今年最後の一冊に、凄い本を選んでしまった
最初から最後まで素晴らしかった
どちらかというと薄い本ではあるのですが、ゆっくり、噛みしめるように一語一語読み進めました
スリリングさはなくてどんでん返しもなく、ハラハラもドキドキもしないのに感動的なほど面白くて、
読み終えたあとも暫くボーっとした頭でふわふわと瞭司のことを考えていました
ドがつくほど文系な私には数学のことはわかりませんが、
本書は数学のことが詳しく書かれている描写はほとんどなく、数学とともに生きる人たちの生き方を描いている
青春物語みたいなキラキラした感じもあって、文系の私にも本当に本当に面白くて
むしろ自分が数学好きになってあのゼミの仲間になったような感覚で読み進めました
数学をテーマにした本にこんなにワクワクさせられて、こんなに泣かされるとは思ってなかったです
この本はハッピーエンドだし、読後感も清々しくて、良かったね、このラストなら幸せだ、と心から思います
なのに、
胸の奥底に沈むみたいに、哀しい、という思いが張り付いていて、これ以上に幸せなラストはないと思いながら、やっぱり哀しくてたまらなかった
歴史上、数多の法則を見いだしてきた天才たちはたくさんいますが、
その誰もが孤独の縁に立っていたのかな
天才には私たちには想像もできないほどの苦しみが数え切れないくらいあるとは思うのですが、その中の最たるものが孤独なのかもしれないと思います
辛いのは、
周りの人間が瞭司を孤独に追い込んだわけではなく、ただ瞭司が見ている世界を誰も同じように見ることができないってこと
誰が悪いというわけじゃないんだよな
なので私は、登場人物の誰にも、「瞭司にもっと何かしてやれたかもしれない」と思ってほしくない
自分を責めて生きていてほしくないと思っているのです
そして、孤独に震えていた瞭司には、
あなたの残した理論はいま凄まじい熱気の中心にあって、おそらくこの先の世界を変えていくこと、
つまりそれはもう孤独じゃないってことを伝えたい
きっと私の言葉では届かないのだろうけれど、
届かなくても伝えたいのです