あと二ヶ月で三学期も終わるという昭和四十二年一月、待ちに待った給食が
始まりました。二学期の間、牛乳だけの牛乳給食だったので、給食が始まるのを
楽しみにしていた夢はうれしくてたまりません。毎朝、学校に着くと必ず、”今日の
お昼は何かな”と、廊下に掛けてある「今日の献立ボード」を確認しました。そして、
毎日楽しく給食を食べていました。ある日のお昼、夢が給食を食べていると、
「夢ちゃーん、給食おいしい?」
と何の前ぶれもなく、六小が声をかけてきました。
「あ、びっくりした。また出てきた。」
「何よ、わたしのこと、幽霊みたいに。」
六小が、ちょっとムスッとして言うと、
「だって、急に声かけるんだもん。」
夢は、六小がおどかすからよ、というように言い返しました。
「あら、そう。まっ、いいじゃない。ねえ、それより給食おいしい?」
「うん、とっても。今日はね、コッペパンと牛乳と、それに鯨の竜田揚げなんだよ。」
「ふーん、そう。じゃあ、よかったわ。」
六小はにこっと笑って、おいしそうに給食を食べる夢を、そっと見ていました。