映画「トランスフォーマー/ロストエイジ」の BD を観ました。
CG で描かれたロボットがたくさん出てくる実写映画です。
3時間くらいの長編映画でしたが、面白くありませんでした。
CG の映画って記憶に残りにくいし感動も薄いんですよね。先日観た「スターウォーズ/フォースの覚醒」とは正反対の印象です。
なんでかなぁっていろいろ考えてみたんですが、思いついた理由はいくつかありました。
CG で描かれたロボットはものすごく細かいところまで描かれていて、最新の技術は架空のロボットがまるで現実にそこにあるかのようなリアルな描写を実現していることはよくわかります。確かに綺麗ですよ。
でも、その細かくてリアルな描写こそが逆効果になってるんですよね。
リアルな CG でもシンプルな描写なら印象に残りやすいものもあります。例えば「宇宙人ポール」なんかはそれほど複雑ではないので記憶に残りやすいのだと思います。(昔のエイリアンは造形が複雑でしたが印象的でしたね。あれは CG ではありませんが。)
昔の8ビットのレトロゲームなんかもドット絵が荒くて雑なつくりにも見えますが、そういうゲームの方が記憶に残っていたりします。最新の何千、何万という高精度のポリゴンで描かれたリアルなゲームは美しさに「関心」はしますが「感動」の度合いは薄いような気もします。なんか冷めてしまうし、記憶に残りにくいのです。
それは、あまりに情報量が多すぎて人間の脳では処理しきれないからではないでしょうか。
例えば手書きのアニメとかは、実はそんなにリアルに描かれているわけではなくて、必要な情報のみを残してかなりの部分を省略して描かれています。ドラえもんの「まる描いてチョン」の極意です。そうやって不要なものを省略することで必要なものだけを視聴者に伝えることができるわけです。だから漫画は面白いと思えるし、感動もするのです。
ところが高精細な CG で描かれたアニメやゲームは視聴者にとって不要な情報まですべて描きこまれてしまいます。だから視聴者は何を見て良いのかわからなくて混乱してしまうのです。
CG で描かれたものがバケツやカバンのような日常の中にあるものであればまだ脳内での処理も追いつく可能性もありますが、トランスフォーマーのようなこの世に存在しない見たこともないロボットの場合にはすべての情報を脳内で処理しなければならず、情報過多で必要な情報が記憶に残りにくくなってしまうのです。
CG のトランスフォーマーという映画の感動が薄いのはそういう理由なのだと思います。
幸いにしてこの映画には実写パートも多いので、そういった部分が救いにもなっていますが、そもそもの主役のトランスフォーマーが薄れてしまっているのでは意味がないでしょう。
昔、手書きのアニメと実写を合成する不自然な映画が作られたこともありましたが、その方がまだ CG との合成よりましだと思えてしまうくらいです。
技術の進歩は歓迎すべきことではありますが、まだまだその使い方は上手くいっていないわけで、なぜうまくいっていないのかということには気づいてもらいたいですね。そうでなければ、良い作品は決して生まれないでしょうから。