≪第96回全国高校野球選手権≫
【神奈川県大会】
~準決勝~
向 上 5-2 横浜隼人
東海大相模 5-4 横 浜
~決勝~
東海大相模 13-0 向 上
熱い夏の戦いも、
ひとまずフィナーレを迎えます。
各地で行われた49の地方大会決勝、
そのトリを務めるのは、
なんといっても神奈川県大会と大阪府大会でしょう。
神奈川県大会は、
毎年大いに盛り上がって、
『甲子園よりも、神奈川県大会こそが一番好き』
というファンもたくさん抱えています。
昨年は全国的に注目された剛腕・松井の桐光学園をどこが倒すのかというのが焦点の大会でしたが、
今年はその松井をほぼ2年生のチームで撃破して、
ドラフト候補を多数擁して全国制覇を狙う王者・横浜の戦いぶりが焦点でした。
そして今年の神奈川大会は、
その横浜高校の”名参謀”としてチームを支えた小倉コーチ(元部長)の”最後の夏”、
そして東海大相模を強豪に育て上げた中興の祖・原貢氏が亡くなり、東海大相模がその弔い合戦に挑むなど、
たくさんの話題が満載の大会でした。
大会は前半から好試合が続きたくさんの話題もありましたが、
今年の場合『本当の勝負』は準決勝から。
第1試合が 向上 vs 横浜隼人
第2試合が 東海大相模 vs 横浜
という対戦。
この準決勝、
平日の11時開始であるにもかかわらず、
朝も早くからやってきたファンが球場をぐるっと取り囲むほど、
ヒートアップしていました。
第1試合は、
さながら≪取り組み日本一≫決定戦の趣き。
横浜隼人高校の素晴らしい野球部の取り組みは、
今や神奈川県を通り越して、
全国まで鳴り響いていくようになりました。
水谷監督に率いられた【雑草軍団】は、
県内最大の部員数を誇り、
今年は『野球の神様』が付いているような快進撃ぶり。
初戦で強豪の横浜商大をサヨナラで下すと、
桐蔭学園、桐光学園と難敵を撃破。
笑顔ときびきびとした試合ぶりでハマスタのファンを魅了して味方につけてしまうこの軍団は、
2度目の聖地に突き進んでいるように見えました。
対する向上高校。
こちらは1984年に決勝進出を果たし、
プロ野球選手も多数輩出するなどの昔ながらの強豪校。
しかしながら、
近年まではずっと低迷を続けており、
『神奈川10強』
からこぼれ落ちる位置にとどまっているという学校でした。
しかし近年、
若き名将ともいえる平田監督がチームの取り組み自体を変革させ、
徐々にチームを変身させてきてから戦績も上がってくるようになりました。
そして試合マナーや常に全力プレーなど、
『向上野球』
というものの確立がなされた今年のシーズン、
一気に春の大会でブレーク。
県大会で準優勝を飾ると、
勢いに乗って関東大会でも決勝まで進出しました。
そして第1シードという『追われる立場』で臨んだ夏、
序盤から毎試合の様に苦しい戦いを強いられましたが、
何とか振り切って準決勝まで進出。
この両校が激突した準決勝第1試合は、
『勢いのある横浜隼人が押し切るだろう』
とワタシはみていました。
しかしこの準決勝に来て、
ついに向上の”チーム一丸となった戦い”が結実。
序盤から横浜隼人を寄せ付けず、
5-2の完勝で決勝に進出し、
初優勝の『権利』を手繰り寄せました。
その見事な戦いぶりは、
勢いに乗っていた春の関東大会の時を思い起こさせます。
『監督を日本一の監督に』
が合言葉のこの軍団。
素晴らしく”いいチーム”です。
そして注目の第2試合。
全国的に注目された対戦は、
『神奈川球史に残る』戦いとなりました。
試合の焦点は、
『そこに至るまでどんなに素晴らしい試合を続けていても、横浜が相手になった途端”借りてきた猫”になってしまう東海大相模の戦いぶり』
の一点に集約されるとみていました。
特に横浜の左腕エース・伊藤投手に対しては、
昨夏、昨秋とほとんどヒットすら打てずに翻弄されていた東海大相模打線が、
この舞台でどう対処するのかということが注目されていました。
『横浜に先制されると、かなり厳しい』
と見ていましたが、
この日の東海大相模は、
何かが乗り移ったような【気迫満点の】試合っぷり。
ナインのテンションは、
最後の最後までMAXを保ち続け、
いつもクールな試合運びをする東海大相模らしからぬ、
見事な”気迫のこもった”試合をしてくれました。
2点を先制される苦しい立ち上がりになりながら、
すぐにその2点を追いつき、
じわじわと相手にプレッシャーをかけて点差を広げて行ったところは、
門馬監督『してやったり』の試合展開だったでしょう。
140キロ中盤を投げる3投手での継投。
見事なものでした。
しかしそれでも王者・横浜は9回2死ランナーなしから必死に追いすがり、
ヒット、ヒット、ヒット、四球で2点差にして満塁。
一打同点どころか逆転のシーンも演出して、
『オレ達が王者だ』
という矜持を見せてくれました。
神奈川の激闘の歴史の1ページを飾る、
『めちゃくちゃにレベルの高い』
一戦となりました。
最後のシーンは、
本当に鳥肌ものでした。
主将をはじめ、
多くの選手は校歌斉唱が涙でグシャグシャ。
それだけ苦しく、
そして嬉しいものだったのでしょう。
ワタシの感想としては、
『いいものを見せてもらった。やはり神奈川の高校野球はサイコー』
横浜高校は、
小倉コーチが引退して、
ひとつの時代が終わりを告げました。
今年は『全国制覇』を狙って作られたチームだったでしょうからショックもあると思いますが、
まだまだお元気で意気軒昂な渡辺監督の元、
更に強いチームを作って『神奈川の王座は譲らない』意地を見せてほしいと思います。
今後神奈川がやはり3強、4強(?)中心に進むのか、
それとも群雄割拠の戦国時代になっていくのか?
来年度からは更に興味津々ですね。
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~決勝~
東海大相模 13-0 向上
そして迎えた決勝戦。
東海大相模は2年生の剛腕吉田が先発。
対する向上は、前日150球以上を投げたエース高橋をリリーフでの”とっておき”にして、
鈴木翔が先発をして、このファイナルゲームは始まりました。
この決勝については、
前日の準決勝で宿敵・横浜を下して波に乗る東海大相模が、
存分に自分の力を出し切って圧勝しました。
特に先発した吉田は、
高校野球界の【新ドクターK】に名乗りを上げる奪三振ショーを繰り広げました。
150キロに届かんとする剛球に、
垂直にタテに落ちるスライダーを駆使して、
強打の向上打線にまったく付け入るスキを与えず。
合計の奪三振は20個と、
神奈川県の高校野球記録に並ぶ快投でした。
この吉田に青島、小笠原、さらに佐藤と剛腕を揃える東海大相模は、
”東の横綱”として甲子園に乗り込んでいきます。
春までどうしても心配の種だった打線がこの夏大きく成長。
穴の少ない戦力となり、
全国の舞台でも十分に頂点を狙える戦力だと思います。
ぜひ2度目の夏の全国制覇を狙って、
快進撃を続けてほしいと思います。
ということで、
今年も楽しかった【夏の神奈川大会】が終わりました。
去年は松井というスーパースターを、
浅間・高濱という次代のスーパースターが打ち砕いての決着でしたが、
今年は吉田という新しいスーパースターが出現。
毎年毎年、
『2年生のスーパースター』
が神奈川大会のキーマンになっています。
しかしながら、
あの松坂を擁して横浜が春夏連覇を成し遂げてから16年間も、
神奈川に真紅の大旗は翻っていません。
今年こそは何としても、
あの大優勝旗を神奈川の地に持って帰ってほしいと思っています。
190校が参加して行われた今年の神奈川大会。
189校の選手の流した涙の『重み』を背負い、
東海大相模に大活躍をしてほしい。
エールを送ります。
頑張れ~頑張れ~東海!!