Fender 50th Anniversary American Deluxe Stratocaster
ソコソコの本数のギターを持っていてもコレクターではないと言い続けている私ですが、こればかりはコレクター意識があったと認めざるを得ない代物、それが、
Fender 50th Anniversary American Deluxe Stratocaster
です。
50という区切りの良さ、そしてゴールドパーツなのに落ち着きが感じられるルックスに、これは買っときたいなと物欲全開になったわけです。
それは2004年のこと。その後ちょっとだけ増えますが、当初発表されたラインナップは以下3つでした。
Fender Custom Shop Masterbuilt 50th Anniversary 1954 Stratocaster
Fender 50th Anniversary American Deluxe Stratocaster
Fender 50th Anniversary American Stratocaster
Fender 50th Anniversary American Deluxe Stratocaster
Fender 50th Anniversary American Stratocaster
この時に作られた54年製の復刻版は、アッシュの木目がどれも大きくツートーンサンバーストの色が深かったので、かなりの威厳がありました。売価は70万円以上。こちらは私にとっては対象外でした。
発売前に予約してから購入したギターは、いまのところこいつだけ。実物を手に取らない限り絶対に買わない主義の私が、この時だけは「予約」という賭けに出たわけです。
Deluxeはボディがアルダーで、アッシュより木目はひかえ目。アッシュの柄が好きな僕は、アルダーであることを認識しつつ、新星堂ロックイン高崎店の店長に、
「取り寄せてください。必ず買いますから」
「そのかわり、木目がカッコイイものを選んでください!」
「そのかわり、木目がカッコイイものを選んでください!」
という無茶振りをしました。当時しょっちゅう通っていた高崎のロックインで買いたかったし、あちこちの店に行って選ぼうとも思っていませんでしたから。
そして待つこと1か月、ついに販売開始となりました。店長の第一声は、
「イイのを入荷したよ。絶対に気に入ると思うからすぐ来て!」
と、自信満々。
見てみたら、確かに完璧なルックスでした。アルダーだと木目がほとんどないような場合があるものの、これはきれいに木目が浮き出ていました。
ネックは少し平べったいので、程々に太いのが好きな僕の好みとは違いましたが、そんなに気になるほどではありません。ミディアムジャンボタイプのフレットは、エッジがすごく丁寧に仕上げられていたので、握ったときの引っかかり感が全くありませんでした。
当時のデラックスシリーズやベックモデルと同じようにネックとボディのジョイント部分が一部カットされていて、この点でもプレヤビリディが高い。ボディのコンターは、普通のストラトに比べてなだらかなので、ちょっとした部分ですけど高級感が感じられます。
そして各所のゴールドパーツ…見れば見るほど酒を飲みたくなります。こいつを傍らに置いてバーボンを煽るなんて最高でしょう(してませんけど)。
僕はほとんどのギターをどこかしら改造してしまう傾向があります。フレット、ピックアップ、ペグの交換、モノによってはリフィニッシュもしてしまうくらい。よって、オリジナルの状態で残っているギターなんてほとんどないのですが、こいつだけは全てオリジナルスペックのままです(弦以外は)。
2004年は、僕が人前で弾き語りを始めた年でした。大学を卒業してからそれまでの数年は、バンドを組んでなく弾き語りもしない状態。その一方でギターは増えていきましたが、そんな時に前橋のヘブンヘルというお店に行くようになり、そこで知り合った方々との交流を通じて、徐々に音楽活動をし始めました。
そして2006年、ヘブンヘルで知り合った方と一緒にデュオを結成して、このギターでなんちゃってジャズをやり始めました。「なんちゃって」とは、あくまでも僕のことであって、相方であり先輩は、ジョーパスをきっちり弾ける凄腕ギタリスト兼美容師なんですが。
この時が、社会人になってから最もギターの練習に打ち込んだ日々だったかもしれません。そもそも、相方さんがその頃ジプシージャズに傾倒していて、「ジャンゴをコピーしたいけど1人じゃできないから一緒に演ろう」という呼びかけに応じて始まったんです。
ジャンゴのマイナースウィングを題材に、相方さんは1937年、私は1947年のソロをそれぞれコピーし、ギター2本で聞かせられるようにすり合わせをしました。他にスタンダードナンバーも練習したので、そのコードを覚えること、スケールを覚えること、そして何よりジャンゴのフレーズを覚えることにシャカリキになっていました。週に1度、当時経営されていた美容室に私が伺って練習していましたが、個人的にも、仕事を終えてからひとりでスタジオに籠り、ひたすらスケールと運指の練習を繰り返していました。
その時に選んだギターがこのストラト。ジャンゴの音とは違うということは承知の上ですが、スタンダードでジャズを演るなら、イメージとしてはボディ=ホロウ、指板=ローズ、ピックアップ=ハムが定番。これはその対極に位置するボディ=ソリッド、指板=メイプル、ピックアップ=シングル。
なのになぜ?という話ですが、そもそもマグネットPUのついたハコモノを持ってなく、98年製レスポールは椅子に座って弾くときに違和感があったという現実的な理由もありました。
ただ、幸いなことにSCN(サマリウム・コバルト・ノイズレス)というピックアップが適度な太さを持っていて、フロントでS-1スイッチをオンにするとさらにその傾向が強まり、音としても個人的に納得できました。
それと、フラット&ワイドの指板と少し平べったいネックは、クラシックフォームで運指をするのにすごく適していて、しかも1弦と6弦の弦落ちの心配がほとんどなく、他に所有するストラトよりもジャズに向いていると感じたんです。
そのコンビでの活動が終わり、その後に参加したバンドでは、僕自身の立ち位置がVo/Guitarとなって以降、出番が少なくなってしまいました。リードギター担当者のストラト率が非常に高いので、僕はもっぱらテレかレスポールです。
それでも結構な割合で持ち出すことはあり、ここ数年は、同級生でプロギタリストの加茂フミヨシ君が地元に帰ってきた時にセッションで貸すことが定番になりました。加茂君に弾いてもらえて、こいつも喜んでるだろうなー。