トランプ前米大統領(共和党)の起訴に関して、米国世論の多数派は「政治的な捜査だ」との見方をしている。一方で、起訴されたことでトランプ氏に大統領選出馬を断念するよう求める声も多い。
共和党は、今回の捜査を主導したのが民主党のニューヨーク・マンハッタン地区検事だったことから、「民主党が司法権力を政治利用している」と批判している。AP通信によると、ニューヨーク市では五つの地区ごとに検察当局を率いる地区検事が選挙で選ばれる。マンハッタン地区のアルビン・ブラッグ氏は2021年11月の選挙で民主党から立候補して当選。22年に初の黒人のマンハッタン地区検事となった。
トップが公選制でも、検察当局は政治とは一線を画すのが一般的だ。しかし、トランプ氏は、民主党の影響力が強いニューヨーク州やマンハッタン地区の検察当局は「政治的に偏向している」とのレッテルを貼り、自身への捜査を「魔女狩りだ」と批判してきた。
こうした主張は、共和党支持者を中心に浸透している。近く起訴されるとの見方が広まっていた3月23~27日のキニピアック大学の世論調査では、ブラッグ地区検事のトランプ氏への捜査について、全体の62%、共和党支持者の93%、無党派層の70%が「主に政治的動機に基づく」と答えた。
一方、世論調査ではトランプ氏が起訴された場合、24年の大統領選の候補者として「不適格だ」との意見が全体の57%を占めた。法律上は起訴されても立候補を規制する規定はなく、トランプ氏も選挙活動を継続する方針だ。
しかし、民主党支持者の88%、無党派層の55%が「起訴された場合は候補者として不適格だ」と回答。共和党支持者に限ると「不適格だ」と答えたのは23%にとどまっており、党候補指名争いへの影響は限定的だが、本選に進んだ場合は今回の起訴が痛手になる可能性が高い。【ワシントン秋山信一】