海は確実にプラスチックで汚染されている。莫大なプラスチックゴミが堆積した太平洋の北部の一部は「第七の大陸」と呼ばれるくらい、その量は膨れ上がり続けている。プラスチックの破片は海洋生態系を狂わせ、すでに食物連鎖に入りこんでいるが、どのくらいの量が食料に潜んでいるかはわかっていない。毎年海に投棄される800万トンものプラスチックは、5mm以下の微小粒子マイクロプラスチックに分解され、魚介類を汚染するだけでなく食塩にも混じっていることが、最近の研究で明らかとなった。
マレーシアのプトラ大学の研究グループが科学誌Scientific Reportsに発表した研究によれば、オーストラリア、イラン、日本、ニュージーランド、ポルトガル、南アフリカ、マレーシア、フランスの8ヶ国で製造されている17種の食塩を分析したところ、1種をのぞきすべての商品から149μm(マイクロメートル)を超えるマイクロプラスチック粒子が検出された。検出されなかった1種はフランス製だが、いずれも商品名は明らかにされていない。
研究者らは塩を溶解してろ過し、内部に含まれるマイクロプラスチック粒子を分離した。次に視覚的検査を行い、分光技術を用いて汚染物質の化学組成を評価した。
抽出された72個の粒子のうち、41.6%がポリプロピレンやポリエチレンなどのプラスチックポリマーで、23.6%が顔料、5.50%が非晶質炭素、29.1%は不明となっている。
塩からの人工粒子の摂取量は、1人あたり年間最大37個と低いため、さしあたって健康への影響は無視できるレベルだが、塩の消費にともなう健康リスクをよりよく理解するためには、149μmより小さい人工粒子を分離できる抽出法を開発する必要がある、としている。
「魚介類や食塩中のマイクロプラスチックの濃度は、現時点ではヒトの健康を害するほど高くはない」と、プラスチック汚染の専門家である英プリマス大学の生物学者Richard Thompson氏は、英国の環境専門誌Hakai Magazineで述べている。
しかし、プラスチックゴミが海洋や湖沼に堆積し続ければ、水生環境からの製品にもマイクロプラスチックが蓄積されるのは自明の理だ。ただちに健康被害はないとしても、さまざまな海産物のマイクロプラスチックについて、定期的に数量を把握し性質を解明する必要がある、と研究者は訴えている。
日本製の塩にまでプラスチックが潜んでいるとはショックだが、ここ数年、遠洋の海底、北極の氷、海鳥や魚の胃ぶくろにまで、海のどこにでもプラスチックが溢れているのだから驚くべきことではないだろう。
しかも、海塩は体内に入るマイクロプラスチックの唯一の供給源ではない。複数のルートから積もり積もって、懸念すべきレベルに到達する可能性は大いにある。
海洋循環とプラスチック汚染を研究するオランダのユトレヒト大学の海洋学者Erik van Sebille氏も、Hakai Magazineで警告している。
「海洋のプラスチックは、人類の汚い習慣、暴虐を示すものだが、海洋生物や私たちにどんな害を及ぼすかは正確にはわかっていない」
料理に塩を振りながら、またビーチで海水浴を楽しみながらも、体内に溜まっていくプラスチックのイメージから逃れられなくなりそうだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170630-00010001-dime-sci
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