(1951/ウィリアム・ワイラー製作・監督/カーク・ダグラス、エリノア・パーカー、リー・グラント、ウィリアム・ベンディックス、キャシー・オドネル、バート・フリード、ジョージ・マクレディ、ジョセフ・ワイズマン/103分)
マイケル・ダグラスを初めて見た時、名前を聞かなくてもこの人の血を引いてるなと思ったカーク・ダグラス。子供の頃は存在感の濃さ故に観るのを遠慮していた三人衆の一人でしたが、今は懐かしい俳優の一人であります。因みに濃い三人衆の後の二人は、チャールトン・ヘストンとユル・ブリンナー。
ワイラー監督の凄いところは「ローマの休日」や「大いなる西部」などのロケーションを生かした演出だけでなく、室内劇が多い舞台の映画化にもメリハリの効いた映像を見せるところ。原作はシドニー・キングスリーの戯曲で、ワイラーは、この人の原作では37年にも「デッド・エンド」(←未見)という傑作を作っている。
「探偵物語」の原題は【DETECTIVE STORY】。そのまま「刑事物語」でよかったのにねえ。
ニューヨ-クの21分署が舞台で、万引きをした若い女性や会社の金を横領した青年、二人組の押し込み強盗などが取り調べられる。謎解きが必要なミステリーが発生するわけではない。犯罪者に対して妥協を許さない鬼刑事カーク・ダグラスを軸にした人間ドラマである。彼には、父親の陰湿なイジメによって精神を病んだ母親が自殺してしまったという過去があり、新米刑事の時に恩情をかけた少年が二日後に強盗殺人をしたことも犯罪者を憎む背景になっている。
万引き女に扮するのは当時新人だったリー・グラント。緊迫したドラマの中にふっと笑いを誘う様なエピソードを展開してくれる、ちょっとオカシナ憎めない女性の役で、とても印象深い女優だったんですが、ずっと後になって「夜の大捜査線」で再会した時にはきつめの中年女性の役(被害者の夫人)でイメージの変貌に驚いたもんです。
この演技で、この年のアカデミー助演女優賞にノミネートされたようです。
隣人が原爆を作っていて誰かがエンパイヤビルから自宅を監視しているなどという被害妄想の女性やら、地方から出てきてスリの被害にあう男性なども挿入されるが、軸となるダグラス絡みの犯罪者は闇で堕胎を行っている悪徳医師。1年前に逮捕した時は証拠不十分で不起訴になり、以来ずっと追い続けている。弁護士を伴ってやってきて、ダグラスが医者を執拗に追い回すのには個人的な恨みがあるからだと署長に言う。ダグラスはそんなものは無いと言い、この部分は署長の謎解きが興味を引く。そして謎が明らかになったとき、鬼刑事のジレンマが悲劇を予感させる。
たった一日の出来事で、舞台も21分署の取調室が殆ど。万引き女、横領青年と彼を助けようとする幼なじみの娘、押し込み強盗に被害女性、闇医者と弁護士、それらに絡む刑事達、事件記者、署長、それらのエピソードが経過時間の破綻が無いようにうまく描き分けられている。ほぼ原作通りだという脚本を書いたのはフィリップ・ヨーダンとロバート・ワイラー。ロバートは監督の弟さんとのことです。
全体としては会話の主を中心にした映像だが、アクセントが必要な場面では個別のアップショットが絡んでいるし、他の犯罪者や刑事達の動向に気を取られる万引き女の描写も面白かった。
ダグラス刑事が容疑者に近づく時、必ず拳銃をガンホルダーから抜いてズボンのポケットにしまうのもリアルでしたな。そして、これが後々の伏線にもなっている。
▼(ネタバレ注意)
ダグラス刑事の奥さんがエリノア・パーカー。彼女も懐かしい女優だ。美しいだけではなく演技も達者なようで、この作品でも主演女優賞にノミネートされ、それ以外にも2回ノミネートの経歴がある。
奥さんには夫に隠していた過去があり、潔癖性の夫は彼女を愛しながらも妻の過去の過ちに目を瞑れない自分に悩む。一度は和解したかに見えたが、夫のジレンマに将来を悲観し別れを決意する妻。「噂の二人」で、ヘプバーンがボーイ・フレンドの潜在的な不信感を見抜いて別れを決意するシーンを思い出しましたな。
▲(解除)
「ラスト・ショー」の鑑賞後記でも書いたように、51年は暗い社会派ドラマが多かった年で、ワイラー監督ももう一つ「黄昏」というセオドア・ドライサー原作、ローレンス・オリヴィエ、ジェニファー・ジョーンズ共演の地味なメロドラマを作っている。
そして、その2年後、気分転換するかのように、楽しくイタリア観光をしながら「ローマの休日」という大人のおとぎ話を作りました。
尚、アカデミー賞関連では監督賞と脚本賞にもノミネートされ、リー・グラントは52年のカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したそうです。
マイケル・ダグラスを初めて見た時、名前を聞かなくてもこの人の血を引いてるなと思ったカーク・ダグラス。子供の頃は存在感の濃さ故に観るのを遠慮していた三人衆の一人でしたが、今は懐かしい俳優の一人であります。因みに濃い三人衆の後の二人は、チャールトン・ヘストンとユル・ブリンナー。
ワイラー監督の凄いところは「ローマの休日」や「大いなる西部」などのロケーションを生かした演出だけでなく、室内劇が多い舞台の映画化にもメリハリの効いた映像を見せるところ。原作はシドニー・キングスリーの戯曲で、ワイラーは、この人の原作では37年にも「デッド・エンド」(←未見)という傑作を作っている。
「探偵物語」の原題は【DETECTIVE STORY】。そのまま「刑事物語」でよかったのにねえ。
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万引き女に扮するのは当時新人だったリー・グラント。緊迫したドラマの中にふっと笑いを誘う様なエピソードを展開してくれる、ちょっとオカシナ憎めない女性の役で、とても印象深い女優だったんですが、ずっと後になって「夜の大捜査線」で再会した時にはきつめの中年女性の役(被害者の夫人)でイメージの変貌に驚いたもんです。
この演技で、この年のアカデミー助演女優賞にノミネートされたようです。
隣人が原爆を作っていて誰かがエンパイヤビルから自宅を監視しているなどという被害妄想の女性やら、地方から出てきてスリの被害にあう男性なども挿入されるが、軸となるダグラス絡みの犯罪者は闇で堕胎を行っている悪徳医師。1年前に逮捕した時は証拠不十分で不起訴になり、以来ずっと追い続けている。弁護士を伴ってやってきて、ダグラスが医者を執拗に追い回すのには個人的な恨みがあるからだと署長に言う。ダグラスはそんなものは無いと言い、この部分は署長の謎解きが興味を引く。そして謎が明らかになったとき、鬼刑事のジレンマが悲劇を予感させる。
たった一日の出来事で、舞台も21分署の取調室が殆ど。万引き女、横領青年と彼を助けようとする幼なじみの娘、押し込み強盗に被害女性、闇医者と弁護士、それらに絡む刑事達、事件記者、署長、それらのエピソードが経過時間の破綻が無いようにうまく描き分けられている。ほぼ原作通りだという脚本を書いたのはフィリップ・ヨーダンとロバート・ワイラー。ロバートは監督の弟さんとのことです。
全体としては会話の主を中心にした映像だが、アクセントが必要な場面では個別のアップショットが絡んでいるし、他の犯罪者や刑事達の動向に気を取られる万引き女の描写も面白かった。
ダグラス刑事が容疑者に近づく時、必ず拳銃をガンホルダーから抜いてズボンのポケットにしまうのもリアルでしたな。そして、これが後々の伏線にもなっている。
▼(ネタバレ注意)
ダグラス刑事の奥さんがエリノア・パーカー。彼女も懐かしい女優だ。美しいだけではなく演技も達者なようで、この作品でも主演女優賞にノミネートされ、それ以外にも2回ノミネートの経歴がある。
奥さんには夫に隠していた過去があり、潔癖性の夫は彼女を愛しながらも妻の過去の過ちに目を瞑れない自分に悩む。一度は和解したかに見えたが、夫のジレンマに将来を悲観し別れを決意する妻。「噂の二人」で、ヘプバーンがボーイ・フレンドの潜在的な不信感を見抜いて別れを決意するシーンを思い出しましたな。
▲(解除)
「ラスト・ショー」の鑑賞後記でも書いたように、51年は暗い社会派ドラマが多かった年で、ワイラー監督ももう一つ「黄昏」というセオドア・ドライサー原作、ローレンス・オリヴィエ、ジェニファー・ジョーンズ共演の地味なメロドラマを作っている。
そして、その2年後、気分転換するかのように、楽しくイタリア観光をしながら「ローマの休日」という大人のおとぎ話を作りました。
尚、アカデミー賞関連では監督賞と脚本賞にもノミネートされ、リー・グラントは52年のカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したそうです。
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 
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全米ライフル協会会長と知ってから印象が悪くなったチャールトン・ヘストンは別としても、マイケル・ダグラスとユル・ブリンナーは私は子供の頃から大好きです^^)。確かにでも濃いいですね。
<刑事物語
ほんと、どこが「探偵物語」なんだろう…と思いました。今では検索かけると先に松田優作がヒットしちゃいますねー。
香港活劇「スウォーズマン」も、swords(ソーズ)をスウォーズと読み、「バレットモンク」はBullet-proof Monkのbullet(ビュレット)をバレットと読み違えたもの。
「スクリーン」での原題の日本語訳でとんでもないものがあります。「ガンシャイ」は原題もGun-shy。何と「内気な銃」ですって。近代映画者よ、私を雇ってください。「銃恐怖症」でしょうに。
この映画初めて見たワイラー。とにかく感激しました。今回は観る予定が狂い、DVDの保存版を作っただけ。後日見ますので、その時帰ってきます。
画像を探そうとしたら松田優作ばっかしでしたね。(笑)
ハハーッ。それで最近はカタカナのタイトルが増えたのかな? ちゃんとモノを観てから考えれば良いだけなんですがねぇ。
私も随分前にTVの吹き替え版で観た映画で、数十年ぶりの再会でした。
またのお越しを楽しみにしております。
<ボウリング・フォー・コロンバイン
何度観ても退屈しない、好きな作品です。新作も早くテレビ放送して欲しいです。また11月に再放送予定ですよね。
映画「ニュースの天才」のようにチェック係も全くスルーだったんでしょうね。
日本人の英語(だけじゃないですけど)に対する苦手意識は「不治の病い」ですね。
現代の若者もどうでしょ?
私は大して変わっていないと思いますが。(日本語もとてもアヤシイ)
カネボウの「ナイーブ」ってあるでしょ?
あれも純真・無垢から派生して「世間知らず」の意味ですよね。
会社側は“髪にデリケート”な感じで売ってますけど。
私、いっつも違いませんか~?ってパッケージ眺めてる。
だって「“世間知らず”シャンプー」なんだもん。(笑)
完璧な対訳のない言葉もあるだろうし、カタカナタイトルで逃げるのも一理かな?
「ナイーブ」系列の、イメージ命名商品は結構ありますよね。すぐには思いつかないけど。
物語については原作の舞台劇の力によるところが多いわけですが、物語の持つ訴求力を原作以上に高めたのは、ワイラー指導による抜群のカメラワークです。
ワイラー、ワイルダー、ヒッチコックのようなカメラワークと話術を見せてくれる監督は現在ほぼ全滅状態ですね。寂しい限り。
日本の山田洋次、イタリアのジュゼッペ・トルナトーレ辺りが、古典的な演出ができるので、現在最も好きな監督です。
ワイラーはどの作品でもカメラアングルに気を使っているのが分かりますが、特に「噂の二人」や「必死の逃亡者」などの室内場面でのショットの切り替え、狙いの的確さが嬉しくなる人です。
時々俯瞰ではいる取調室の全景ショットもgoodでした。
10点にブラボー!
「黄昏」といえば、私はワイラーの「黄昏(51)」が先に浮かぶのですが、マーク・ライデル監督の「黄昏(81)」のほうが、一般的には知名度が高いようですね。ま、どちらもいい作品ですが。
カーク・ダグラスは個性の強い俳優でしたね。「ユリシーズ(55)」や「ヴァイキング(58)」のような活劇は、ぴったしカンカンでした。
もちろん「探偵物語」の彼は好演だったと思います。私は「炎の人ゴッホ(57)」と「突撃(58)」を加えたのが、彼の生涯ベスト・スリーではないかと思います。
マイケル・ダグラスは、「ゲーム」を見た時、父と瓜二つなのに本当に吃驚しました。