戦後に米軍と恋をして、結婚して、子供が生まれて、戦争花嫁としてアメリカに渡る女性、笑子の話です
とても読みやすく、登場人物たちが魅力的で、でも読者の私達にきちんと当時の現実も突きつける、
この本を読んで良かったと思える一冊でした
こちらの本、
大きくは人種差別がテーマなんだけど、ずっと笑子の視点だから常に発見があって面白い
少なくともハーフの娘にとっては日本にいるよりも黒人のハーレムのほうが住みやすいよね、と思ったり、
同じ黒人でもニューヨークにいる黒人、南部にいる黒人では差別の質が違うことを知って驚いたり、アフリカにいる黒人は差別されていないことに驚いたりとか、
ハーレムにいる被差別者の黒人が、プエルトリコ人を更に差別していることを知ったりとか、
そういう、一見しただけではわからないアメリカの構造を知って、それでも強く生きていくしか無いと割り切る笑子は流石だと思いました
笑子の他にも戦争花嫁が何人が出てきますが、
実際に米国に渡るまで、自分が結婚した相手が何系のアメリカ人なのかなんて気にしたこともないし、そもそも気にするところじゃないとみんな思っています
当然ですよね。日本人にとってはどの外国人も「外国人」でしかない
そこに細かい区分けがあるなんて思いもよらないんです
日本という国に差別がないとは思わないけど、パット見の見た目が同じだから少なくとも一瞬で相手を差別対象に認定することは少ないように思う
(逆に言えば、だから多様性を受け入れづらい国だとも言えるけど)
だからこそ笑子がアメリカに着いて直面する現実や、受ける扱い、でもそれなりに毎日楽しかったり、良い知り合いもできたり…
そういう一つ一つの描写に、同じ日本人目線である私も、そこで生活しているかのような気持ちになりながら読み進めました
そしてずっと自分は「日本人妻」、つまりアメリカ社会の差別の外側のつもりでいた笑子が、
私も夫(黒人)の妻で娘(夫とのハーフ)の親である以上、「差別社会の当事者」なんだと気づくラストが潔かったです
一筋縄ではいかないテーマを、とても受け入れやすい文体で、重たくなく、小難しくなく、書いてあるのはとてもありがたかったです
厚い本ではなかったこともあり、あっという間に、とても面白く読みました
冒頭の繰り返しになりますが、この本に出会えてよかったなと思っています