雪が舞っている朝
暖炉には
薪の火がちろちろと燃え
その暖炉のそばに
私は椅子に座って
彫り物をしている
見送った人の
遺影がまた一つ増え
尋ねてくる人とて
ほとんどない
ラジオだけが
私の聞く音か
時々だが
ザーッという屋根雪の
滑落の音とか
郵便配達夫の
ポストに入れる音が
するくらいのものだ
あーつ!
あいつに聞いておけばよかったと
そう思うことがいくつかはあるので
つい声を上げている自分がいる
つまらないことだが
家の処分のことだったりする
娘たちに少しでも遺産を
残せるものならと
そういう思いが
ふと浮かんでは消える
俺はさしずめ大学の医学部にでも
献体する旨の申請はしておこう
庭の紅葉の木に
一羽の鳩が留って
デデッポーと鳴き始めたので
ここまでの考えを止めた
いいなあお前は飛んでいけば
いつでもどこでも死ねる
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