韓国ドラマは哲学的感性を刺激する

韓国ドラマ、IT・デジタルなこと、AIなどと並んで哲学に関する事柄や、よろずこの世界の出来事について書き綴ります

久しぶりの寅さん

2021-08-28 00:38:35 | エッセイ
 ものすごく久しぶりに寅さんの新作映画を観ました。

 2019年作「男はつらいよ お帰り寅さん」です。

 若い頃、なぜかわからないけど寅さんに夢中になった時期があります。社会人3年目くらいで仕事は楽しいけど、ストレスがものすごくつらくて、会社帰りに駅前のレンタルショップで寅さんのビデオを何本も借りてよく観たものです。

 一晩に3本もみると、睡眠時間なんてほとんどなくなってしまったけど、それだけ夢中になってみてしまう魅力が寅さん映画にはありました。

 仕事のストレスに耐えられなくなり、ある日会社に行けなくなってふらりと旅に出かけてしまう男が描かれた作品が複数あり、なんと私自身、この登場人物と同じようにふらりと自分の車を走らせて、旅に出てしまったことがあります。

 結果、親兄弟や職場の上司や仲間にさんざん迷惑をかけてしまうことになりましたが、人生つらいことがあれば逃げてもいいんだということを、寅さんの映画から教えられたような気がしています。

 会社員のストレスは私の若い頃と本質的に変わっていないように思えます。その証拠に、自殺したり、心を病んでしまう人たちが後を絶ちません。そういうときには、一歩引いて休んだり、その場から逃げ出しても構わない、たとえ誰かに迷惑をかけることになっても、自分を守るためには、そういうことが必要なこともある。

 もちろん、そんな人ばかりでは社会は成り立ちませんし、職場放棄は褒められたことではありません。しかし、そのような疲れた人たちを赦し、助けることも必要なのではないでしょうか。

 寅さんの映画をみていると、本当に家族とは何かということをしみじみ考えさせられます。渡世人というおよそまじめな会社員からはかけ離れた家族がいたら、自分だったらどう接するのかと、いつも考えてしまいます。

 そして、映画の中で描かれる人間関係のなかに生まれる泣き笑いに本当に心が浄化される気持ちになり、ぽっかりと空いた心の中の穴が、ほんのすこしだけ小さくなり温かい気持ちで満たされる心持ちになります。

 私は、家庭環境が原因で子供のころから心を閉ざして生きてきたようなところがあるのですが、寅さんの映画をみたときだけ、閉ざしてしまった心のシャッターを全開にして、自身の感情が沸き立つのを感じることができるのです。

  この最新作は寅さんファンなら納得のストーリになっています。最新のCG技術によって、寅さんが蘇り登場人物たちと、観客の中にその姿を現すのです。

 寅さんが一番好きだったのは、やっぱり、リリーだったんだなって納得です。「寅次郎相合傘」が私の中ではベストなのですが、この作品をみて山田洋次監督もそう思っているのだということがよくわかりました。

 もし、読者の中で寅さん映画を観たことがない方がいれば、どの作品でもいいのでみてほしいと心から思っています。