音信

小池純代の手帖から

日々の微々 250223

2025-02-23 | 詩歌帖

崔融『唐朝新定詩格』「十体」のうち〔彫藻体〕


〔彫藻体〕例詩及びその異訳575仕立て

  岸緑開河柳 池紅照海榴

 両岸に緑を放つ河柳

 池に灯るからくれなゐの火は石榴

      *

  華志怯馳年 韶顔惨驚節

 崩れゆく橋しもばしらこころざし

 まぼろしとおもふまもなく美貌消ゆ






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日々の微々 250220

2025-02-20 | 詩歌帖

崔融『唐朝新定詩格』「十体」のうち〔情理体〕〔直置体〕


〔情理体〕例詩及びその異訳7775仕立て

  遊禽暮知返 行人獨未帰

 群れて飛ぶ鳥
 日暮れに帰る
 いまだ帰らぬ
 旅の人

      *

  四隣不相識 自然成掩扉

 住むは其方か此方か知らぬ  
其方:そなた 此方:こなた
 しんと扉が
 背を向ける


〔直置体〕例詩及びその異訳7575仕立て

  馬銜苜蓿葉 剣瑩鴨鵜膏

 馬の口にはうまごやし
 剣の刃には羽根の膏  
剣:つるぎ 膏:かう

      *

  隠隠山分地 滄滄海接天

 大地を分かつ
 山
 の
 影
 空と触れあふ
 海
 の
 波





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日々の微々 250207

2025-02-07 | 歌帖

     寒冷口語歌〈新かな表記〉


 怖ろしいものは氷で思いきり固めてやってきれいに遺した


 なんだろう氷のなかで燃える火がなにも溶かさず燃えつづけてる


 ありったけの明かりを点けてなにごとか待ってる人が一家にひとり


 ひな壇の右や左のお大臣みずから首をはずしはじめる


 チョコレート凍るパイナップル凍るグリコのあいつ走って逃げる









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日々の微々 250204

2025-02-04 | 歌帖

     立春過ぎ


 小綺麗な端切れいちまい思ひかね棄てかね日々とともに旧りゆく


 目にすれば手にとればつと浮かびくる思ひ出の浮標なりし物象

                          浮標:ブイ


 きさらぎの雪から花へかはりゆく幕間ほどのほんのひととき


 二月の逃げ足迅きところとか日数足らずのところとか好き

 二月:ニンガツ         日数:ひかず       好:よ



 とりこぼしし沙金ひとつぶみうしなふ美々しき日々の微々たりし刻

                     美々:びび         刻:とき









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