投資家の目線

投資家の目線59(これもホリエモン効果?)

 7月23日、業界第1位の王子製紙は業界第6位の北越製紙にTOBをかけることを発表した(29日に増資撤回条件にTOB凍結提案も報道される)。敵対的TOBとも報道されていたが、素材セクターでは鉄鋼会社ミタル社のアルセロール社買収という世界的な再編劇の影響もあろうが、国内的には昨年のライブドア社のニッポン放送買収の影響もあるだろう。あの事件の発生が、現在の日本において敵対的買収の違和感をなくなったのは間違いないだろう。
 しかし、今回の北越製紙の行動には少々疑問に思われる点がある。
1.同社の05年度末の1株当り純資産額(BPS)694円に対し、三菱商事には607円で第三者割当増資を行う。しかも、6月28日の発行済株式数164,052,054株に対し、50,000,000株と約30%も株数が増えることになる。今年の株主総会で2.6億株から4億株へ、設備投資に伴う「資金調達面での機動性を高めるために、発行可能株式数の増加」を定款変更する旨ニュースリリースがされていたものの、東京証券取引所でも上場制度改善のため意見募集がされていた株主総会決議を経ない「大規模な第三者割当、MSCBの発行」(本年4月24日分参照)であり、そのような議論のある中での今回の大規模な第三者割当増資の決定には大いに疑問が残る。大きな話題になった日本航空はいうに及ばず、大型増資を発表した銘柄の先週末28日の終値は7月11日発表の明治乳業で793円→695円(▲12.4%)、7月13日発表の三菱電線工業は172円→161円(▲6.4%)とTOPIX(それぞれ▲1.66%、+0.54%)に比べて大きく下がっている。北越製紙の場合もTOBの話がなければ株価の大幅下落は避けられなかったのではないか?
2.日本経済新聞(7月26日)によると、王子製紙会長が北越製紙社長に持株会社方式による統合協議を持ちかけたのは今年3月からと報道されている。そうであれば6月の株主総会に買収防衛策の導入を問うこともできたはずである。昨年の夢真による日本技術開発のTOBの判例があるものの、なぜ株主総会の決議も経ずに7月19日に突然買収防衛策導入を発表したのであろうか?

 1株当り純資産額は資産の時価から計算されたものではない。しかし、時価会計導入により現在の企業の解散価値に近づいている(含み益があればそれ以上の価値がある)と考えられる。株価が1株当り純資産額未満ならば、買収者側は少ないリスクで企業買収が出来ると考えるだろう。自社を買収されたくない経営者は、少なくとも株価純資産倍率(株価/1株当り純資産)が少なくとも1倍を超えるよう、IR等いろいろ考えるべきだろう。

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