5 Nice vous rencontrer to.Risa

野上先生にお返事して5日目。
学生課の前を通りかかったら いきなし野上先生に呼び止められた

『おーい。小泉さーん。』
『は…はいっ!!。』

あんまりにもびっくりして持ってたテキストを落としたんはある意味お約束(笑)
野上先生は　マッハの勢いであたしに近づいてきて息も切れ切れに言葉を吐いた。

『小泉さん。あのねビックニュース…相沢くんがーーー。』
『相沢？』

あたしの欠点。顏見て知り合った人以外の名前はいまいち覚えれん事。
一回顔見てお話したら忘れんねんけど…
大谷には『おまえはわんこか(笑)匂いで覚えとるんちゃうか？』なんて笑われるけど
この際　そのことは　こっちに置いてっと…

『もぉ　ほら就職のお話。一昨日履歴書送った東京の…』
『un rêve？の？相沢…社長。』

『そう　あの相沢よ♪』

昨日の夜un rêveの相沢社長から野上先生に電話で連絡がきたらしい。
連絡までには1週間から10日かかるって言われてたからちょっとびっくりした。
もしかしたら『もう決まったんだよね　ごめんね』とかかもしれん。

で　スタイリストは募集してへんけどとりあえず警備員にとかやねん。
絶対そうや　それがビックニュースやねん。

やっぱしあたしには貧乏神か就職できひん神がついとるんかも…
オール巨人がスタイリストなんて笑える(笑)
お前はオール阪神とコンビを組んで大阪のお笑いの星めざすんやって事やねん

野上先生は挙動不審に頭を抱え唸るあたしに笑顔を向けてきた。

『小泉さんの履歴書とついでに実習のビデオ送ってみたのよ♪
　　そしたら今出張で大阪にいるから今日夜に逢いたいって電話があったの（笑）』

『ビデオ？』
『うん。小泉さんを知ってもらうには　それがベストだと思うのよ♪』

ベスト？

野上先生は　あたしの人となりを少しでもわかってもらおうと送ったらしいけど
たしか実習のビデオって…失敗ばっかしてへんかったっけ？
なんか撮影されてると思ったら　ついつい…失敗して(泣)

『今日逢いたいって…それって面接って事。』
『まぁそうなんだろうけど　相沢君相手にそんなに緊張しなくてもいいと思うわよ。』

野上先生は　そうゆうけど謹聴せえへんなんて絶対に無理!!


『あと　その…面接以外に筆記試験とか…』
『ないない。(笑)あなたの成績と作品データも送ったから追加の試験なんてないわよ。』

相沢社長は　実物(リアル)の小泉リサと話して本採用かどうかを決めたいらしい。
どんな夢と信念を持ってスタイリストになりたいのか本人に確かめたい。
野上先生の目は信用しているけど資料だけで『はい合格』にはできひんらしい。

『それで本当は私も同席したいんだけど相沢君が2人きりがいいって…』
『大丈夫です。あたし頑張りますっ!』

『頑張ってね。』
『はいっ』

小泉リサ　スタイリストへの足掛かりの為頑張りますっ
だから　大谷　草場の陰でみてて
(オレは死んでへんぞ縁起わるいやっちゃ　ｂｙ大谷)

★★★

相沢社長が指定してきたんは天王寺に新しく作られた商業施設のとあるお店。
(お豆腐メインの懐石料理のお店)

♪かぽーーーーーーーんっ　かぽーんっ♪

『これってこけら落としってゆうんやったっけ…』

ようドラマで見る　高級料亭に出てくる竹でできたもんを目の前にして
あたしの緊張はMAXを向えた。
(あとで大谷に聞いたら　それ獅子脅しやって笑われた)

待ち合わせの時間少し前に行ったのに…

仲居さんに案内されたお部屋には　すでに相沢社長が来て座ってた。
えっ？たしか待ち合わせって19時半やったよね？
こっそりと携帯で時間確認したら19時15分。

やっぱり仕事してる人はちゃんとしてるんや。
ぼーっとしてしまったあたしに相沢社長がとりあえず着席してと笑った。
相沢社長は　すっと…慣れた手つきで名刺を差し出すと

『はじめまして　小泉リサさん。un rêveの相沢幸一です。』

と挨拶。それがあまりにもスマートやったから緊張で言葉が横滑りしてしもた。

『あたしは　小泉リサで…ガス。』

『ぷっ…ガス？』
『えっと　ちゃうんです。ですです…です。』

相沢社長の印象は　しゅっとしたオトコマエ（大阪では誉め言葉）

さすがデザイン会社の社長ってだけあってもうおしゃれやねん
年は30歳ぐらいで　ＥＸＩＬＥのタカヒロみたいな感じの人でいわゆるイケメン。
(けど大谷のんがかっこええもーん♪)

それよりあたしって奴はなんなんよー。
そのガスって…　穴があったらもぐりたい!!!
相沢社長は　笑い上戸なんか暫くは笑いがとまらんって横隔膜痛いって(泣)

5分ほどして　やっと本題へと話が進んだ。

『小泉さん　野上から君のいろんな資料貰ったよ。』
『えっと実習ビデオとか…』

『そうそうアレは面白かったよ（笑）』
『おもしろいって…』

おもしろい実習ビデオって…もしかして

運針してて指刺して『ちぃーとまらーんっ』とか…
いや…バザーに出すもん作ろうとしたコースターがひとでみたいやったとか…
アイロン掛けして布に穴とか…

あかん。なんもええの浮かばん

『まぁ内容は別として(笑)　君はなんにでも一生懸命で面白い女の子だなってね。』
『おもろかったですか？』

『はい。ヘタな吉本芸人より面白かったよ』

だからそのおもろい実習ビデオってなんなんやー野上先生と心で叫んだ。

ところで…

コホンっと1つ咳払いして相沢社長が一つ質問してきた。

『小泉さん　君は絶対にスタイリストになりたいの？』
『はいっなりたいです。』

相沢社長は手もとに置いた履歴書と本人を見比べて『もったいないなぁ』って呟いた。

『君なら身長を生かしてモデルとか？ほらお笑いモデル(笑)』
『お笑いからええ加減離れてください。それに…それは絶対ないです。』

ちっこいときから吉本行けとか　身長あるんやからモデルになんて言われてきた。
最初はあたしもそれもええかもって軽く考えてたけど　絶対に無理向いてへん。

『どうして？絶対にないなんて？』
『実は　あたし高校の卒業前に一度モデル体験したんです。』

『そうなんだ？それなのにダメって　よかったらその話聞かせてくれるかな？』
『はい。けど　別におもろくないですよ？』

『はははは　そうかどうか聞いてみないとね(笑)』
『えっとですね…』

それは高校の卒業前のお話
あたしは　大谷とのデート中モデルの美々ちゃんの撮影現場に出くわした。

美々ちゃんは普段生意気な中学生やのにカメラのシャッター音聞いた瞬間
プロのモデルさんの顔に変身する。
それって凄いパチプロやーーなんて見学してたらトラブル発生

美々ちゃんと一緒に撮影するはずだった読者モデルの子が来なくて
背が無駄に高いあたしは　モデルのピンチヒッターをやる事になった。

あたしをガーリーにしてくれたスタイリストさんの中原さんは必殺仕事人
あたしは大谷も惚れ直すほどのガーリーになった。

中原さんの仕事ぶりにめっさ感動してあたしもこんな仕事に就きたい
一人でも多くの女の子を　あたしが選んだ洋服で綺麗にしたい

それが始まり

『その時　スタイリストって仕事に就きたいって思ったんです。』
『ブラボー!!』

相沢社長は大げさに拍手喝采してきた。
なんかめっちゃこそばい(笑)

『そっか　そうなんだ…。小泉さんはしっかりと夢があるんだね　感動した。』

感動したは大げさやけど(笑)　そうあたしには夢がある。
スタイリストに1日でも早くなって女の子を綺麗にしたい
その為には　このチャンス逃したくない
東京でもどこでもいって頑張りたい。

その事を大谷も応援してくれてる。
だから　待ってるだけやなくて　自分からチャンス掴みたい。

『…　だからあの…相沢社長あたしをun rêveで働かせてください。』

唐突にお願いして深々とおじぎをすると　相沢社長が頭を上げてってポーズをした。

そして…　

『合格。小泉さんを採用するよ』
『えっ？』

合格？
そんな簡単に決まってええん？もしかしてやっぱり警備員とかお笑い要員とか
おもろいって言われたからそうかもしれん。

『そんな不思議そうな顔してボクを観ないで（笑）実はボク君に一目惚れなんだから』
『一目惚れ？』

誤解しないでね　
そう前置きして相沢さんは指のリングをあたしに翳した。

『一応ボク妻帯者だから（笑）そういう意味の惚れたじゃないから…』
『あー』


もしそっちの意味で惚れられてのコネ入社やったらあたしムリやもん(笑)

『改めて　un rêveへようこそ　小泉リサさん。』
『はいっ。あたしがんばりますっ』

相沢社長との出会い
あたしの夢の扉が開いた瞬間やった。

手酌でビールの相沢社長から瓶を奪って御酌なんてしてみた。
ほろ酔いの相沢社長はさっきにもましてご機嫌になった。

『ところで　ここからは無礼講（笑）小泉さんってこっちに彼氏いるんだよね…』
『ぶっ…（野上先生そんな事までゆったん）はっ　はいっ１人いてます。』

彼氏は1人で十分だと思うよ。
そういわれて無駄に顔が赤くなって火が飛び出る。

『本当にかわいいねえーその反応。でその1人の彼は東京就職なんて言ってるの？』
『おおた…ちゃう彼はこのチャンス逃したらあかんぞがんばれって…。　』

『そしたら期待裏切らないようにしないとね（笑）』
『はいっ。』


東京本社で最低２年働いてもらって大阪に空きがでたら異動予定だからね。

けどボクが離したくなくなったらわかんないけど（笑）
相沢社長はそう言って笑った。

とにかく就職決定やーーー