれほどの薄気味悪さは感じなかったですね。
見終わってみれば、意外にこじんまりとしたスケールにお薦め度は★四つ半。おまけして満点です!
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 
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中学の時、desperateは「絶望的」と憶えたばかりだったので、これが「必死の」になるのかなあと思った記憶があります。辞書にも「絶望的な」と「必死な」の両方の意味が載っていますね。
ワイラーは本当に駄作がないですね。本当の初期に観ていない作品がいくつかありますが、観た作品は本当に素晴らしい。
コメディーからサスペンス、史劇まで何でもうまくこなしてしまう。それが職業作家と言われる所以なのでしょうが、作家性が薄いかというとそうでもないですよね?
vivajijiさんから紹介されて読んでみたジョン・ヒューストンの自伝によりますと、ヒューストンとワイラーは結構交渉があったようです。ワイラーは先輩ですが、ボギーの使い方は案外ヒューストンから教わったかもですね^^
>ギグ・ヤング
実生活の最後が悲惨でした。
同時代に生きた監督さん同志ですから、何かしらの関係はあったでしょうから、それが密であっても疎であっても、覗きたい気になりますね。
>実生活の最後が悲惨でした。
調べてて気付きましたが、割愛しました。お酒が原因のような気がしますね、根底には。