(1973/斎藤耕一 監督/江波杏子(=中里イサ子)、織田あきら(=岩城徹男)、中川三穂子(=ユキ)、西村晃(=塚本為造)、佐藤英夫、寺田農、戸田春子、東恵美子、富山真沙子/103分)
レンタルDVDにて36年ぶりの鑑賞。
当時、斎藤監督は「旅の重さ(1972)」以来のご贔屓だったので、コレも封切時に観ました。
なんといっても冬の日本海の荒波がうち寄せる風景と波の音が印象的。更にそれに津軽三味線の激しくもモノ哀しい音色が重なる。
生まれ故郷の寒々しい津軽の漁村に東京から帰ってきた水商売の女と、トラブルをかかえて彼女に匿われた格好の若いヤクザもんの話だったことは覚えていましたが、そこにヤクザに想いを寄せる目の不自由な村娘が絡むのはすっかり忘れていました。
前年度の「約束」がショーケンと岸恵子共演のヨーロッパ映画の様な趣だったし、「旅の重さ」にも吉田拓郎のフォークが使われたりと、洒落た語り口の監督と思っていたので、“津軽三味線”とか“民謡”という和のイメージがどのように創られているのか、そんなことも考えながら観に行ったことを思い出します。
程良く省略された語りと情感溢れる映像は今観ても見応え充分。満点!と言いたいところですが、東京から逃げて来た若いヤクザもんが目の不自由な田舎娘を可愛く思うようになる心情の描写が薄っぺらいというか、納得できるだけのエピソードあるいはショットが無かったように感じて、★一つ減点しました。
そのヤクザを演じたのは、当時新人だった織田あきら。北海道出身で、東京で流しのギター弾きをしていたところを斉藤監督の奥さんにスカウトされたとのこと。流しのギター弾きなんて、陰のある演技が必要な役にぴったりですが、そんな苦労を感じさせない甘いマスクが残念でした。
江波杏子、地元の漁師を演じた西村晃、共に好演。酒場のオヤジ役の佐藤英夫も従来のイメージにない汚れ役で、印象強し。
斉藤プロダクションと日本ATGとの合作で、この年のキネマ旬報のベスト1に選ばれ、その他の賞も総なめにしたそうです。
高橋竹山の津軽三味線も大きな話題に。
脚本は中島丈博。斉藤監督も共同脚本にクレジットされておりました。
本編の中にも登場し、DVDジャケットにも使われた瞽女(ごぜ)絵は斎藤真一(1994年 死去 享年72歳)氏の手になるものです。
寂れた漁村、天涯孤独なヤクザと水商売の女、不幸な生い立ちの娘、息子に先立たれた漁師。哀しみが基調の映画です。
▼(ネタバレ注意=備忘録)
水商売の女(=中里イサ子)は東京に出て行く時に、地元の漁師と駆け落ち同然で故郷を捨てたんだが、その漁師の父親が西村晃扮する塚本為造。別の男と帰ってきた女に年老いた漁師は息子の消息を聞く。女は別れてだいぶん経つので知らないと言う。
『好き合って出て行ったんじゃないのか』
『色々あったのよぉ・・』
終盤、工事現場の事故で亡くなったその息子の遺骨をぶら下げて漁師が帰ってくる。丁度、イサ子が再び故郷を出て行く所で、海沿いの一本道で二人が一言も言葉を交わさずにすれ違うシーンが圧巻でした。
イサ子の父と兄は6年前に漁に出たまま帰らぬ人になっていて、船の残骸が見つかったので遭難したことになっている。イサ子は保険会社に保険金を払うように言っているが、保険会社は理由があって払えないと言う。それは、事故が偽装であったということ。漁師仲間の目撃証言で、イサ子の父と兄はシケの海で小舟に乗り換え、本船を乗り捨てたということだった。保険会社は裁判になっても良いと考えている。そこまで言われればイサ子にはどうしようもない。
『そんなに漁師が嫌だったの』
海に向かって涙するイサ子の姿が痛々しい。
ヤクザ(=岩城徹男)は功名心にかられて、敵対関係の組の幹部を刺したのだった。相手の組からも追われ、身内からも疎まれ行き場を無くしていた。父親の顔も名前も知らず、母も小さい頃に亡くしたので顔さえ覚えていない。
浜辺で塚本為造と会い、しじみ漁を手伝うようになる。一緒に汗を流し、飯を食らう。彼にとって初めての人間らしい生活だったのかも知れない。
為造は、イサ子と息子に赤ん坊がいたこと、その子が病気で死んだことを徹男から聞く。
目の不自由な娘ユキを演じたのは、中川三穂子。熊本出身の彼女も新人だったらしい。ヌードの濡れ場も熱演した。
▲(解除)
映画の動画はありませんでしたが、竹山の「♪津軽じょんがら節」がありました。
レンタルDVDにて36年ぶりの鑑賞。
当時、斎藤監督は「旅の重さ(1972)」以来のご贔屓だったので、コレも封切時に観ました。
なんといっても冬の日本海の荒波がうち寄せる風景と波の音が印象的。更にそれに津軽三味線の激しくもモノ哀しい音色が重なる。
生まれ故郷の寒々しい津軽の漁村に東京から帰ってきた水商売の女と、トラブルをかかえて彼女に匿われた格好の若いヤクザもんの話だったことは覚えていましたが、そこにヤクザに想いを寄せる目の不自由な村娘が絡むのはすっかり忘れていました。
前年度の「約束」がショーケンと岸恵子共演のヨーロッパ映画の様な趣だったし、「旅の重さ」にも吉田拓郎のフォークが使われたりと、洒落た語り口の監督と思っていたので、“津軽三味線”とか“民謡”という和のイメージがどのように創られているのか、そんなことも考えながら観に行ったことを思い出します。
程良く省略された語りと情感溢れる映像は今観ても見応え充分。満点!と言いたいところですが、東京から逃げて来た若いヤクザもんが目の不自由な田舎娘を可愛く思うようになる心情の描写が薄っぺらいというか、納得できるだけのエピソードあるいはショットが無かったように感じて、★一つ減点しました。
そのヤクザを演じたのは、当時新人だった織田あきら。北海道出身で、東京で流しのギター弾きをしていたところを斉藤監督の奥さんにスカウトされたとのこと。流しのギター弾きなんて、陰のある演技が必要な役にぴったりですが、そんな苦労を感じさせない甘いマスクが残念でした。
江波杏子、地元の漁師を演じた西村晃、共に好演。酒場のオヤジ役の佐藤英夫も従来のイメージにない汚れ役で、印象強し。
斉藤プロダクションと日本ATGとの合作で、この年のキネマ旬報のベスト1に選ばれ、その他の賞も総なめにしたそうです。
高橋竹山の津軽三味線も大きな話題に。
脚本は中島丈博。斉藤監督も共同脚本にクレジットされておりました。
本編の中にも登場し、DVDジャケットにも使われた瞽女(ごぜ)絵は斎藤真一(1994年 死去 享年72歳)氏の手になるものです。
寂れた漁村、天涯孤独なヤクザと水商売の女、不幸な生い立ちの娘、息子に先立たれた漁師。哀しみが基調の映画です。
*
▼(ネタバレ注意=備忘録)
水商売の女(=中里イサ子)は東京に出て行く時に、地元の漁師と駆け落ち同然で故郷を捨てたんだが、その漁師の父親が西村晃扮する塚本為造。別の男と帰ってきた女に年老いた漁師は息子の消息を聞く。女は別れてだいぶん経つので知らないと言う。
『好き合って出て行ったんじゃないのか』
『色々あったのよぉ・・』
終盤、工事現場の事故で亡くなったその息子の遺骨をぶら下げて漁師が帰ってくる。丁度、イサ子が再び故郷を出て行く所で、海沿いの一本道で二人が一言も言葉を交わさずにすれ違うシーンが圧巻でした。
イサ子の父と兄は6年前に漁に出たまま帰らぬ人になっていて、船の残骸が見つかったので遭難したことになっている。イサ子は保険会社に保険金を払うように言っているが、保険会社は理由があって払えないと言う。それは、事故が偽装であったということ。漁師仲間の目撃証言で、イサ子の父と兄はシケの海で小舟に乗り換え、本船を乗り捨てたということだった。保険会社は裁判になっても良いと考えている。そこまで言われればイサ子にはどうしようもない。
『そんなに漁師が嫌だったの』
海に向かって涙するイサ子の姿が痛々しい。
ヤクザ(=岩城徹男)は功名心にかられて、敵対関係の組の幹部を刺したのだった。相手の組からも追われ、身内からも疎まれ行き場を無くしていた。父親の顔も名前も知らず、母も小さい頃に亡くしたので顔さえ覚えていない。
浜辺で塚本為造と会い、しじみ漁を手伝うようになる。一緒に汗を流し、飯を食らう。彼にとって初めての人間らしい生活だったのかも知れない。
為造は、イサ子と息子に赤ん坊がいたこと、その子が病気で死んだことを徹男から聞く。
目の不自由な娘ユキを演じたのは、中川三穂子。熊本出身の彼女も新人だったらしい。ヌードの濡れ場も熱演した。
▲(解除)
映画の動画はありませんでしたが、竹山の「♪津軽じょんがら節」がありました。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】
とか思ったっしょ?(笑)
いや実はだいぶ前に観たけれど
ほとんど内容覚えてないという・・(ぺこり)
ああああ~~~~!!(突然!)
タカハシ・チュクザンセンセーーーだべっ!!
なんのことはない、つい先日
エレクトリックベースの天才、ジャコ・
パストリアスのベースの音を聴いていてね、
「おや~これは太棹三味線にも共通するわ」
ほだらば
YouTubeさん!
タカハシ・チュクザンセンセー、ドンゾー!!
十瑠さんのお選びになった動画私も観てました~^^;
津軽の話だば、来ねぇでどおするってば^^
ハハハ(↑)適当に書いてみました。津軽弁になってるだべか?
リアリズムと呼ぶには些か詰めが甘い気もしますが、雰囲気は出てましたね。
展開もスピーディーだし、海や山の風景も雄弁でした。
同じくらいに雄弁だった津軽三味線の音、好きなんですよ♪
台湾では上映されておらずDVDも販売されていないようです。
上記の通り出演されておりますよ。
若い頃は青春スターの一人だったように記憶しておりますが、この頃は既にワルを演じてらっしゃった・・・ハズです^^
渋くてダンディーでエロい演技もなさるそうです。
私はサスペンスや時代劇のドラマで彼を知りました。
当時はネットが普及しておらず、彼の名前やプロフィールについては全く知りませんでした。
本作が津軽三味線ブームに乗ったのか、本作がブームを起こしたのかもはや記憶が定かではありませんが、凄いブームでしたよねえ。
後年「竹山ひとり旅」という作品も作られました。
>ヤクザもんが目の不自由な田舎娘を可愛く思うようになる心情
ツバメだった彼は、本音としては、女性に依存する現状を忸怩たる思いを抱いていたのでしょう。それが、田舎娘から「兄さ(ん)」と言われ、依存される立場になったことが快かったということだと思います。
僕はそういう風に理解して納得しています。
現状を(誤)→現状に(正)
でないと意味が通じないので、訂正致します。
博士の書かれた内容は理解できますが・・。