風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の四

2010-02-19 23:32:46 | 大人の童話

新校舎での生活が始まって一ヶ月がたちました。真新しい校舎、広い校庭、でも、

まだ遊具はすくなく、プールや体育館もありません。しかし、いろいろと気を使って

過ごしていた仮校舎での一学期と違い、子どもたちも先生たちものびのびとして

いました。子どもたちは遊具の少ないぶん、自分たちでいろいろと工夫して遊んで

います。ただ一つ困る事があるとすれば、できたばかりの校庭には、石や釘が多く

転がっていて、子どもたちが遊ぶのにあぶない事でした。また、校庭は整地はされて

いますが、まだ所々に窪みがあり、そこが雨の降ったあとなど、水たまりになる事も

しばしばでした。そこで、全校あげての石拾いが始まります。朝会のあと、

十分くらいを石拾いの時間にあて、みんな(もちろん先生も)でいっせいに

拾い集めました。拾い集めたものは、校庭の数ヶ所に置かれたブリキ製のバケツに

入れていきます。バケツは、あっという間にいっぱいになっていきました。それを、

高学年の子どもたちが校舎の裏の方へ持っていきます。夢は、

”お兄さん・お姉さんは、わたしたちより、やることが多くて大変だなあ。”

と思いました。石拾いだけではありません。高学年の子たちは、時々、体育の

時間等を利用し、先生たちといっしょに、校庭のでこぼこを平らにするため、竹製の

大きな熊手や鋤簾を使って、地ならしなどもしていました。夢は、そんなお兄さん・

お姉さんの姿を教室の窓から眺めながら、

”大変だなあ。ありがとう。”

と心の中でつぶやいていました。

 

 


風の向こうに(第二部) 其の弐

2010-02-17 23:24:00 | 大人の童話

夢は、しばらく校門の脇に佇んで、六小を眺めていました。すると、四小との

初めての出会いの時のように、突然、校舎がキラキラ光りだし、校舎全体が

大きな輝きに包まれていきます。夢が”え、”と思っていると、まもなく声が

響いてきました。

「キャー、夢ちゃんね。始めまして。これからよろしくね。」

声の主は六小でした。四小とは全く違う何とも騒々しい声に、夢は

めんくらいながらも、

「始めまして六小さん。わたしの方こそよろしくね。」

と言って、六小にむかって笑いかけました。六小は夢の言葉を聞いて、うれしくて

たまらないというように、更に大きな光を放ちました。そして、また、

「キャーキャー、返事してもらっちゃった。キャー。」

と、騒ぐのでした。夢は、六小のあまりの喜びように、ただ唖然としていましたが、

しばらくして、はっと我にかえると言いました。

「あ、あのね、六小さん。わかったから、もう少し静かにお話しようよ。」

「何でぇー。わたし、夢ちゃんと会えてとってもうれしいのに。夢ちゃんは、わたしと

会えてうれしくないの?」

「ううん、わたしもとってもうれしいよ。」

「じゃあ、いいじゃなぁーい。」

夢は、はぁーっと小さく溜息をついて呟きました。

「六小さん、四小さんと全然違うなあ。四小さんは、静かに優しくお話していたのに。」

「何か言ったあー。」

「ううん、何も。あ、もう行かなきゃ。六小さん、今日はもうすぐ式が始まるから、また

この次にお話しよう。」

「うん、いいよ、わかった。もっとお話したかったけど、またね。」

六小はそう言うと、キャーキャー言いながら消えていきました。夢は六小が

いなくなると、四小のいる方に向かって、語りかけるように言いました。

「四小さん、六小さんって四小さんと全然違うよ。なんかすごい。一人でキャーキャー

言って帰って行った。ハァ、これからどうなるんだろう。」

一瞬、夢の上を、一陣の風がサーッと吹きぬけていきました。夢には、それが

何となく、四小が「ウフフ」と笑っている声のように感じられたのでした。

 

 

 


風の向こうに(第二部) 其の壱

2010-02-15 22:14:35 | 大人の童話

昭和四十一年九月一日、二年生になった夢は、二学期の始業式を新しい学校で

迎えるため、道を急いでいました。新しい学校の名は戸久野第六小学校、夢が

一年間通っていた戸久野第四小学校の子どもたちが増えたため開校した

小学校です。開校したのは四月ですが、まだ校舎ができていなかったため、

一学期間は四小とその隣りの中学を、仮校舎として使わせてもらっていました。

そのため、新校舎の学校へ行くのは今日が初めてです。夢は、わくわくして

いました。

”どんなかっこうの校舎だろう。何階建てかな。やっぱり三階建てかな。校庭は

広いかな。”

などと、想いをめぐらせながら、遠くに、木々に囲まれた二・三軒の農家や林が

見えるだけの、畑の中の一本道を歩いていきます。やがて、六小が見えてきました。

六小は、どこまでも広がる青い空、まわりを遮るものなど何一つないのどかな

風景のなか、ひときわ高くそびえ建っていました。まもまく、夢は六小に着きました。

着いたとたん、眼の前に広がる光景に、夢は思わず声を上げました。

「わぁー、すごく立派!でも、変わった校舎だなあ。」

それもそのはずです。観音開きの大きな校門、四角い大きな石を組んで造られた

立派な門柱、そして、校門の幅部分だけ真四角の石をはめ込み、石畳のように

なっている校舎の前、まるで、お伽話のお城に入っていく道のようでした。校舎は

四階建てですが、遠くから見ると三階建てのように見えます。その理由は、元々の

地面を掘り下げて一階部分を造ったからでした。元々の地面と掘り下げた地面との

境は土手のようになっており、校舎一階の所まで数メートル開いていました。

そのため、校舎二階から直接校庭に出ることができません。校舎と校庭の間には

階段がかけられていました。この独特の校舎は、いつしか先生や子どもたちから、

”半地下式の校舎”と呼ばれるようになり、市外から大勢の人たちが見に来るように

なりました。

 

 

 

 


物語が一区切りついたところで

2010-02-14 21:20:10 | 日記

幼き日に見た風景

幼き日に聞いた声

それは 大切なもの

 

誰もが見ているはずの

    聞いてるはずの

大事な 大事な もの

 

幼き日に見たものを

      聞いたものを

大切に 大切に

 心の奥の引き出しに

      そっと しまっておきたい

 

                                              鏡 響子  

                                  平成21年12月7日

 

 

 


戸久野第四小学校の呟き

2010-02-14 20:54:11 | 校舎(精霊)の独り言

夢ちゃんと私の物語も一区切りつきました。

でも、二人の心の通いあいが、無くなった訳ではありません。

まだまだ、二人の物語は続きます。六小という私の妹を通して。

そして、夢ちゃんには、新たな物語が待っていました。

そう、六小との心のふれあいです。

では、”風の向こうに(第二部)”を、どうぞ!