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本能に訴えかける白黒映画「ゴジラ」(1954年)

2021-08-17 00:35:16 | エンタメ

DVDで「ゴジラ」を観ました。1954年に公開されたゴジラシリーズ最初の作品です。

ここしばらくMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)を順番に観ていて、ようやく一通り観終わったところです。確か、スパイダーマンのファーフロムホームとかその辺りまで。MCUはどれも面白かったのですが、あえてレビューを書かずに、ただひたすら観ることを楽しみました。というか、「消化した」という感じかな。たくさんありすぎていちいち感想を書いてるのめんどくさかったのです。

さて、久々にMCUの呪縛から解き放たれてTSUTAYAで手にした映画は「ゴジラ」です。1954年の第1作は昔観たことがあるようなないような、記憶があいまいで、実際に観てみても過去の記憶は思い出せなかったので、たぶん今回が初めてだと思います。作品自体が有名すぎてなんとなく観たことがあると思い込んでいただけかもしれません。それか、単に忘れていたか……

この第1作目のゴジラは意外と観たことがないという人も多いかもしれませんね。

白黒の作品ということでその古臭さからか興味をそそられにくいということもあるかもしれません。

白黒の映画なんですよ。

ただ、その当時の技術としてカラーで映画が作れなかったというわけではないと思うのです。どういう意図で白黒になったのかはわかりませんが、白黒であるおかげでこの映画の魅力が最大限に引き出されたと思います。

このゴジラの魅力は白黒にあるんです。カラーじゃダメなんです。

白黒ってのは単に古臭さとかノスタルジーとか、そういう安っぽい演出ではありません。白黒であること自体が重要な効果となっています。

白黒にすることで、ゴジラの「恐怖」が浮き彫りになり、視聴者の心にダイレクトに伝わるようになります。

なぜ白黒の方が恐ろしいと感じるのか?

白黒というのは光の強さで映像を表現するものです。光が強い部分は白っぽくなり、弱い部分は黒っぽくなります。

人は闇を恐れる生き物です。明るいか暗いかということが恐怖を測るバロメーターとなっているわけです。

そこに色の情報は不要であり、むしろ色彩は明暗の情報を弱めてしまいます。情報が多いほど映像の正体が明確になるので恐怖が薄れてしまうわけです。

そこに何があるかよくわからない。でも、何かいるぞと感じることが恐怖となります。

人間の本能に訴えかけるわけです。

そりゃ怖いですよ。

現代の高度な技術で映像化されたホラー映画は見慣れてしまうと全然怖いとは思えなくなってくるものですが、白黒の昔のホラー映画は今でも怖いと感じるはずです。

白黒というのは単に技術が劣っているというわけではありません。

生物のより原始的な本能に近い部分を刺激する感覚が白黒(明暗)の情報なのです。

理屈ではなく本能で感じる恐怖。

それが白黒映画の恐怖なのです。

「ゴジラ」の映像は白黒というだけでなく、今から67年も前の技術でありながら、それを感じさせないほどのとても素晴らしい物でした。

映像だけでなく、音楽も素晴らしい。

ゴジラの音楽はこの第1作目で完成されていました。世界に誇れる素晴らしい音楽です。実は、ゴジラの音楽に興味があったというのもこの第1作目を鑑賞する動機になっています。あのおなじみのサウンドは果たして最初からあったのか? ええ、それはこの第1作目で完成されていました。

咆哮や足音の効果音もこの時に完成されています。

ゴジラは着ぐるみだからこそ出せる質感も人形やCGとは違う味わいがあって好きです。生きた怪獣がそこに実在すると思わせるのは着ぐるみだからこそだと思います。

そして、ストーリーや演出も素晴らしいと思います。

役者さんの演技もちゃんとしてます。(特撮物の役者さんってなぜか大根が多いという印象がありますが……)

乙女の合唱は単なる演出を超え、もはや言葉になりません。

古くて劣っていると感じさせるものは何もなく、現代になってもなお評価の揺るがない完成度の高い作品だと思いました。

もはや芸術品のレベルです。昔の古い映画ではなく、芸術作品を鑑賞するつもりで観てください。

100年経っても、いや1000年経ってもその時代の人たちを感動させられる映画だと思います。

これ以上ない恐怖。これ以上ない感動。それが「ゴジラ」にはあります。後年のカラーになってからのゴジラからは失われてしまったものがそこに在ります。

DVDの画質はあまり良くなかったのが少し残念ですが、最近になって4Kリマスター版が出たとかいう情報もどこかで見かけたので、ぜひとも綺麗な画質で観てみたいですね。

カラー化など余計なことはしなくても良いのです。

67年前に劇場で公開された当時のままの画質で観てみたいものです。


インターネット社会の現代、情報が過剰となり、人々は昔よりも賢くなったつもりでいるかもしれませんが、情報が増えれば増えるほど本能的に感じられていたものをどんどん失ってゆき、人間らしさも失われてゆくでしょう。

白黒映画を観て、余計なことは考えずに、ただ感じてみてください。

そして、人間らしい感覚を思い出してください。