息子からLINEが来ました。
毎日深夜まで研究室に籠って、この数か月の間、根を詰めてやっていた研究がやっとひと段落ついて…
教授から依頼されていた「新しい化合物の合成が完成したよ」と。
とても出来が良かったので、怖い怖い教授も、大変にお喜びの様子だそうです(笑)。
ただ、教え子への愛情は深いのですが、口では褒めないので有名な、ちょっと偏屈(?)な先生なので…
表情で「察する」しかないみたいですが。
息子が研究室に泊まり込む勢いで、朝方まで実験していると…
「何時までやってるんだ!お前まだ学部生だろ、早く帰らないと研究室を追い出すぞ!」
と言われてビビるみたいですが、院生の先輩たちはその言い方を…
「お前頑張ってるな!偉いぞ!」
という意味だと「翻訳」してくれるそうです。
息子は自ら「合成屋」と称していますが、漢方薬(中医学、日本のもの含む)に強い興味があって…
そちらの知識も深いので、西洋式の創薬と、漢方の知見をミックスしたところでアイデアを出すところが…
ユニークで面白いと、師匠にも思われているようです。
ちなみに大学院の実験棟は、23時だか0時だかになったら、全員退出しなければいけない決まりらしいのですが…
化学関係の実験をしている研究室だけは、中途半端にやめて帰ってしまうと、化学反応が暴走して…
発火したり爆発したりと、とても危険なことになる場合があるため、守衛さんが見逃してくれるそうです。
それをいいことに、化学合成をする研究室は「ブラック研究室」化しているところがちらほらあるようですが…
うちの息子の場合は、研究が他の何よりの楽しみでもある、という変人なので…
「残業」も「泊まり込み」も全く苦痛ではなく、むしろウェルカムなことみたいです。
「なんならアパートを引き払って、研究室に住みたい」と抜かしていました。
今彼らがやっている仕事は、国の資金が投じられて、産官学の三者共同で進めている重要なプロジェクトで…
やりがいがある一方、チームのひとりひとりの責任も重いようなので、プレッシャーもあることでしょう。
息子はいずれ日本を捨てて、生涯海外で研究を続けるつもりなので…
この仕事をやり遂げれば、一応、生まれた祖国への恩返しは終わった、という感じであるのかもしれません。
自分で作った下のスローガンは、今でも彼のアパートの壁に貼ってありますが…
国家や地域という枠組みを超えて、全人類的な視点で考えていることだそうなので。
まあ、あとは研究すること、勉強そのものがひたすらに好き、というのも大きいのでしょうけれど。
ときどき、ひとから…
「息子さんは勉強好きで感心ですね。どうしたら、子どもをそんな風に勉強好きにさせられるんですか?」
と訊かれることがあります。
息子の場合は専門の学問だけでなく、文系を含め、多種多様な学問に興味があるので。
実は、これだけは確実、という絶対の方法が一つだけあります。
それは「親自身が、勉強している姿を見せること」です。
子は親のやることをまねしますから。
親が勉強嫌いで、実際してこなかった場合、子どもにだけ「勉強しろ!」と言ってもぜんぜん説得力がないです。
あと、これは以前にも書きましたけど…
「なんで勉強しなきゃいけないの?」という質問に対して…
「勉強しないと偉くなれないよ」というのは完全にウソであって、子どもはウソを見抜きますから、だめです。
そもそも「偉くなる」ってなんだ?というのも、無意識のうちですが、子どもは感じています。
「偉い」というのを、人前で威張れることとか、お金持ちになることとか、そんなバカげた説明したって…
逆に、子どもに心の中でナメられます。
それに、一杯勉強しないとお金持ちになれないとか、そういうのがウソだというのは、分かり切ったことです。
現に見てください。私なんか死ぬほど勉強しましたけど、この年になって貧乏ですよ!笑
学校で習う勉強なんかしなくたって、いっぱい稼いでいる人がごまんといることは、大人が知っているでしょう?
基礎的な学問は、世の中に出て「人にだまされないためにするもの」だというのは、正しい説明ですが。
世の中には、ニセ経済学、ニセ政治学、ニセ法学、ニセ歴史学、ニセ科学、エトセトラが満ち満ちていますから。
でも「人にだまされない」は最も基本的な知識についてであって…
それ以上深く勉強することには、ひとそれぞれに、理由と意義があるはずです。
そこは、自分自身で見つけ出して行くものだと思います。
まず、親が勉強して見せる……これをすれば、一言も「勉強しなさい」と言わなくても子どもは勉強します。
逆に、強制すればするほど、子どもは勉強を嫌うようになります。
私の場合は、常に学び続けることが必要な仕事をしてきましたし…
妻も仕事の関係上、さまざまな資格試験に挑戦して、しょっちゅう勉強していました。
そして、できれば親が「楽しそうに」学んで、その成果を家族だんらんの場で話し合えば…
学ぶことの面白さ、学問の楽しさを、家族みんなで共有することになります。
息子の場合は、そういう環境で育ったので、小さい頃から自分なりに「勉強」「研究」に興味を持って…
それを発展させてきました。
ただ、小学校4~5年生ぐらいまでは、歴史と地理、そして哲学と宗教に一番興味があって…
「世界遺産検定」などというものを、自分で見つけて受けて、3級ぐらいまで取っていました。
突然理系に方針を転換したのは…
本屋で偶然『毒物雑学事典』(ブルーバックス)というものを見つけて…
祖父にねだってそれを買ってもらい「薬物と毒物は実は同一」「全ての薬は毒でもある」ということを…
偶然知って、なぜかそれに興味を引かれて、薬のことに興味をもったのがきっかけでした。
あとは、中学の理科の先生が素晴らしい方で、その薫陶を受けたのも大きかったです。
苦手だった数学も「薬の研究をしたい」という興味と熱とで、頑張って克服しました。
ただ、今だに唯一、彼が苦手なのが「手計算」です。「数学」ではなく基礎的な「算数」ですね。
これは、小1から小2にかけて「く〇ん」の教室に通わせて…
そこで、たくさんの量の計算を、意味も分からずさせられて、計算が嫌いになってしまったことが原因です。
すべての「く〇ん」の教室がそうだとは限らないのですが…
あれはフランチャイズ制で、それぞれの教室の先生の資質で、効果が天と地ほど違ってしまうようですね。
つらいと言ってくれたらすぐにやめさせたのに、親に気を使って、彼が我慢してしまって。
それが尾を引いて、今、研究室では手計算などあまりしないので大丈夫なのですが…
ペーパーテストや、大学の口頭試問での試験で(息子の大学ではこれもあるようです)…
いまだに、小学生レベルの単純な足し算引き算を、ミスしてしまうことがあるようです。
あらゆる勉強の中で、ただ一つ強制された「手計算」だけが苦手になったという、恐ろしい話。
これ、一種のトラウマみたいなものなので、一生治らないのではないかと思います。
学びに限らず、子どもに対する「無理強い」が、いかに大きな害になるか、よくわかります。
それ以降、高校受験準備のとき、苦手部分の補修のため、自発的に近所の私塾に通うまで…
息子は小中学生時代、塾や進学教室には一切通いませんでした。
その代わり、いまどきの子には珍しく、広い公園などで暗くなるまで草野球をしたりして…
思い切り遊ぶ子ども時代を過ごしました。
子ども時代に、きちんと遊ぶことをしておくのは、とても大事です。
その時間を奪われてしまうのは、将来、いろんな弊害のもとになる気がします。
また、息子の公立小中学校の学区は、山の手的な地区と、下町的な地区とが混在している場所だったので…
家庭環境や、親の職業、所得、国籍など、本当に多種多様な友達と付き合えたのも、いいことだったと思います。
そうした部分で「単一的」な環境で過ごすと、社会的な視野が狭くなってしまいますから。
たとえば学費の高い中高、あるいは小中高一貫教育の私立などに通うと、そうなりがちな気がします。
このブログを読んでおられる方の多くは中高年の方でしょうから…
もう子育ては終わった方がほとんどだと思いますが…
まだ子育ての最中の方や、お孫さんがいらっしゃる方は、参考にしていただけたらと思います。
なんだか、また親馬鹿の息子自慢みたいになってしまって、すみません。
でも、勉強を無理強いされることで可能性を潰されてしまう子が、一人でも少なくなってくれればと思います。
今日のおまけ動画です。
また、ゆいかおりデビュー当時のものです。
唯さん14歳、夏織さん16歳のころ。
ではどうぞ。