テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ファニー

2018-07-04 | コメディ
(1961/ジョシュア・ローガン監督・製作/レスリー・キャロン、ホルスト・ブッフホルツ、モーリス・シュヴァリエ、シャルル・ボワイエ、ヴィクター・フランセン、ライオネル・ジェフリーズ/137分)


 先日新しい映画を借りようかとツタヤに行きまして、新作コーナー、準新作コーナーを見ていたら、コレ発見しました。数十年前の十代の頃にNHKの字幕スーパーで観て気に入ってた映画ですが、その後殆ど観た記憶が無いんですよね。レンタルにも無かったし。
 「午前十時の映画祭」もそうですが、旧い映画でも新しくDVD化されたりするとツタヤさんは新作扱いにしてくれるので、たまにはこのコーナーにも行かなくちゃです。

 フランスの劇作家マルセル・パニョルの戯曲を元ネタに、ウィリアム・ホールデン主演の「ピクニック (1955)」、マリリン・モンロー主演の「バス停留所 (1956)」などの人情劇がお得意のジョシュア・ローガンが製作を兼ねて監督をしています。ネット情報によりますと、ブロードウェイでミュージカルとしてヒットしていたそうで、その舞台の演出を手掛けたのもローガンだったそうです。
 成る程。それを今度はミュージカルではなく、地元の俳優を集めて人情コメディとして作ったわけですね。

 物語の舞台はフランスの地中海沿岸の港町マルセイユ。でもハリウッド作品なので全編英語です。但し、レスリー・キャロンに加えてモーリス・シュヴァリエ、シャルル・ボワイエというフランスの大御所も参加しているので、雰囲気は伝わります。

*

 ファニーには「巴里のアメリカ人」のレスリー・キャロン。
 港で採れたての魚介類を売っている恰幅の良い母親と二人暮らしのファニーは18歳。いつもは母親の仕事を手伝っている。
 幼馴染の19歳の若者マリウスには「荒野の七人」のホルスト・ブッフホルツ。
 マリウスの方は父親のセザールと二人暮らしで父親の小さな居酒屋を手伝っている。お店にはセザールの友人たちが毎日のように集っては、カードゲームをしたり、通行人をからかったりして呑気に暮らしていた。マルセイユの湾内を航行するタクシー代わりの小舟の船長や帆船の帆や潜水具などの海洋商品の販売をしているパニース等が友人だが、パニースは4か月前に奥さんを亡くしたばかりだった。

 その日、18回目の誕生日を迎えたファニーは母親に休みをもらいマリウスの店に遊びに来た。ファニーは彼が好きで、精一杯おめかしもしてきたのにマリウスは全然そんな気持ちを察してくれなかった。
 マリウスもファニーが好きなんだが、それ以上に若者らしい屈託を抱えていた。毎日毎日小さな居酒屋でお馴染みさんを相手にする生まれ育った港町での暮らしに飽き飽きしていたのだ。時々港に入ってくる大きな船を眺めては、一緒に乗り込んで外洋へ出、世界中を旅してみたい。いつしかそんな夢を持つようになっていたのだ。
 船乗りに憧れ過ぎて年がら年中仕事もせずに港で船を見ている“提督”と呼ばれる男だけにはマリウスは自分の夢を語っていた。

 ファニーをお気に入りのパニースが彼女をテーブルに呼ぶので、ファニーはマリウスに嫉妬させようとワザと親密なふりをした。案の定マリウスは危うくパニースに喧嘩を売る所だったが、そこに“提督”がやって来た。港に入ってくる大きな船を発見したからだ。
 その船は海洋調査船で、地球を5年かけて廻る船だった。以前より憧れていた船で、いつでも乗船できるようにマリウスは荷造り等の準備はしていた。

 “提督”の手配で件の調査船の乗組員と接触したマリウスはいよいよ明日船に乗ることが出来るようになったが、反対するに決まっている父親のセザールには言えなかった。
 その夜、店を閉めようとしたところにファニーがやって来た。話があるという。
 二人は港の桟橋で落ちあい、話をした。18歳になったファニーは、マリウスへの恋心を告白した。勿論、二人は相思相愛なのだ。
 マリウスはファニーを想う気持ちを隠さなかったが、航海への憧れ、このまま故郷の生活に埋もれていくのが我慢できない事も話した。
 ファニーの母親は急用で遠くの親戚の家に出かけて行って今夜は居ない。
 愛を認め合った若い二人はファニーの家に入っていくのだが・・・。

*

 「シェルブールの雨傘」を思い出す設定もありまして、その他にも如何にも何時の時代にも何処の国にもありそうな下世話な話ですが、色恋だけでなく人生の展望が貧しい故の若気の至りとか、父と息子とか、(今の時代には受け入れがたいでしょうが)女性の幸せとか、老いとか、ドラマの要素は色々と入っているので観て損はないです。
 そして出てくる人々がどれも心根の悪い人は居なくて、綺麗事と片付けられるかもしれませんが、こんな世界があってもいいじゃないかと十代の時も今回も思いました。

 モーリス・シュヴァリエがパニースで、シャルル・ボワイエがセザール。
 どっちも流石の好演でしたね。
 『永遠の少女』レスリー・キャロンは当時30歳。色気のある18歳に見えなくもないのがなんというか・・。

 漠然とモノクロと思い込んでいましたら、カラーでした。カメラはジャック・カーディフ。港の風景は美しいし、時折入る人物の顔のアップが的確な心情描写になっていました。

 1961年のアカデミー賞で、作品賞、主演男優賞(ボワイエ)、撮影賞(カラー)、劇・喜劇映画音楽賞(ハリー・サックマン、モリス・W・ストロフ)、編集賞(William H.Reynolds)にノミネートされたそうです。





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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