投資家の目線

投資家の目線771(特別定額給付金の申請)

 1人あたり10万円の特別定額給付金の申請が始まった。

 免税店デューティー・フリー・ショッパーズ(以下DFS)の共同経営者チャールズ・フィーニーを扱った「無一文の億万長者」(コナー・オクレリー著、山形浩生、守岡桜訳 ダイヤモンド社)には、DFSの所有者の一人であったトニー・ピラロの「考え方は二つあります。その人が政府に税金を払い、政府がそのお金を使うこともできる。たぶんチャックもわたしも、アメリカ政府はこうした金を使うのに最も非効率な組織だという点で合意するでしょう。だからそれを自分に与えて、それを自分の好きなように自分の慈善目的のために使い、政府よりも高い投資収益性で投資できるなら、世界のためにももっと貢献したことになるわけです」(p373)、友人で慈善団体アトランティック財団の諮問議会のメンバーであるチャック・ロールスも「チャック・フィーニーは税金が大嫌いです。誰でも政府よりはお金を有効に使えるとかれは信じていました」(同)という発言が書かれている。

 確かに政府がやるべきことはあるものの、不衛生な不良品も混じっていた「アベノマスク」(一世帯二枚の布マスク)に466億円を使うなら、個々人にカネを配った方が有効なカネの使い方ができるように思う。

 「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」(一橋文哉著 新潮社)に、グリコ・森永事件で、警察がある組織を調べると「政界や文化人の中に支持勢力を持っていて、すぐに捜査に対して抗議や圧力をかけてくる」(p204)という記述がある。かつて、野中広務元官房長官が在任中の『1998年7月から翌年にかけ、首相官邸の機密費を首相や自民党の国対委員長のほか、「言論活動で立派な評論をしておられる人」にも配った』(「主張/野中氏機密費証言/世論の買収を究明すべきだ」 2020/5/25 しんぶん赤旗)こと証言していた。アベノマスクで公表されている興和など4社からの調達額は100億円に満たず、残りの額の使い途はわかっていない。裏ガネ化して世論対策に使われるかもしれない。

 補正予算の感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発の中に戦略的広告費として100.4億円が計上されている(「令和2年度補正予算(案)の概案」 令和2年4月 内閣府)。安倍政権は検査よりマスコミ対策に熱心なようだ。そんなものに税金を使われるぐらいなら、10万円の給付金をもらってカネの使い方は個人で判断したほうがよほどマシな方法だと思う。

 実質的な対策をとらず世論操作だけ熱心な上に、(追記:口頭決裁という前例のない、無理やりな方法で、黒川東京高検検事長の定年を延長させたことを後付けで正当化したいためだけに)検察庁法をいじって政権に都合のいい検察官を出世させようなんて、安倍政権は救いようのない腐敗政権だ。
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