(1)資金面の課題
①出し手側(VC等の投資家)
開発初期の投資不足:創薬等の研究開発型ベンチャーでは開発初期(治験Phase1、2)で数十億円規
模の資金調達が必要になるが、我が国の民間投資は不十分。
ヘルスケア分野におけるノウハウ:ヘルスケア分野は科学面、制度・規制面等において専門性が高いため、投資
にもノウハウが必要とされる分野であるが、そのようなノウハウを持った投資家は必ずしも多くはない。
⇒ 官民ファンドが民間投資家と連携して投資するとともに、ノウハウを民間投資家に移転していく。加えて、上場環
境の整備を行う。
②受け手側(スタートアップ等)
大規模に成長するようなビジネスプランを描けていなかったり、ビジネスモデルが弱いことも多い。
⇒ InnoHubのアドバイザー等によるコンサルテーションを推進。
(2)人材面の課題
スタートアップ等において経営をリードできる人材や、健康・医療分野の専門家人材が不足。
⇒ 大学における起業人材の育成、InnoHubやピッチイベント等による人材支援機関とのマッチング、アカデミアや大
手企業から医療系ベンチャーへの人材流動を促進。
(3)規制・制度面の課題
スタートアップ等が新たな技術等を活用する場合に、既存制度上の取り扱いや運用方法を理解していない場合
も多い。
⇒ MEDISO等でのコンサル、グレーゾーン解消制度・サンドボックス制度の活用促進。
(4)ビジネスパートナー等とのマッチング面の課題
大企業等のビジネスパートナーや、実証フィールド(自治体・医療機関・介護施設等)等との接点が少ない。
⇒ InnoHubによるネットワーキングイベントやピッチイベント等によるマッチングを推進。
健康・医療戦略ファンドタスクフォースの現状と今後の方針について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/fundtask/dai3/siryou3.pdf
文部科学省は、来年度から大学発の医療系スタートアップ(新興企業)の支援に乗り出す。基礎研究の費用を補助し、人材育成もサポートする。有望な研究の実用化を後押しし、革新的な医薬品や医療機器の開発に向けた環境を整える。
支援は、スタートアップを設立する研究者が所属する大学や研究機関を介して行う。東京大や京都大、国立がん研究センターなど国内の11大学・研究機関から公募で4、5か所を選び、それぞれに研究費補助金などとして4億~5億円を充てる。
こうした財政支援に加え、研究者らに対し、薬事や治験、知的財産を巡る規制に詳しいプロ人材も紹介する。スタートアップにはこれらの専門知識にたけた人材が不足していることが多いとされ、人材育成につなげる。
同省は関連経費20億円超を来年度予算の概算要求に盛り込む方向だ。2025年度以降の支援継続も検討する。
日本の大学発スタートアップの数は近年、増加傾向にある。経済産業省の22年度調査によると3782社あり、21年度調査の3305社から477社増えた。業種別(複数回答)では、バイオ・ヘルスケア・医療機器が1126社で、最も多かったIT(1146社)に次ぐ数だった。ただ、文科省によると、設立件数で、米国、英国、ドイツと比べて大きく劣っているという。
医療系スタートアップへの支援強化は、新型コロナウイルスへの対応が後手に回った反省が背景にある。日本は海外と比べ、ワクチンや治療薬の開発が遅れた。急速に進化するAI(人工知能)を活用したリモート診断や再生医療、バイオ医薬品の開発など、次世代医療は世界的に注目を集めている。文科省は日本の医療系スタートアップが抱える課題の解決を後押しし、国際競争力を高めたい考えだ。
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20230812-OYT1T50118/