(1963/ジャック・ドゥミ脚本・監督/カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーヴォ、マルク・ミシェル、エレン・ファルナー、アンヌ・ヴェルノン/91分)
雨の季節になったらいつかは観ようと思っていた「シェルブールの雨傘」を、数十年ぶりに観ました。デジタル・リマスターされたレンタルのDVD。
今年の初め、「しあわせの雨傘 (2010)」の公開に併せて来日したドヌーヴを「徹子の部屋」で観た時には、体型はともかく、美しさは変わらないなぁと思ったもんですが、改めて彼女が二十歳の頃のこの映画を観ると、その美しさが尋常ではなかったことが分かりますな。僕が「SCREEN」を購読していた70年前後は、オードリー・ヘプバーンと人気を二分するスター女優でした。あまりに美しすぎたのと、近寄りがたい雰囲気もあったし(近寄れませんけど)、また興味の湧くような出演作も少なかったので、それほど観たものはないのだけれど、幸いにも「シェルブールの雨傘」は73年にリバイバル公開されたので、劇場で観ました。
6年前のコラム記事「映画館とお茶の間と」にも書きましたが、この映画には思い出がありまして、73年の劇場鑑賞では大きすぎた期待からか、あまり感動が無くてガッカリしたのに、その後にNHK-TVの字幕放送で見直したら凄く面白かったという経験です。小市民のささやかなドラマだからTVの小さなスクリーンが合っていたのではとコラムには書きましたが、とにかく、今回のDVD鑑賞で良い映画であることは再確認できました。
16歳から22歳くらいまでの女性を演じた、澄まし顔も泣き顔も素敵なカトリーヌ・ドヌーヴ。ん~、夕べ大騒ぎしていたAKBの女の子達と似たようなお年頃なんだけど・・・。
フランスはノルマンディーの港町、シェルブールが舞台。1954年から始まったアルジェリア戦争が背景にはある。
主人公は自動車修理工場で働くギイ(カステルヌオーヴォ)と、母親と二人で小さな傘店を営むジュヌヴィエーブ(ドヌーヴ)。
二人は愛し合っているが、ジュヌヴィエーブの母(ヴェルノン)は彼らが若すぎるからと結婚には反対する。ギイが20歳であることは近々2年間の兵役にも応じなければいけないので、若い二人の心変わりも踏まえての忠告だった。
ギイには両親がいなくて、病弱な叔母さんと二人暮らし。同じアパートに住むマドレーヌ(ファルナー)が叔母さんの面倒を看てくれていた。
57年の暮れ。ギイに召集令状が届き、別れがたい二人はデートの帰りにギイのアパートで結ばれる。
-この後、入営の為に町を離れるギイとジュヌヴィエーブの別れのシーンにお馴染みのテーマ曲が流れますが、特にシェルブール駅での切ない別れが印象的です-
戦争の影響か、傘店の経営が思わしくなくなったジュヌヴィエーブの母は、手持ちの宝石を売りに出かけるが、店主の渋い返事に落胆していると、たまたま居合わせた宝石商のカサール(ミシェル)が買ってくれることになった。カサールはイギリスやアメリカにも買い付けに出かける実業家だった。
ギイが町を離れて数ヶ月。彼とは手紙のやりとりしか出来ないジュヌヴィエーブ。やがてジュヌヴィエーブの浮かない様子に母親は娘の妊娠を知る。
しばらくぶりにシェルブールにやって来るカサールをジュヌヴィエーブの母は食事に招待していた。ジュヌヴィエーブは気分が悪いと中座するが、食事の後、カサールは彼女の母親にジュヌヴィエーブとの結婚を申し込むのだった・・・。
ミュージカルです。但し、ハリウッドのミュージカルと違うのが、上に書いた別れのシーン等に使われたテーマ曲部分だけでなく、すべての台詞にメロディがつけられていること。イタリア・オペラでは、この形式をレチタティーヴォ(英語ではレシタティヴ)と言うそうです。また、唄っているのは俳優ではなく全て歌手の吹き替えだそうです。
映画では珍しい形ですが、ジャズもお得意なミシェル・ルグランのジャズ風レシタティヴは、大仰でない自然な感情が表現出来ているし、語りとメロディを完全に分けたハリウッド製よりもムードに統一感が出ているように感じました。
淡いピンクやグリーン、水色、黄色などのパステルカラー主体の色彩が美しいのも特徴的。
美しい色合いの洋服を着た女優さんも負けずに美しいので、一見夢物語のように感じられますが、内容はフランスらしいシビアさで、つまりは若気の至りが生んだ悲劇。しかし、全てを受け入れて修復されていく終盤が観ていて切なくなるのです。
▼(ネタバレ注意)
一番グッと来たのは、やはりラストの二人の再会シーン。
運転席で、最初にギイに気が付いた時のジュヌヴィエーブの固まったような表情が切なかったです。
コチラにそのYouTubeがありましたので、リンクさせておきます。
ところで、ジュヌヴィエーブは幸せなんでしょうかねぇ?
子供はギイの血が繋がったフランソワーズだけみたいだし、何となく寂しそうに感じたのは僕だけでしょうか?
あと、マドレーヌがキレイに変身していたのも驚いたなぁ。
▲(解除)
1964年カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞作。
米国アカデミー賞でも脚本賞や外国語映画賞、作曲賞などにノミネートされたそうです。
※ 完璧な分析がなされているオカピーさんの記事はコチラ。
※ 生の解説が聴きたくなるvivajijiさんの記事はコチラ。
※ ネタバレの追加記事、男のつぶやきはコチラ。
雨の季節になったらいつかは観ようと思っていた「シェルブールの雨傘」を、数十年ぶりに観ました。デジタル・リマスターされたレンタルのDVD。
今年の初め、「しあわせの雨傘 (2010)」の公開に併せて来日したドヌーヴを「徹子の部屋」で観た時には、体型はともかく、美しさは変わらないなぁと思ったもんですが、改めて彼女が二十歳の頃のこの映画を観ると、その美しさが尋常ではなかったことが分かりますな。僕が「SCREEN」を購読していた70年前後は、オードリー・ヘプバーンと人気を二分するスター女優でした。あまりに美しすぎたのと、近寄りがたい雰囲気もあったし(近寄れませんけど)、また興味の湧くような出演作も少なかったので、それほど観たものはないのだけれど、幸いにも「シェルブールの雨傘」は73年にリバイバル公開されたので、劇場で観ました。
6年前のコラム記事「映画館とお茶の間と」にも書きましたが、この映画には思い出がありまして、73年の劇場鑑賞では大きすぎた期待からか、あまり感動が無くてガッカリしたのに、その後にNHK-TVの字幕放送で見直したら凄く面白かったという経験です。小市民のささやかなドラマだからTVの小さなスクリーンが合っていたのではとコラムには書きましたが、とにかく、今回のDVD鑑賞で良い映画であることは再確認できました。
16歳から22歳くらいまでの女性を演じた、澄まし顔も泣き顔も素敵なカトリーヌ・ドヌーヴ。ん~、夕べ大騒ぎしていたAKBの女の子達と似たようなお年頃なんだけど・・・。
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フランスはノルマンディーの港町、シェルブールが舞台。1954年から始まったアルジェリア戦争が背景にはある。
主人公は自動車修理工場で働くギイ(カステルヌオーヴォ)と、母親と二人で小さな傘店を営むジュヌヴィエーブ(ドヌーヴ)。
二人は愛し合っているが、ジュヌヴィエーブの母(ヴェルノン)は彼らが若すぎるからと結婚には反対する。ギイが20歳であることは近々2年間の兵役にも応じなければいけないので、若い二人の心変わりも踏まえての忠告だった。
ギイには両親がいなくて、病弱な叔母さんと二人暮らし。同じアパートに住むマドレーヌ(ファルナー)が叔母さんの面倒を看てくれていた。
57年の暮れ。ギイに召集令状が届き、別れがたい二人はデートの帰りにギイのアパートで結ばれる。
-この後、入営の為に町を離れるギイとジュヌヴィエーブの別れのシーンにお馴染みのテーマ曲が流れますが、特にシェルブール駅での切ない別れが印象的です-
戦争の影響か、傘店の経営が思わしくなくなったジュヌヴィエーブの母は、手持ちの宝石を売りに出かけるが、店主の渋い返事に落胆していると、たまたま居合わせた宝石商のカサール(ミシェル)が買ってくれることになった。カサールはイギリスやアメリカにも買い付けに出かける実業家だった。
ギイが町を離れて数ヶ月。彼とは手紙のやりとりしか出来ないジュヌヴィエーブ。やがてジュヌヴィエーブの浮かない様子に母親は娘の妊娠を知る。
しばらくぶりにシェルブールにやって来るカサールをジュヌヴィエーブの母は食事に招待していた。ジュヌヴィエーブは気分が悪いと中座するが、食事の後、カサールは彼女の母親にジュヌヴィエーブとの結婚を申し込むのだった・・・。
ミュージカルです。但し、ハリウッドのミュージカルと違うのが、上に書いた別れのシーン等に使われたテーマ曲部分だけでなく、すべての台詞にメロディがつけられていること。イタリア・オペラでは、この形式をレチタティーヴォ(英語ではレシタティヴ)と言うそうです。また、唄っているのは俳優ではなく全て歌手の吹き替えだそうです。
映画では珍しい形ですが、ジャズもお得意なミシェル・ルグランのジャズ風レシタティヴは、大仰でない自然な感情が表現出来ているし、語りとメロディを完全に分けたハリウッド製よりもムードに統一感が出ているように感じました。
淡いピンクやグリーン、水色、黄色などのパステルカラー主体の色彩が美しいのも特徴的。
美しい色合いの洋服を着た女優さんも負けずに美しいので、一見夢物語のように感じられますが、内容はフランスらしいシビアさで、つまりは若気の至りが生んだ悲劇。しかし、全てを受け入れて修復されていく終盤が観ていて切なくなるのです。
▼(ネタバレ注意)
一番グッと来たのは、やはりラストの二人の再会シーン。
運転席で、最初にギイに気が付いた時のジュヌヴィエーブの固まったような表情が切なかったです。
コチラにそのYouTubeがありましたので、リンクさせておきます。
ところで、ジュヌヴィエーブは幸せなんでしょうかねぇ?
子供はギイの血が繋がったフランソワーズだけみたいだし、何となく寂しそうに感じたのは僕だけでしょうか?
あと、マドレーヌがキレイに変身していたのも驚いたなぁ。
▲(解除)
1964年カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞作。
米国アカデミー賞でも脚本賞や外国語映画賞、作曲賞などにノミネートされたそうです。
※ 完璧な分析がなされているオカピーさんの記事はコチラ。
※ 生の解説が聴きたくなるvivajijiさんの記事はコチラ。
※ ネタバレの追加記事、男のつぶやきはコチラ。
・お薦め度【★★★★★=ミュージカル好きなら、大いに見るべし!】
>完璧な分析
には程遠いですが、余り長くないわりに最近書いたものよりはちゃんと書けているようです^^
>ジュヌヴィエーブは幸せなんでしょうかねぇ?
厳密に言えば、違うでしょうね。
しかし、人間、上を観れば切りがないわけで、こうして妥協していく方(かた)が大半なのだと思います。
僕の人生も妥協も良いところ。
特に大学の選択辺りに人生の分岐点があったと思います。
>厳密に言えば、違うでしょうね。
ドゥミさんとしては、幸せ万々歳ではないジュヌヴィエーブさんを登場させてバランスをとろうとしているのだと思いました。
ミュージカルは好きだけど、これはちょっと苦手かもしれないです…。
でも、パステルカラーな画の鮮やかさと、それとは対照的な切ない物語はとても良かったです。
>たとえ今の暮らしが裕福で夫に愛されているとしても、心には傷を抱えている。その事が切ないんだよねぇ。
そうなんですよね~。二人共幸せだと信じたいけど、それでも消えない傷を抱えているのは確かだと思います。
そして、子供の名前を呼ぶたびにその傷がかすかに疼くのかと思うと…切ない!
観られてよかったです。
慣れだと思いますよ。宵乃さんも観ている途中で気にならなくなったと書かれているように。続けて2度目・・・なんてあったら絶対苦手意識は無くなっていますって~。
梅雨だから思い出してよさそうな映画なのに、ラストのクリスマス・シーンが印象的過ぎて・・・