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シン・ゴジラの感想

2018-05-08 01:23:49 | エンタメ

この映画は怪獣映画の体をなした災害映画なのだと、そんな風に思えてきました。だからこそ感じるリアリティや恐怖があるのかもしれません。実際に震災などを体験した人たちにとっては身につまされるような痛々しさを感じるのではないでしょうか。こういう描き方は悲劇として古来から大衆娯楽の本質ではあったのですけどね。

日本の風土だからこそ「ゴジラ」のような映画が生まれ、国民に愛され続けるのだと思います。外国人には理解しにくいと思います。

映画「シン・ゴジラ」の BD を観ました。初見です。面白かった。

ツタヤで旧作扱いになったので 100 円で借りてきたのですが、今まで事前情報は入れず、前評判なども一切聞かずにいました。正直そこまで興味がなかったわけです。ただ「ゴジラ」は子供のころから知ってるし、そんなに嫌いではないので、機会があれば観てみようと思う程度です。

先週は占いのお仕事が立て込んでおりまして、2 時間もの BD を見る時間がなかなか作れなくて返却予定日の直前になってまだ観てないことに気づき、慌てて深夜遅くに観始めたのでした。おかげで眠くて頭がぼーっとしているときだったので細かいところまでしっかりと観ることができず、観終わってから後悔しました。こりゃ1度観たきりじゃ理解しきれんと。2,3 回繰り返し観たいと思いましたがもう時間と体力がないのであきらめて返却してしまいました。

鑑賞してみて驚きました。それまでのゴジラの先入観を覆されるとんでもない作品でした。悪いところもたくさんあるのですが、全体として観ると「近年まれに見る名作」と言ってよいほどの素晴らしい出来栄えの映画でした。

ある意味では過去のゴジラを超越し、過去作を冒涜するくらいの破壊的で挑戦的な作風なのですが、それでいて実は過去作のリスペクトやオマージュに満ち、オリジナルの精神を完璧なほど忠実に現代風に再構築したような、伝統的で古風な作風でもあると感じました。

簡単に言うと、見た目の意外性に反して中身は完全に私たちの知る「ゴジラ映画」でした。

つまり、真逆の矛盾したもののせめぎあいの中で見事に一つの作品を作り上げたような感じです。狙ってそういうものを作ろうとしていたならすごいことだし、意図せずできてしまったというならもう天才としか言いようがありません。クリエイターとしては最高の仕事をしていると思います。

ただ、オリジナルの雰囲気はものすごく上手に表現しているのですが、どうしても「ファンメイド」な印象もぬぐい切れていませんでした。過去作を「神」のごとく崇拝する熱狂的な信者が作った「ゴジラ」みたいな感じです。だからこそタイトルも「神・ゴジラ」になっているのでしょう。ちょっとオタクっぽいですよね。

それはいい意味で古くからゴジラを観てきた私たち世代(40代~60代くらいかな?)を納得させ喜ばせることができる作り方ではあったと思います。そういう意味ではものすごく「保守的」でもあるのです。

しかし、多くの人はこの映画を観て「保守的だ」なんて思わないかもしれませんね。ド派手な演出で、クリエイターとしてやりたいことをやりまくってるようなめちゃくちゃな映画のようにも見えるかもしれません。確かにそういう部分もあるのです。そういう部分の完成度は高いものの、逆に幼稚に見えてしまったりね。批判されるのはそういう部分かもしれません。

もしかしたら、ゴジラを知ってて観るからなんとなく納得できただけであって、過去のゴジラを知らない世代が観たら、ド派手だけどなんだかよくわからない怪獣映画だなと思ってしまうのでしょうか? あるいは、私よりも熱心なゴジラファンの人が観たらやっぱり納得できない内容なのでしょうか? いろんな意味で微妙な立ち位置にある映画なのかもしれません。私のようなちょうど中間くらいの目線で観るのがちょうどよかったのかもしれませんね。

たくさんの登場人物が演じるドラマパートは今時のテレビドラマ風味でちょっと安っぽい感じもしました。作りこんでいるのはわかるんですけどね。いろいろとちぐはぐな感じがするのです。

リアリティのある演出をしているだけに、少しでもリアルではないと感じる部分があると「それは違う」と突っ込みたくなってしまったりするわけです。でも、そこでふと「これは怪獣映画なんだ」と我に返るとぎりぎりセーフで許せるわけです。怪獣映画なんだからまじめに観たってしょうがないじゃん……という感じで。

その辺のバランスがあまり上手ではないと思ったのですが、後でこの映画のキャッチコピーを見たら「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」と書いてあって、もう完全に作り手の罠にはめられてしまっていたわけですね。「やられた」としか言いようがありません。

ほとんどの登場人物が妙に早口で違和感を感じました。意図的にやってるなとは思ったのですが、その意図はよくわかりませんでした。たくさんの情報を一気に詰め込もうとしていると考えるのが普通でしょうが、ただそれだけなんでしょうかね。あまりに不自然で、不自然だと感じさせること自体が目的のようにも見えました。現実とはちょっと違うファンタジーの世界観を意図的に作り出そうとしているような。そういう、いかにも「世にも奇妙な物語」的な演出はあまり好きになれませんね。「怪獣映画」なんだからそれでいいはずなんですが……。

(どうもあれはリアリティを追求した結果なのだそうで、意図的に奇妙さを演出したわけではないようです。結果的に奇妙に見えてしまったわけですが。)

早口なので深夜にぼーっと観ている私の頭にはほとんど入ってきませんでした。一度観ただけじゃ理解しきれないなと思う要因の一つではあるのですが、そうやって何度も観させる(映画館に足を運ばせる)というのも作り手の意図なのでしょうかね。金儲けの手法の一つではあるでしょう。

前半に総理大臣を演じた大杉漣さんはいい味出してましたね。生前はあまり役者としては注目してなかったのですが、こうして見ると実にいい俳優であったと思います。

先週観た「貞子3D」にも出ていた石原さとみさんがここでも出ていました。彼女つながりでこっちも観てみようと思ったわけではなく、偶然なんですけどね。彼女の出演している作品もあまり観たことがなかったのでちょうどいい機会でした。

やっぱり今作でもくちびるおばけでした。2年前に公開された映画なので最近ですよね。整形とかせずにそういうキャラでこれからもずっとやっていくんでしょうかね。そうであってほしいですけどね。美人は完璧であってはならないのです。どこかにそういう醜い部分があるから魅力が引き立つわけですからね。整形したがる人はせっかくのそういう魅力をわざわざ取り去ってより美しくなろうとするのですが、そういう考え方は間違ってます。魅力を消して美しくなっても意味ないと思うのです。

彼女の今作の役柄はかなり特異なものであって演じるのは難しかったとは思いますが、観ているこっちもひやひやしました。日本人が外国人のふりをして無理して英語とかしゃべらんでほしいですよ。外国人が見たらどう思うのかと思うと恥ずかしくなってきましね。

政治的・外交的なネタをディープに扱ったドラマでもあったのですが、いろいろと難しいですね。日本の政治家たちの演じる部分はどこまでリアルでどの程度が虚構なのかよくわかりませんが、無理してリアルに作ろうとしているなとは思いました。おかげで政治ドラマを観ているようで、完全に子供向けではない映画になっていました。子供の目線で観たら全然面白くない映画ですよね。ゴジラなのに……。

ドラマ部分をもうちょっと短くシンプルにできたら怪獣映画として子供にも観れる内容になったかもしれませんが、さすがにちょっとやりすぎてますね。子供は完全に切り捨ててる感じです。

外国人、とくにアメリカの人が観たらどう思うんだろうかと感じる部分もたくさんありました。私たち日本人からすれば普通のことでも、あっちの人たちからするとあまりいい気分がしなかったり。下手すると、反日感情を煽るような危険な綱渡りをするような内容だと思いました。映画なら許されるレベルなのかな? よくわからんです。

ただ、1つだけものすごくいいと思ったシーンがあります。がれきの中である人物が一人だけ、犠牲者に対して手を合わせる(合掌する)シーンです。ほんの一瞬、あってもなくてもいいような、意味も分からないどうでもいいシーンに見えるのですが、そのシーンがあるおかげでほっとするし、この映画全体をぎゅっと引き締めるような一番大事なシーンにも思えるのです。

手を合わせる日本人の自然なしぐさ。すごくいいんです。あちこちでそういうシーンが乱発されるとやりすぎだと感じて冷めてしまいますが、1シーンだけさりげなく出すところが自然でいい。外国の人が観ても印象に残るのではないでしょうか。日本人よりも外国人の方が感動するかもしれません。(いや、やっぱり日本人にしかわからない感覚なのかな?)

もともとジャンル的には恐怖映画にも属するものであったわけですが、怪獣映画ということで娯楽作品であり、みんなで楽しめる映画として観るわけですよね。しかし、この映画は想像以上に恐怖映画でした。まさかゴジラでここまでの恐怖を感じさせられるとは思いもしませんでした。度肝を抜かれました。

全編通してというわけではないのですが、あるシーンで一瞬だけものすごい恐怖を感じる場面があったりするのです。ホラー映画とかを観ていても感じないくらいのかなり強烈な恐怖感です。今時ここまでの恐怖を演出できる作り手が日本映画界にいたとは意外でした。

先週観た「貞子3D」で感じた失望感とは全く逆の印象を受けました。日本人でもまだまだこんな怖くてすごい映画を作れるんだなと。

映画として完璧じゃありません。そこまでよくできた作品とは言いません。でも、大人になったら一度は観ておくべき名作だと思います。子供が観たらトラウマになって下手したら精神崩壊してしまう恐れがあるので観せない方がいいですね。いや、子供には観せちゃダメです。いろいろと分別がつくようになった大人なら観ても大丈夫でしょうし、その良さも理解できるかもしれません。